第16回 とろとろフィリングが最高。私の焼きいも好きの原点となった「ドムドムハンバーガー」のスイートポテトパイ
さつまいもが好きだ。
料理やお菓子にももちろんだが、やっぱり焼きいもや干しいも、さつまいもをそのまま食べることがいちばん好きかもしれない。寒くなってきて、さつまいもの季節になると、日々さつまいもをオーブンで焼いて、焼きいもをストックしておく。
朝ごはんやおやつに、甘くてねっとりした焼きいもを食べると、とても幸せ。
干しいもも大好き。でも、干しいもは手がかかっているだけあって、日々食べるには少し高価なので、焼きいもに頼る日々。毎週の生協でさつまいもを頼む。
たわしでよく洗って土を落として、オーブンに入れて170℃で1時間半ほど焼くだけ。大きいものは2時間焼く。アルミホイルに包んだり、濡らした新聞紙に包んで焼いたり、いろいろと試した末に、今はもうそのまま焼くことに落ち着いた。
焼きいもそのままはもちろん、パンにはさんで食べたり、マフィンに入れて焼いたり、焼きいものストックがあるととても助かる。
私の焼きいも好きの原点は、「ドムドムハンバーガー」のスイートポテトパイ。
私のファストフード初体験は、ドムドムハンバーガーだと思う。生まれ育った街にはファストフード店がなくて、車で20分ほどのところにドムドムハンバーガーがあった。小さな頃、本当に本当によく行った。
その時メニューにあったスイートポテトパイが本当においしくて、甘くてとろとろしたさつまいものフィリングが、サクッとしたパイに包まれている。初めて食べた時のことは覚えていないけれど、とにかく大好きでおいしくて、何回も何回も食べた記憶がある。
たぶんもう30年くらい前の話。あのドムドムハンバーガーの象のロゴの書かれた、紙の袋に入ったスイートポテトパイ、今でも鮮明に思い出せる。
しかしいつの間にかそこのドムドムバーガーは閉店してしまい、コンビニになってしまった。スイートポテトパイがもう食べられない悲しみもそこそこに、今度私はもう少し離れたところにできた「モスバーガー」のきんぴらごぼうのライスバーガーと玄米フレークシェイクに心奪われてしまい、すっかりスイートポテトパイのことは忘れてしまった。
さつまいもといえば、幼い頃、母がよく朝食にさつまいものバター焼きを出してくれていた。皮つきのまま薄く切ったさつまいもをアルミホイルに並べ、バターを少し落としてオーブントースターで焼くという、とてもシンプルなもの。これがまたとってもおいしい。薄く切っているから火の通りも早いし、オーブントースターで焼いているから表面が少しこんがりとして、それとバターがまた合う。
母はスイートポテトもよく作ってくれていた。母のスイートポテトは絶品。何か特別なものを入れているわけではないのだけれど、甘さとクリーミーさが絶妙なのだ。今は亡き父も、母のスイートポテトが大好きだった。ちゃんと聞いたことはないのだけれど、母もさつまいもが好きなんだと思う。
朝食に出てきたさつまいものバター焼きのことは、大人になって忘れていたのだが、ある時姉の家に泊まりに行った時に、あのさつまいものバター焼きが朝食に出てきて、一瞬で小さい頃の記憶が蘇って、大袈裟だけれど懐かしくて倒れそうになった。懐かしくて母のと同じ味がした。
姉の家に泊まりに行くと、朝食にさつまいもが出てくることが多い。そう、きっとさつまいもが好きな一家なんだなと、長い年月をかけて私は実感している。
すっかり忘れていたはずのドムドムハンバーガーのスイートポテトパイ。ある日ふと焼きいもを食べていた時に思い出して、急いでドムドムハンバーガーのホームページを検索してしまった。今はもう販売していないらしい。また食べたいな。
そしてSNSで【ドムドムハンバーガー スイートポテトパイ】と検索すると、スイートポテトパイ復活してほしいという声をたくさん見かける。そして、スイートポテトパイが大好きと言っている人がいると、私も同じ気持ちだよ…と心の中でそっといいねを押す。今日も焼きいもを食べながら。
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Profile
夏井景子
1983年新潟生まれ。板前の父、料理好きの母の影響で、幼い頃からお菓子作りに興味を持つ。製菓専門学校を卒業後、ベーカリー、カフェで働き、原宿にあった『Annon cook』でバターや卵を使わない料理とお菓子作りをこなす。2014年から東京・二子玉川の自宅で、季節の野菜を使った少人数制の家庭料理の料理教室を主宰。著書に『“メモみたいなレシピ”で作る家庭料理のレシピ帖』、『あえ麺100』『ホーローバットで作るバターを使わないお菓子』(ともに共著/すべて主婦と生活社)など。
http://natsuikeiko.com Instagram:natsuikeiko
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