「余白」…おすすめ帖vol.24

『ナチュリラ』本誌でも、季節ごとのリアルクローズとそのおしゃれな着こなし方を提案してくださっている人気セレクトショップ「アナベル」。店主の伊佐さんによる「季節のおすすめ帖」連載コラムです。季節ごとのおすすめの品を月に２回、ご紹介しています。

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photo：川本浩太　text：伊佐洋平　model：伊佐奈々

使えば使うほど風合いが増して、より良くなるものはあるのですが、その代表的存在として、アナベルでは５年販売を続けている定番のストールがある。わたくしはもちろん、近親者のほとんどが愛用しているストールである。

「yourwear（ユアウェア）」のベビーアルパカストールは、しっとりとしてとても温かい。真冬につい使ってしまうストールの一つである。

端がクルクルとなるのもこのストールの愛嬌ともいえる特徴の一つでしょう。

少し網目がよれている部分があるのがお判りでしょう。以前のものはもっと目立っていたのですが、昨年から糸を変えることで、少し軽減されました。これは、アルパカが撚糸の際に撚りを戻そうとする性質があるためにおこるそうです。

故郷である秋田を拠点として、編み手を探して地元の人たちと一緒に製作している「yourwear（ユアウェア）」の佐藤さんが作るニット製品は、手編み、または家庭用の手横編み機を用いた少量生産のスタイルであるため、大量生産のニット製品とは明らかに異なる顔を持つ。

今年は、ミルクティーのようなキナリと、ミルクのようなホワイトの2色をお取り扱いしています。

とにかく、私も妻も近親者の皆様も長く使い続けているストールなのですが、「何がいい？」って聞かれると、佐藤さんに怒られるかもしれませんが、実は答えに少し困るのです。「すごくしっとりとして心地いい」「すごく温かい」「ベーシックで使いやすい」「毛羽立ちが心地よく、毛玉にならない」といった良さは並べられるのですが、買ってみて使わなくなった他のものと明らかな違いは何だろう？　考えてもよくわからなかった。でも大好きで、毎年かなり登場している。

実際に使い始めてもう６年が経つのですが、良さを実感するまでの感覚は、特徴的なものでした。非常にじわじわとにじり寄るようなスピードで、良さが実感できるのです。噛めば噛むほど味が濃くなるガムがあったら皆さん欲しくなるのではないでしょうか。少し大げさに言うと、このストールはそんな感覚を持てるものでした。

今年はそんな「yourwear（ユアウェア）」さんから手編みの指が少し出るミトンが発売しています。ストールと合わせて使っていただくと、なんとも温かい印象を持つものです。

「yourwear（ユアウェア）」の製品は、すべて佐藤さんの手元で修理が可能なのも嬉しいところです。手編みに関しては、長く使っていて伸びてしまった場合なども、有償ではありますが、預かって糸をほどいて編み直しまで受けてくれる。これは佐藤さんが大手アパレルのニット生産部門で働いていた際の、トレンド主体で毎回新しいものを作り続ける業態への違和感から独立を果たした時の心情が最もよく表れた仕組みだといっていいのではないでしょうか。同じものを長く使ってほしいという純粋な思いが込められています。

アナベルの女性スタッフはこのように広げてよく肩にかけても使っている。

茶系の落ち着いたトーンのスタイリングに、白と赤をちりばめて少し賑やかに。

こちらはアナベルでは今シーズンからお取り扱いを始めた羊毛のメッシュタイプ。

軽くて温かく、こちらもお勧めのストールです。

薄いベージュ系とサックス混じりに感じるグレー系の2色をお取り扱いしています。軽くて毛羽立ちも少なく、春も引き続きお使いいただけそうな印象でしたので、薄く明るめの色をセレクトしています。

梅春向きのシャツ生地のワンピースに合わせて。

赤いカシミアをインナーに春先も使ってほしい。

春の色や空気ととても相性の良さそうな色合いです。

佐藤さんの誠実で優しい人柄があってのこの商品だとするならば、もしかするとそれこそが「yourwear（ユアウェア）」の一番の特徴なのかもしれません。モノには作り手の人柄が見て取れます。何も感じないものもたくさんある中で、なんとなく、その向こう側に佐藤さんの人柄を見ていたのかもしれません。

「yourwear（ユアウェア）」の商品の魅力について考えていた時、ホームページに書かれた文面の一言に目が留まりました。コンセプトにもなるテキストをそのまま引用させていただきます。

yourwearは秋冬のニットブランドです。

私の生まれた北東北は、一年の約半分、吐く息が凍ってしまうような寒さと、

薄いグレーの空に覆われる冬の季節です。

窓の外、ただただ降る雪を眺め、ストーブにぴったりと寄り添って

静かに過ごす時間の永いこと。。。

春の雪解けや、初夏の芽吹きを待ちこがれながら、

寒さの中でカシミアのセーターやハンドニットの柔らかなぬくもりに

包まれる冬の生活も、楽しく、美しく、豊かなものです。

yourwearは、「あなたの衣服」という意味。

着る人、使う人の個性を描ける、シンプルで余白のあるデザイン。

そんなニットで、温かな冬を過ごせたら、と思っています。

佐藤さんのこの言葉の、最後の2行にある、「余白のあるデザイン」という言葉を目にしたとき、使ってみて感じていた、ぼんやりとしてなかなか言葉に言い表せない魅力を感じ取った気がしたのです。使った人にしかわからない、言葉にし難い素朴でやさしいその魅力をそれぞれに感じていただけますと幸いです。

アルパカストール　￥12,000+tax

ウールメッシュストール　￥14,000+tax

手編みのミトン　￥12,000+tax

＊編集部より　伊佐さんスタイリングの小物が映える冬の装いを現在発売中の『ナチュリラ』2019秋号vol.48で特集していますよ。本誌のほうもぜひご覧になってみてくださいね！