第18回 ベルギーのハロウィン事情とパンプキンチキンパイ

栗山さんのベルギーおいしいもの通信
2021.10.26

こんにちは、料理家の栗山真由美です。
今年もあと数か月。日本は味覚の秋ですね。それは、ヨーロッパも同じ。ただ、ベルギーの秋はとても短く感じます。この間に、きのこ類やジビエを楽しみます。いも栗かぼちゃもこの時期に出回ります。今回はベルギーのかぼちゃのお話をします。

日本はキリスト教の国ではないけれど、10月といったらハロウィンですよね。店先、街じゅうがハロウィンのデコレーションで溢れます。日本でのハロウィンは商業的要素が強いですね。

ハロウィンは、そもそも西欧から持ち込まれたものだから、現地にいたらより盛大だと想像していましたが、少なくともベルギーはそれほどでもありません。昨年のエッセイでも書きましたが、ベルギーではクリスマスが2回あり、特徴的な1回目のクリスマスは12月初旬に始まるので、10〜11月となると、そろそろクリスマスの準備。ハロウィンはお菓子系の店やスーパーに特設コーナーがあるぐらいで、その規模も小さな扱いです。ハロウィンは、アメリカ大陸が主体の行事のようですね。

ですが、ハロウィンの象徴となるかぼちゃは、この時期ベルギーでも旬です。この時期は、レストランでコースメニューを頼んでも、スープはパンプキンということが多いです。かわいい色合い、ビタミンやカロチンなど栄養価も高いかぼちゃは、大人から子どもにも大人気です。

ベルギーでは主に4〜6種類のかぼちゃを見ます。もっとも一般的なのはオレンジ色のかぼちゃで、これを使ってよくスープを作ります。ほかににんじん、じゃがいもが入り、どれも重たい材料。かぼちゃの皮もとても硬いので、買い物から調理までウチでは夫が中心になって作ってくれます。そう、こちらでは料理だけでなく、家事全般、男性と分担するのは普通なんですよね。日本でいう“育メン“という言葉、こちらでありません。“育メン“は特別なことではないからです。

クリスピーでボリュームがあって、なかなか好評だったパンプキンチキンパイの作り方をサラッとご紹介します。

蒸したかぼちゃをマッシュして、さいた蒸し鶏と混ぜ、タネにします。
豆やナッツ、ドライフルーツ、チーズなど加えてもいいと思います。カレー粉やパプリカパウダー、クミン、コリアンダーあたりのスパイスも合いますね。


今回は簡単にギョウザの皮で包みました。できるだけカロリーを抑えたいなら、油はハケで薄く塗るとカロリーカットになります。写真は油をくぐらせて、オーブンの天板に並べたところ。カロリーは上がりますが、こんがりいい色がつきます。そして、油で揚げるよりは低カロリーです。


ちなみに、日本式のかぼちゃがあるかというと…あります! 皮がグリーンのかぼちゃは味もほとんど変わらず、時々恋しくなる日本のかぼちゃ煮、作っています。


ところで、日本の一般的なかぼちゃの正式名は「西洋かぼちゃ」だってご存知ですか? あれだけ普及していて、和のおかずに使う素材で、なぜ「西洋」なのだろうと私も昔は思っていました。

対して、「日本かぼちゃ」という種類もあり、実はこちらのほうが一般への普及率は低い。主に料亭でのお料理、懐石料理や精進料理に使われ、店頭に並んでもごく少量です。

実際、お値段も高く、個体が小さく、甘みと果肉の色が薄い。皮の凹凸がはっきりしていて、色が黒っぽい緑なのも特徴です。それに対して「西洋かぼちゃ」はオールマイティーに活用でき、甘みが強く、大きくて安いことも一般に好まれる理由でしょうか。

どちらも原産はアメリカや南米です。ベルギーでは、1/4個や1/2個のように切った状態での販売はほぼなく、丸ごと1個を買います。

最後に、アントワープを代表するビスケットショップ、フィリップスビスケットのハロウィン飾りです。このお店のウインドーは、季節や時期ごとに変化があって、いつも楽しいのです。

 

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Profile

栗山真由美

MAYUMI KURIYAMA

料理家、栄養士。枝元なほみさんのアシスタントを経て独立。ポルトガル料理を中心とした料理教室「Amigos Deliciosos」を12年前から東京で主宰、日本ポルトガル協会の公認講師も7年間務める。2019年より、イギリス人のご主人とベルギー・アントワープに在住。著書に『ポルトガル流 驚きの素材組み合わせ術! 魔法のごはん』(エイ出版)、『「酒粕」で病気知らずになる ゆる粕レシピ』(池田書店)など。
https://ameblo.jp/castanha/ 
Instagram: mamicastanha

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