【特集】アニメーション監督・堤 大介さんspecialインタビュー vol.1 2015年アカデミー賞ノミネート作品「ダム・キーパー」の旅

”つくる人”を訪ねて
2017.04.27

東北・石巻で開催中!ピクサーを飛び出した2人のクリエーターによる
アニメーション・スタジオ「トンコハウス」の世界展

宮城県石巻市にある石ノ森漫画館。ここで特別企画展として、この3月から催されているのが、トンコハウス展「ダム・キーパー」の旅です。「トンコハウス」は、アメリカ屈指のアニメーション制作会社・ピクサーで、アートディレクターとして活躍していた堤 大介さんとロバート・コンドウさんが独立して立ち上げたアニメーション・スタジオ。 短編アニメーション作品「ダム・キーパー」は、独立第一作目ながら2015年のアカデミー賞にノミネートされ、日本でも大きな話題となりました。

今回は、本web連載「“つくる人”を尋ねて」の特別編として、開催中の展示から今夏に公開予定の作品、5歳の息子さんのパパでもある堤さんのプライベートまで、とっておきのお話を伺いました!

photo:成田由香利 text:大塚美夏

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暮らしとおしゃれ編集室(以下、編):「ダム・キーパー」は、ほのぼのとやさしいタッチで描かれたイラストレーション的な作品で、大人が見ても純粋にかわいいなぁと、まず“絵”に惹かれました。その原画などを間近で見て世界観に触れられるトンコハウス展は、昨年の東京・銀座での展示に続き第2回目となるわけですが、開催場所に東北の地を選ばれたのはどうしてですか?

堤さん:知人から石ノ森漫画館のディレクターの方を紹介していただいたのが一番のきっかけなんですが、東京での展示の後にトンコハウスの世界を地方の方にも見てもらえたらなとはずっと考えていて。 ただ、その最初の実現が東北だったというのは、なにか“縁”だけではない“必然”を感じましたね。 

:と、いうのは……??  

堤さん:僕とロバートは普段アメリカを拠点としていますが、2011年の東北の地震は日本にいなくても大きな衝撃を受けました。あの地震は、きっと世界中の日本人の それぞれの人生に、なんらかの影響を与えたんじゃないかな。地震のあと、僕たちはソフトバンクが主宰する「トモダチ リーダーシップ・プログラム」という復興支援に毎年参加させていただいていて。研修としてバークレーにやってくる被災地の高校生に海外で働いてきた経験談やリーダーになるという事など についてお話したりしています。そんなことから、日本の地方の中でも特に心にひっかかっていた地でした。加えて「石ノ森漫画館」! いわずと知れた石ノ森章太郎先生の美術館です。僕が子どもの頃から大好きなのはもちろん、5歳になる息子も大好きで(笑)東北の被災地への気持ちと、アニメーションに携わる者にとっては特別に思う場所……本当に不思議な縁を感じました。

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開催は6月25日までということですが、ゴールデンウィークもあり、これからは心地いい気候とあって、石巻の方だけではなく旅行などでもたくさんの方が訪れてくれそうですよね。来てくれた方々に、この展示を通して堤さんが伝えたいことってどんなことですか? 

堤さん:伝えたいことはそれぞれの作品の中にもちろんあるのですが、それよりも僕たちの作品を見たことで「なにかを感じてもらえる」「考えるきっかけにしてもらえる」ということを大事にしたいと思っていて。 展示については前回もそうだったのですが、通常の映画のアート展の出来上がった映画の軌跡だけでなく、もちろんそうした展示もアリなんですが、お客さんにも作品をつくる過程から見て一緒に体験してほしくて。 だから、公開済みの「ダム・キーパー」関連のものだけでなく、制作途中のものも一部展示しちゃってます。 

:えっ! 公開前のものが見られるんですか?! 

堤さん:はい。ネタバレにならないように注意はしてますけど(笑)普通なら情報解禁前に見せちゃいけない絵とかもあります。 以前、「見たこともない作品の一部を内容がわからないままに見せられるのはストレスだ」と言われたこともあるんですが、作品が公開されたときに「これ、つくってる途中の絵を見たことある!」っていうのも親近感が持ててワクワクしてもらえるかな、と。自分が育てた子どもの発表会・晴れ舞台って楽しいじゃないですか。  

:うーん、「会いに行けるアイドル」的な感覚ですか?? 

堤さん:そうですね(笑)ピクサーとか大きな会社では情報の取り扱いがものすごく厳しくて。解禁日まではなにがあっても漏らしてはいけない。 でもトンコハウスは小さいからこそできる、お客さんとの距離が近いコミニュケーションを目指して立ち上げたので。展示は文化祭のノリに近いかな。 僕たちはSNSでもどんどん発信しているんです。もちろん“限界とバランス”はありますけどね。

s-トンコハウス展

:では、次はくだんの公開前作品で、2017年夏に公開予定のHulu Japanから出る「丘の上のダム・キーパー」についてのお話を……! 

 

vol.2に続きます

石ノ森漫画館

s-石ノ森漫画館

宮城県石巻市中瀬2-7 TEL: 0225-96-5055

第65回特別企画展 トンコハウス展「ダム・キーパー」の旅

3月18日~6月25日 

※開館時間や休館日などは下記HPにてご確認ください。
http://www.mangattan.jp/manga/

Profile

堤 大介(つつみ・だいすけ)

東京都出身。School of Visual Arts卒業。Lucas Learning、Blue Sky Studioなどで「アイスエイジ」や「ロボッツ」などのコンセプトアートを担当。2007年ピクサー入社。アートディレクターとして「トイ・ストーリー3」や「モンスターズ・ユニバーシティ」などを手がけている。2014年7月ピクサーを退社し、トンコハウスを設立。71人のアーティストが一冊のスケッチブックに絵を描いて、世界中に回したプロジェクト「スケッチトラベル」の発案者でもある。

http://www.tonkohouse.com

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