第4回 米粉の種類で変わる水分量の話と卵・乳・小麦なしでもおいしい豆腐ときな粉の米粉パウンドケーキ
こんにちは、米粉料理家・フードコーディネーターの高橋ヒロです。
今日は、米粉の吸水量のお話と卵・乳・小麦なしでもおいしい和風の“豆腐ときな粉の米粉パウンドケーキ”をご紹介したいと思います。
第3回の米粉通信では、米粉の種類って沢山あるんだよ、っていうお話をしました。米粉はお米を粉砕して作るのでお米の種類だけ米粉があるんです。更には粉砕の仕方でも変わってくるんです。という事は無限ですよね。
では、そんな種類の多い米粉をどう使い分けるのかについて、今回はご説明します。
そもそも米粉って、みなさんはどこで購入しますか? 最近はスーパーでも1種類くらいは置いてある事が増えました。道の駅にもおいてあったり、農家さんから直接買えたり、だいぶ手に入りやすくなりました。
では、どれも米粉だから同じように使えるのか?というと、答えはノー!です。小麦粉と違って、米粉は米の種類や粉砕方法で、その性質が大きく異なります。でも、それがどう違うか、どこにも記載していないのです。
そもそも、小麦粉のように基準がないので、生産者さんでさえ、自分の米粉が他と比べてどうなのか、ということを知らない方も多いのです。
私は主に3種類に分類しています。パンに向く米粉、お菓子に向く米粉、料理に向く米粉。
よくパッケージにも書いてありますが、たいては、料理にも!お菓子にも!パンにも!と全部書いてあり、あまりアテになりません。。。。(笑)裏の表示を見ても、米粉、とのみ記載してあります。
つまり、パッケージからは何もわからないのです。
パンはちょっと特殊で、パンに向く米粉はアミロース含有量が高い米粉が良いとされています。お米の種類でいうと、コシヒカリよりササニシキ系のお米。私がパンを作るときによく使うのは、ミズホチカラという品種です。この品種は、アミロース含有量が高いのが特徴です。米粉でパンを作りたいという方は、この品種で判断するとわかりやすいと思いますが、これについてはまた別で説明しますね。
では、お菓子に向くか、料理に向く米粉なのかを試すときは、どうすればいいのか。
有効なのが、“米粉に同量の水を加えてみる”実験です。
【実験1】米粉30gに水30gを加えてみる
家にあるいくつかの米粉30gにそれぞれ水30gを加えてみると、なんと写真のように状態が異なります。
とろとろの生地になるのもあれば、団子みたいなのもある。トロトロとボテっとしたのとでは性質が大きく異なります。
同じ米粉なのに水分量がここまで違うなんて不思議ですよね。これがレシピ本の通りに作っていても、本ではとろとろの生地なのに自分の手元は団子!のような事が起こる原因なのです。ぼってりとした団子状の生地を、とろとろの生地にするには水がプラス15gくらい必要となります。
例えば、この団子状になる米粉150gでパウンドケーキを作るとするなら、水分はプラス75g必要となります。レシピより水分を75g増やすとなると、なかなかすごいですよね。でもただ、水分量を増やせばいいわけではありません。水分をプラス75g増やしたパウンドケーキは、その分ずっしり重くなり、お餅みたいなケーキに仕上がります。
【実験2】シンプルなパウンドケーキを粉を変えて作ってみる。
2種類の米粉で、シンプルなパウンドケーキを作ってみました。左は波里の「サクッと!仕上がるお米の粉」という粉。右は共立食品の「米の粉」という粉です。
同じ分量では、左は団子状になったので、20gの水分を足しています。比べると分かりますが生地感が全然違いますよね。
左は、水分を足しているため、その分膨らみが落ち、ずっしりとしたケーキになっているのがわかるかと思います。さらに生地の下の方は少し餅のようになっていますよね。
これから分かるように、この左の米粉でふわふわのケーキを作るのは難しいと言うことです。
では、何に向くかと言うと、こういう米粉は料理に使います。とろみづけや唐揚げの衣など。あとはクッキーなどもおいしく作れます。
ご自分の持っている米粉が、何に向くのか分からない時は、まずは米粉に同量の水を入れる実験をしてみてください。そこから、ケーキ類に向くのか、クッキーや料理向きなのか判断できます。
粉30gに水30gを入れて、スプーンですくい上げ、トロトロと落ちれば、ケーキなどふんわり系に使えます。
団子状になって、さらに水分を加えないといけない状態なら、料理やクッキー向き。料理やクッキー向きの米粉をどうしてもケーキに使いたい場合は、ガトーショコラやチーズケーキなどのずっしりしたケーキなら良いと思います。
もし以前、米粉でケーキを作ってみて、お餅のようになってしまった経験がある方は、まずは米粉を変えてみてください。失敗する原因は自分の腕ではなく米粉ですから(笑)
さて、せっかく米粉によって水分量が違うお話をしたので、今回はちょっとからだに優しい「豆腐ときな粉の米粉パウンドケーキ」をご紹介します。
ちなみに、パウンドケーキなどふんわり系のスイーツに向く米粉は、共立食品の米の粉、富澤商店の製菓用の米粉などは手に入りやすいかなと思います。
豆腐ときな粉の米粉パウンドケーキ
【材料 18×8×6cmのパウンド型1台分】
米粉(製菓用の米粉)100g
A 砂糖30g
きな粉20g
黒すりごま10g
ベーキングパウダー小さじ1
豆腐100g
油40g
無調整豆乳70g
塩ひとつまみ
*無調整豆乳は牛乳に変えてもO K
準備:オーブンを170度に予熱する。型にオーブン用シートを敷く。
【作り方】
①ボウルにAの材料を入れ泡立て器でよく混ぜる。
②①に米粉を加えさっとゴムべらで混ぜる。
③型に入れ170度で40分焼く。
*このレシピで水分が足りずに団子になる時は水分を増やすと良いのですが、その分ずっしりとしたパウンドケーキになります。仕上がりを変えたい時は米粉を変えてみると良いですよ。
【高橋ヒロの米粉通信】はこちらから
◆次回の更新は12月9日。クッキーに向く米粉でメープルクッキーを作りたいと思います!
Profile
高橋ヒロ
米粉専門家、フードコーディネーター。親の転勤で幼少期は日本中を転々としさまざまな食文化に触れる。大学を卒業後大手旅行会社、IT企業等に勤務。傍らで料理を学びフードコーディネーターとしての活動を始めたが、自身の子どものアレルギーをきっかけに、食育、特に米粉の活用に取り組むように。のちに、社会における米粉の重要性を認識し料理の世界に専念。米粉のセミナーや講座、企業の商品開発、レシピ提供を中心に活動中。著書に『かんたん、おいしい米粉のクッキー 』(池田書店)、『卵アレルギーの子どものためのおいしいおやつとごはん』(成美堂出版)、『作業時間10分米粉100%のパンとレシピ』(イカロス出版)など。
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