「残さない」「増やさない」 Vol.3 エッセイスト・平松洋子さん
Vol.2はこちらから
5月には友人に誘われて釧路に行き、釧路湿原国立公園の雄大な景色を眺めながら、馬に乗って広大な大地を颯爽と駆け抜けてきたそうです。
「もともと馬は好きで、とはいえ外馬(馬に乗って自然の中を駆け抜ける乗馬スタイル)専門。でも、これを機に、乗馬を習いはじめたんです」
学生の頃、水泳部だった平松さん。40代の始め頃まで水泳をずっと続けていましたが、ある時、以前と同じ距離、同じ時間を泳いでいるのに、疲れすぎて仕事にならないと感じるようになったとか。そして、馬に乗ったとき『これだ!』とピンときたそうです。
「以前と同じことをしているのに、少ししんどいな、なんだか重いな……。そんな違和感を感じたら、それはきっと変えどきのサイン。自分の体は変わっていくもの。仕事や暮らしの状況も変化していくので、自分の快適さも当然変わっていきます。その変化を早め早めに察知して、対応していくことが大事かなと思うんです。何か『ん?』と感じたとき、その違和感を見逃さず、頭の中に何となくおいていく。急がず、それでも何度か同じように感じたら、その直感というのは、今の状況を物語っているもの。自分の直感を信じて、思い切って変える勇気は持ったほうがいい。そうして見えてくることがきっとあると思います」
続けていたことをやめたり、何かを変えたりすることは、とても勇気がいることです。でも変わることは自然で当たり前。生きるということは変わっていくということ。平松さんのお話を聞いていて、改めてそう感じました。
「残さない」は、その都度「食べきる」ということ
<残さないおへそ①>
ご飯は1合で炊き
炊きたてを食べきる
3合炊きの土鍋を長年愛用していた平松さん。5年ほど前から1合炊きにシフトしたのは、ご飯が余ったとき、ラップをかけて冷蔵庫に保存しておくと、早く食べなくてはと始末に追われている気分になるからだそう。「1合でもふっくら、むっちりとしたおいしいご飯が炊けるので、ふたりで炊きたてを食べきります」
<残さないおへそ②>
残りそうな卵は塩卵にする
卵が何個か残りそうだなと思ったときに作るのが塩卵。好みの硬さにゆでた卵を塩水に入れるだけ。卵2個に対して水1カップに小さじ1の塩が平松さんの味。「ひと晩でぐっと塩味が入りますが、つけすぎてもそれはそれ。麺にのせてもサラダに添えても。塩味だけなので、使い道に広がりがあるんです」
text:和田紀子 photo:日置武晴
Profile
平松洋子
エッセイスト。岡山県倉敷市生まれ。東京女子大学文理学部社会学科卒業。食文化と暮らしをテーマに執筆活動を行う。『買えない味』で第16回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞、『野蛮な読書』で第28回講談社エッセイ賞受賞。著書多数。近著は『肉まんを新大阪で』(文春文庫)。
肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。