第3回 フランス人とチョコレート <レシピつき>
バレンタインデー=チョコレートは日本だけの風習
こんにちは。菓子研究家の加藤里名です。今週末はバレンタインデー。チョコレートのお菓子でも作ってみようかなと考えている方も多いのではないでしょうか。そもそも2月14日は、愛の守護聖人とされる聖バレンタインが殉教した日。それが転じて愛の告白の日となったとされていますが、実は女性が男性にチョコレートを贈るのは日本だけの風習なのです。昭和30年代後半、日本のチョコレートメーカーがキャンペーンを始めたことで、この文化が定着したと言われています。
最近でこそフランスでもパティスリーでバレンタインにハート型のチョコレートなどを売るようになりましたが、フランスに限らず、欧米のバレンタインデーでは、男性が女性に贈りものをすることが多く、2月14日には花束を抱えて家に帰る男性の姿を多く目にします。
世界一チョコレートが好きなフランス人
フランス人にとってチョコレートは日常のお菓子としてなくてならないもので、お歳暮のような形で年末にチョコレートボックスを贈る習慣があったりします。
チョコレートへの関心は深く、パリの「サロン・デュ・ショコラ」は、来場者の熱気でチョコレートが溶けるほどの盛り上がり。購入時にはそれぞれのカカオのパーセンテージや産地などに関して、あれこれ質問をするお客さんも少なくありません。
街を歩くとチョコレートの専門店である「ショコラトリー」も多く、製菓学校には「パティシエ」とは別にチョコレート職人「ショコラティエ」のコースがあります。温度、商品管理が難しく専門的な知識を必要とするチョコレートを深く学ぶ人が多いようです。
カカオは超高級品だった
チョコレートはメキシコで誕生し、メキシコを征服したスペインの探検家・コルテスが国によってヨーロッパに持ち込まれ、その後、欧州全域へ広まったとされています。当時のカカオは貨幣としても使われるほど価値のあるもので、カカオの木は学名で「神々の食べ物(Theobromacacao)」と呼ばれるなど、神聖なものとして扱われていました。
フランスには17世紀にスペイン王の娘、アンヌ・ドートリッシュ姫が、フランスの国王ルイ13世に嫁ぐ際に、ピレネー山脈を超えてやってきたとされています。上流社会に広まった一方で、修道院との関係が深かったチョコレートは、それより前に密かにバスク地方へ伝わっていたようで、今でもバスクはチョコレートでも有名な土地です。
最近では国産のカカオも
カカオは赤道付近の熱帯地域が原産地とされていますが、最近では日本でも栽培されたり、アジアではベトナムや台湾でBeantobar(カカオ豆からチョコレートバーになるまで一貫して製造を行うこと)のお店が人気を博したり、世界各地で地域ごとに多様化しつつあります。食べ比べをしても楽しそうです。
チョコレートに対する理解が少し深まったところで、今回はバレンタインにぜひ作ってみてほしい、チョコレートを贅沢に使ったパウンドケーキのレシピをご紹介します。バターの一部をオイルに置き換えることで、格段に失敗しづらくなった、ご自宅でも作りやすいケークのレシピです。パウンドケーキのレシピは4月に発売予定の新著でもご紹介する予定ですので、どうぞお楽しみに!
ダブルチョコレートパウンドケーキ
材料と下準備(18cmパウンド型1台分)
バター(食塩不使用)…80g
▶常温に戻す
サラダ油…30g
上白糖…100g
全卵…2個分(100g)
▶常温に戻す
製菓用チョコレート*…100g *カカオ56%位のもの、ブラックの板チョコでも代用可
▶細かく刻む。50gは耐熱用ボウルに移し、600Wの電子レンジで1分ほど加熱して溶かして(30秒ほどでいったん様子を見る)、30℃ほどにしておく
?️
|薄力粉…110g
|ベーキングパウダー…2g
チョコチップクッキー(市販)…2枚
・型にオーブン用シートを敷く
・オーブンは天板ごと180°Cに予熱する
作り方
1️⃣ ボウルにバターを入れ、泡立て器でなめらかになるまで1分ほど混ぜ、サラダ油を加えて完全になじむまで1分ほど混ぜる。
2️⃣ 上白糖を加え、完全になじんで白っぽくなるまで1分30秒ほどすり混ぜる。
3️⃣ 卵を4回ほどに分けて加え、そのつどつやが出るまですり混ぜる。
4️⃣ 溶かしたチョコレート50gを加え、完全になじむまで混ぜる。
5️⃣ ?️を合わせてふるいながら加え、片手でボウルを回しながら、ゴムべらで底から大きくすくい返すようにして全体を20回ほど混ぜる。刻んだチョコレート50gを加え、同様に10回ほど混ぜる。粉けがなくなり、つやが出たらOK。
6️⃣ 型に5️⃣を入れて中央をくぼませ、チョコチップクッキーを手で砕いてのせる。予熱完了後に170°Cに下げたオーブンで50分ほど焼く。
7️⃣ 竹串を刺してもなにもついてこなければできあがり。型を高さ10cmほどのところから台に2回ほど落としてオーブン用シートごと取り出し、網にのせて冷ます。
text & photo 加藤里名
菓子研究家。大学卒業後、会社員として働きながらイル・プルー・シュル・ラ・セーヌでフランス菓子を学び、退職後に渡仏。パリのLE CORDON BLEUの菓子上級コースを修め、その後は人気パティスリー、LAURENT DUCHÊNEにスタージュとして勤務。帰国後は2015年より東京・神楽坂にて洋菓子教室SUCRERIESを主宰。伝統的なフランス菓子のみならず、最新のトレンドを踏まえた洋菓子を、教室、SNS、書籍などで広く発信している。著書に『ナンバーケーキ』(主婦と生活社)、『はじめてのクッキー缶』(家の光協会)、『レモンのお菓子づくり』(誠文堂新光社)など。現在、当社より4月に刊行予定の書籍を制作中。
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