稲田多佳子さんの『ほんとうに作りやすい焼き菓子レシピ』/1回目
こんにちは、編集部の足立です。料理編集者歴10ン年となる私ですが、今まで作らせていただいた本の製作にまつわる裏話などをぼちぼちご紹介させていただいております。よろしくお願いいたします。
さて、私が最初に作らせていただいた焼き菓子の本といえば、稲田多佳子さんの『ほんとうに作りやすい焼き菓子レシピ』(2004年発行)。何を隠そう料理編集部に来て作った3冊めの本でして、今でも手にすると当時の思いが蘇ってきて、じーんと胸が熱くなります(あの頃は私もまだチョット若かった…)。
カバーには、『超人気お菓子サイト たかこ@caramel milk tea さんの“何度も試作してようやくたどりついた”ほんとうに作りやすい焼き菓子レシピ』と、とてつもなく長〜〜いタイトルが書かれていますが、「あまりに長すぎる!」「書誌情報に登録できない!!」と営業からクレームが入り、正式書名は『ほんとうに作りやすい〜』部分のみとなっております。。
さて、その稲田多佳子さん。今では30冊あまりものお菓子の本、そしてお料理の本も出されている超人気料理家さんですが、その1冊目となったのがこちらの本です。
そもそもたかこさんとの出会いは、かれこれ18年ほど前のこと。下の子を出産し、産休明けすぐの2003年春に、料理編集部に異動が決まった私。それまでは月刊誌の部署で、お金のやりくりや収納アイデアなどの特集ページばかりを作っていた私が、突然、料理本の部署へ異動。 料理は大の苦手、お菓子は食べるのは大好きだけれど、ほとんど作ったことはなし。そんな私に料理の本が果たして作れるのかしら??…と、不安な日々を過ごしていました。
ただ、異動したらすぐにでも本を出せ!といった無理を当時の編集長は言わず、「まあ時間があるから、いろんな本を見たりして勉強しなさい〜」と、とても穏やかな方だったのが今思えばとても幸せなことでした(今よりずっと景気もよく、いい時代でした)。
そこで、いわゆるネットサーフィン(もう死語でしょうか!?)などをしてネタ探しをしていた私。たまたまふらりと立ち寄ったホームページで目にした焼き菓子の写真に、たちまち釘づけになりました。
そこには、とても素人さんとは思えないほど、抜群においしそうな焼き菓子の数々が。写真もふんわりとやわらかな雰囲気で、とびきりすてき。並んでいる言葉ひとつひとつも、穏やかさに溢れていてとてもすてき。なんてすてきな人なんだろう…。
そしてあまのじゃくな私は、またしても誰もやったことがないことをやってみたくなったのです。
「この人のレシピ本がほしい!!」
当時はホームページが作られ始めたばかりの頃で、まだブログやインスタが登場する前のこと。お菓子の先生ならいざ知らず、ホームページで手作りお菓子を紹介しているごく普通の方のレシピ本を出すなんて、ありえない話でした。
でもね、もういったんそう思ったらダメ。どうしてもやりたくなっちゃったんです…。
そこで、ホームページのアクセス数がこのくらいで、こんなに人気があって、お菓子がこんなにおいしそうで…と、ありったけの説得材料を必死にかき集めて編集長に直談判。がしかし、どんなにお菓子の写真がおいしそうだと言っても、食べたこともない人のお菓子のレシピ本を出すのは難しい…というわけで、とりあえず会社の企画会議にかける前に、作ったお菓子をその方に送っていただくことになりました。
はるばる遠く京都から、かわいらしい箱にぎゅうぎゅうに詰められて送られてきた焼き菓子たちは、ラッピングされた姿もとびきり愛らしく、添えられていた手紙の中の文字は、私がイメージしていた通りのものでした(お菓子作りが上手な方の文字は、なぜかある一定の法則性があるような気がしています…)。
とりあえず、当時の編集長(60歳近くの男性)にひと通り試食をしてもらったところ、
「あのパンみたいなやつ。あれ、うまいな!」と、到底焼き菓子に対するとは思えない感想をもらい…(涙)。
今思うと、それはおそらく『ほんとうに作りやすい焼き菓子レシピ』の26ページに掲載されている「プチ・ショコラ」のことだったのですが。ええ、全然パンみたいな感じなんかじゃないのですけれど!ね。
こうして無事に上司の了解を得て、会社の企画会議も通過し、いよいよ実際に本作りがスタートすることとなったのですが…まず最初に困難を極めたのは、大事な大事なスタッフ決め作業でした。
【次回に続きます】
【料理本製作の裏側〜よもやま話⑤】ほんとうに作りやすい焼き菓子レシピ/2回目はこちら
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