70歳をすぎてからレストランを開店 Vol.1 桜井莞子さん
70歳を過ぎてからレストランを開店。
何かを始めるときは
いつも先のことは考えない。
まずは動いてぶつかってみなければ
次の扉は開かないと思うから。
東京・青山に「ごはんやパロル」という
ちょっと不思議な名前のごはんやさんがあります。
シルバーへアと笑顔が素敵な店主、
桜井莞子さんがお店を開いたのは、
2015年5月。71歳のときでした。
とはいえ、突然この世界に飛び込んだわけではなく、
料理のキャリアは30年近く。
1988年にケータリングサービスの会社を
興したのが始まりだったとか。
「日本ではケータリングなんて
ほとんど知られていませんでしたが、
アメリカではハリウッド映画や
CMのロケ現場にケータリングカーがやってきて、
正装したボウイさんがワインを開け、
撮影を中断して優雅にランチを
食べていると言うんです。
日本の仕出し屋さんは料理を作るだけですが、
ケータリングはお客さまのオーダーに
合わせて料理を作り、
テーブルセッティングまで
徹底して作り込む。
そこに惹かれて『絶対やりたい!』って
思っちゃったんです」
料理好きで、もてなし上手の
母親譲りのセンスのよさと
おいしさはすぐさま評判となり、
「グッチ」や「イッセイ・ミヤケ」といった
ファッションブランドをはじめ、
百貨店やギャラリーのオープニングなど、
続々と仕事の依頼が舞い込みました。
ケータリング業が軌道に乗ると、
東京・西麻布に和食のお店もオープン。
「ケータリングの仕事を一度は
スパッと辞めたものの、
いいお話をいただくと、
どうしてもやりたくなって、
お店を休んで引き受けてしまって」
そんなことを繰り返すうち、
次第にお店の客足は遠のきました。
潮時を感じた桜井さんは、
60歳を機にお店を閉め、
伊豆へと転居。
「細々と料理教室を開いていましたが、
伊豆の生活は退屈で、
何かやらなきゃいけないと
心のどこかで思っていました。
ダラダラ暮らしていることに
後ろめたさを感じていたんです。
そんな時、同い年の友だちに
『何やってるのよ。私たち、
まだまだこれからじゃない』と言われて、
その言葉に背中を押されましたね」
text:和田紀子 photo:中川正子
『暮らしのおへそ』Vol.22より
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OPEN 18:00~22:00(L.O)
土日祝休
Profile
桜井莞子
デザイン会社に勤務の後、1988年にケータリングの仕事をスタート。「グッチ」や「イッセイ・ミヤケ」などファッションブランドをはじめ、多くの会社から依頼を受ける。1994年に東京・西麻布に「ごはんやパロル」を開くが、2004年に伊豆に転居。料理教室を主宰する。2014年に再び東京・青山にお店を開く。
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