エンディングノートを書いて「私」を人生の主役に!【前編】

後藤由紀子さん 専門家の力をお借りします
2023.02.13

沼津の雑貨店「hal」店主・後藤由紀子さんが、その道のプロに教わりながら、大人の知恵やワザを身につけアップデートしていく連載企画。今回のテーマは「エンディングノート」です。エンディングノートって、人生の終末(エンディング)について書き出すものと思っていましたが……。後藤さん、何かあったのですか?!


「いえいえ、私は元気そのものですよ! でもね、いつ何があるかは誰にもわからないじゃない? そんなとき、家族が困らないように、エンディングノートを書いているんですよ」

なんと! もう、すでに書いているんですね。さすが「すぐやる課」の後藤さん。

「これにはきっかけがあるんです。子供がまだ小さかった30代のころ。髄膜炎という大病に突然襲われ、1カ月くらい入院しました。パタッと家のいろいろなことがストップしてしまって、もしも今日、私が死んでしまったら、この家はどうなるんだろう? と不安になったんです」

 


「義母が心臓の病気で急逝した際、義父が悲しむ間もなく手続きなどで大変な思いをしたのも知っていたので、これはすぐに取り掛からなくてはと実行に移したんですよ。ただ、とりあえず書いてみたという感じなので、この内容でいいのか、よりいい方法はないのかなど、もっと詳しく知りたいと思ったんです」

そういうことでしたか。エンディングノート、気になってはいるけれど、なかなか始められない人が多いと聞きますし、これを機に、改めてお勉強しましょう!

 


ということで今回は、これまで数多くエンディングノートを書くお手伝いをしてきたという、ファイナンシャルプランナーの山口京子先生にいらしていただきました。

後藤さん(以下、後):「あら~、先生、素敵なお着物ですね」

山口さん(以下、山):「子育てが落ち着いて、空いた時間に何かできないかしら? と考えて、着物を楽しもうと思ったんです。まだ始めて4カ月くらいなのですが、母のお下がりをたくさん譲り受けまして、できるだけ毎日着るようにしているんですよ」

 


:「実は私も、去年から着付けを習い始めたんですよ。でもなかなか板につかなくて……」

:「どんどんお召しになるのがいいと思いますよ。お店(hal)に着物で立つのも素敵じゃないですか!」

……と、おふたりは着物談議で大盛り上がり。そろそろエンディングノートについてお話を伺ってもいいですか~?(笑)

 


:「そうですね、エンディングノートのお話を始めましょう。後藤さんはすでにお書きなんですよね? 素晴らしいです! 後藤さん世代の50代、60代の方にこそ、書いて欲しいんです」

:「育児中に1カ月入院したことがきっかけなんです。自分が動けないことが現実に起こり、家事もそうですが、お店も滞ってしまうことも有り得るんだなと気づきまして……。お取引先さんへの支払いとか、お世話になっている作家さんへの連絡とか、自分しか把握していないことを、まず書き留めるところから始めました」

:「エンディングノートと呼ばれていますが、法的な効力を持つ『遺言』とは違い、要するに“家族への引継ぎノート”なんですよね。会社を辞めるとき、部署を異動するとき、後任のために引き継ぎ資料を作ると思いますが、それと同じです」

 


:「例えば、細かいことでいうと、生協さんって何曜日に届くんだっけ? て、夫は知らないわけですよ。燃えるごみってどうするんだっけとかね。でもそういう調べればわかることは大した問題にはなりません。ご自身しか把握していない、お金のこととか、いざというときのことをきちんと引き継ぐことが大事なんです。のこされた家族が困らないように、必要最低限のことは書いておきたいですね。エンディングっていうと『縁起でもないわ』というふうに、引いてしまう方もいらっしゃるんですが……」

:「確かに、私たちの親世代の70代、80代にとっては、ちょっとしんどいかもしれません。でも、40代、50代だったら、そんなに悲観的にならずに取り組めるし、“引継ぎノート”と捉えればハードルは低くなりそうですね」

:「そうなんです! 誰でも1回は天に召される日が来るわけですよね。2回は来ないけど1回は来る(笑)。それが明日かもしれないし、110歳かもしれない。いつかは分からないけれども、準備をしておくのは縁起がいいことなんですよ」

 


では、さっそく具体的な書き方を先生に教えていただきましょう!
今回の取材で使用したのは、こちらの『私のエンティングノート』。ケース入り&ハードカバーの保存版です。後藤さんが元々使っていたのは「コクヨ」のものだそうですが、今回は改めてこちらのノートにも実際に書いてみていただきました。

:「仕事柄、いろいろなエンディングノートを見ていますが、これは『私の』というスタンスがいいですね。主語を自分にすることが、エンディングノートの大事なポイントなんです」

 


:「〈私の歩んできた道〉〈これからの生活に望むこと〉といった項目があるのですが、そのページに書くことをじっくり考えることで、人生を振り返り、これからの生き方を考えるきっかけになりました」

:「本当に私がやりたかったこと、私が得意とすること、私が大事にしてたこと……。そんなことを思い出すきっかけになるんですよね。これまでは、夫や子供など、自分より家族のことを大事にして生きてきた方も、このノートを書くときの主語は私。シングルの方はお仕事が中心だったり、介護をしていれば親御さんが優先の生活だったりすると思うんですよね。でもこれは、自分の人生は自分のために使っていいんだっていうことを、思い出させてくれるノートなんです」

:「これからやりたいことを考えるのに、まずは自分自身の本音と向き合うことが大事なんだなと気づきました」

 


:「人生100年時代といわれているいま、女性の2人に1人は90歳のバースデーを迎えるんですね。60歳の還暦から100歳までは40年ある。20歳のときに60歳っていうと……」

:「すんごい先って思っていました」

:「ですよね! その『すんごい先』って思ったのと同じ時間だけ老後があるのなら、『これから、いかにして生きていくのか』を、考えておくのはとっても大事なことなんです」

エンディングノートの重要性をひしひしと実感している様子の後藤さん。明日公開の【後編】では、「エンディングノートに書いておいたほうがいい項目」を教えていただきます。

 

text:鈴木麻子 photo:岡 利恵子

 

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Profile

山口京子

kyoko Yamaguchi

フリーアナウンサーを経て、ファイナンシャルプランナーに。家計管理、貯蓄・資産運用のプロフェッショナルとしてテレビ、ラジオ出演や、セミナー講師、執筆活動と幅広く活躍。主な著書に『貯金ゼロから始める「新へそくり生活」のススメ』(プレジデント社)、『なまけものが得をするワンコイン積立投資術』(ダイヤモンド社)などがある。
https://kyoko-yamaguchi.com/
Instagram「kyoko.yamaguchi.315
LINE公式「@251cdges」

 

 

後藤由紀子

Yukiko Goto

静岡県・沼津で器と雑貨の店「ハル」を営む。最近は「出張hal」として日本各地で期間限定の出店も。二人の子供は社会人となり、子育てもひと段落。暮らしの工夫や気づきを綴った飾らないエッセイも好評。ママ向けオンラインコミュニティ「ママカレ」の講師としても活躍中。20周年を迎えるお店やこれまでの歩みを綴った随筆集『雑貨と私』(ミルブックス)を、この春に出版予定。
Instagram「@gotoyukikodesu
YouTube「後藤由紀子と申します

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