その‟変化”までもお楽しみ 寒川義雄さんのお茶碗
今日のひとしな
2020.05.30
~ 「岡の」より vol.30 ~
広島で作陶されている寒川さん。こちらの連載でも、以前洋皿をご紹介しました。寒川さんの洋皿は、骨董市で並ぶフランスやオランダなどの古い器が持つ雰囲気を持っています。姿のよさのみならず、長く使うとその家に代々伝わる器になっていく、親しみやすさと使いやすさがあります。
(ローストビーフにお味噌汁。和洋混ぜ混ぜのわが家の食卓)
本日ご紹介するお茶碗はそれとまた違った魅力。ここが寒川義雄さんという作家のまさに特別なところなのですが、いくつ引き出しを持っているのだろう? と思わせる異なる魅力を持つ作品をその手から作り出しています。
径 約12㎝ 高さ6㎝ 6,600円(税込)
こちらは薪窯で焼成された器。柔らかな明るいグレーが美しい。釉薬の流れが個性的で魅力的です。
薪窯はその大きさもあり、年に一回ほどしか焚かないそうで、タイミングが合わないとなかなかこの作品達にはお目にかかれません。薪窯の焼成には時間がかかります。薪を燃やすと窯の中で灰が器に振りかかります。灰が高温で溶け、器に釉薬としてあるものは定着し、あるものは流れ、独特の色合いと表情を作り出すのです。
人の作為が届かない部分。自分が作った形と、窯の中で起こる自然の仕事。そうして美しい理想的なものができた時、その喜びはいかほど、と想像します。
径11.5㎝ 高さ5㎝ 6,600円(税込)
薪窯の中にはこのような透明感のある器も現れます。手におさまる小ぶりの器は持ちやすく、目に爽やかです。朝ごはんをこのような器で頂けたら、気持ちよくスタートできそうです。
径11.3㎝ 高さ5.2㎝ 6,600円(税込)
径11.3㎝ 高さ5.2㎝ 6,600円(税込)
灰が降る窯の中をイメージできるようなグレーの器。こちらも小ぶりで、サイズ感からか渋めでありながら優しい雰囲気があります。なかなか意図してこのような模様は作れません。薪窯だからこそ現れるデザインと色。グレーの中にガラス質のブルーがきらっと光ところがあって、じっと眺めると発見があります。
寒川さんの器で私がよく手にするものに共通しているのが、広島土の器。名前のごとく、寒川さんのお住まいの近くから採れる土です。「感謝の念を込めて地元の土を使う」と寒川さんは話します。明るい色合い、温もり。
径11.8㎝ 高さ5.2㎝ 6,050円(税込)
径11.8㎝ 高さ5.2㎝ 6,050円(税込)
(広島土の器。底に向かって流れる釉薬が面白みのある模様を作っています)
寒川さんの器は使っていくうちに、細かな貫入が入ったり、染みが生まれたり。器の肌の風合いは少しずつ変化していきます。
寒川さんの作品に限らず、お店で扱うほとんどの陶芸家の作品は使っていくうちに経年変化が現れます。それを「汚れ」と感じるか「美しい」と思うかは、その人の意識の違いなので、否定はしません。わが家では染み込みのある器がほとんどなので、子どもたちも、「器とはそういうもの」と思っています。なので、経年変化をしない、いつまでもぴかぴかの器をお求めになる方は、陶芸家の器は向いていないと思います。
径13㎝ 高さ5.8㎝ 6,600円(税込)
(こちらも広島土の器。貫入がたくさん入っています。お茶道具に使っても良さそうな雰囲気があります)
土の味わい、独特の色味の美しさ。そのようなものを受け入れるには、染み込みなどの変化もまた楽しんで欲しいと思うのです。お茶の文化が生まれた頃、器はそのようなものだったと思いますし、焼き物が自然の中から生まれる以上、変化を受け入れることは日本の文化の一つの要素なのだと考えています。
それにしても、お茶碗だけ見てもそれぞれ印象が異なり、選ぶ楽しさがあります。個展に伺う度に感じる寒川作品の自由さ。わくわく感。新しい色と、新しい形に出会える喜びが、ファンを作っているのだと思います。
寒川さんとお話をしていた時、トレイルランをしていると伺いました。にこやかに静かにお話しをされる方ですが、向かい合っていると、健康な方が持っている明るさとエネルギーの強さを感じます。私ごとですが、高校時代、陸上部の夏合宿で信州の山の中をひたすら走っていました。むせ返るような自然の匂い。足から伝わる木の根の感触。石や岩をよけながら、時にはその形を利用しながら反動を作り、アップダウンの多い山道を進んでいく。集中を切らすとあっという間につまづいて転んでしまう。走るほどに研ぎ澄まされていく感覚……。
寒川さんは日常的に山を走ることによって、高い感覚を維持し、常に新鮮な気持ちで製作に向かっているのではないかと想像するのです。新しい作品を生み出し続ける力。それを支える精神的な強さ。自然の中から得られるものを、作品に十分に発揮させていると感じます。
(窓いっぱいに自然が広がる工房)
(蹴轆轤の部屋。目の届く所に西洋東洋問わず、心に留まった古物が置いてあります)
最後に、もう一つだけ。
寒川さんとお話しした時、とある東京の古物屋さんの話になりました。おしゃれなアンティークショップとも、敷居が高い骨董店とも違う、店主独自の視点で選ばれたもののみが並びます。人によってはただのゴミにすら見える、人の手で使い込まれた道具やかけらたちが並ぶ店。「で、あなたはどう感じるの?」と問いただされるような、そんな場所。店主は多くは語らず、静かにそこにいらっしゃるだけなのですが。
寒川さんは、このお店を通してよいものを見る目、感じることを学んだと話します。その話を伺って、寒川さんの作品にはまだまだたくさんの引き出しと、奥行きがある、と感じました。
この古物店の店主のように、既成概念や人の評価を気にしない、自由な心で美しいものを求め続ける強さ。そして製作を支えるよどむことのない精神力。土も違い、窯も違う、雰囲気の異なるお茶碗それぞれに寒川さんの求める美しさが現れています。ぜひお手にとって頂きたいです。
ご自宅に併設されたCAFÉ DE hanaeでは、店主の寒川真由美さんが焙煎されたコーヒーと美味しいケーキが味わえます。寒川さんの器で頂くことができます。作家さん同士の繋がりも大切にしていらっしゃるので、展示会やワークショップなども開かれています。ぜひインスタグラムもチェックされてみてください。
※作品ご注文ご希望の方はメールでメッセージをお送りください。
okano.shop@icloud.com
工業製品と違い1点1点異なりますので、お写真等送らせて頂きます。メールの返信に2日ほどお時間を頂く場合がございます。
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※お電話は金土日のみの営業であり、お店番人のため、対応できないことがございます。お手数おかけいたしますがどうぞよろしくお願いいたします。
岡の
東京都目黒区大岡山1-6-4
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メールアドレス:okano.shop@icloud.com
営業日:金・土・日
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