第17回 祖母と行ったディズニーシーで食べたルームサービスのおにぎり
私のいちばん古い記憶は5歳の時。
私の祖母(お父さんのお母さん)と姉と3人で、ディズニーランドへ行った。小さかったので、本当にぼんやりとした記憶しかないのだけれど、祖母に連れられて姉と3人で、ディズニーランドに行く2泊3日の東京旅行のツアーに参加した。
断片的な記憶だけれど、パレードがとてもきれいだったことや、白雪姫の乗りものに乗りたかったのに、祖母が間違えてホーンテッドマンションに入ってしまい、とても怖かったことや、2日目の夜に実家に電話してお母さんの声を聞いたら、寂しくて泣いてしまったこと。どれもぼんやりと覚えている。
そんな祖母は、今年でもう95歳。とても元気。年々できないことは増えてきているけれど、数年前まで自転車にもスイスイ乗っていた。
10年ほど前に、元気なうちにディズニーシーにあるホテルに泊まってショーが見たいと言って、祖母が2泊3日で東京に遊びに来たことがある。
ディズニーランドのショーが見えるホテルに泊まるなんて、20歳そこそこの私にはなかなかできないことなので、私は張り切って予約をした。近くに住む姉も1泊だけ参加したいと言って、久しぶりの祖母と姉と3人の旅行。
祖母に楽しんでもらえるように私は調べに調べ、予約戦で待機し、どうにか予約がとれ、あとは無事にその日を迎えるだけ。天気が晴れてくれることを祈る。予報では1日目は雨、2日目は曇り、3日目は晴れ。1日目は、夕食を食べながらショーが見られるレストランを予約しておいた。
そして当日、祖母が新潟から東京へ。私は仕事があったので、姉が東京駅まで祖母を迎えに行ってくれて、私は現地集合。ちょっと天気が悪かったけど、ショーが中止になりそうな天気ではなくて、ほっとしながら私はディズニーに向かった。
祖母はもうその頃80歳を過ぎていたので、乗りものに乗るということはほとんど難しく、本当にショーを見るためだけに来るので、ショーが開催されない事だけは避けたかった。
ホテルの部屋で無事に祖母と姉と合流。3人で旅行なんて、20年ぶりくらい。少し休んで、早速レストランへ向かった。そのレストランは確かテラスのような場所があり、テラスへ移動すると、そこからショーが見えるというようなレストランだった。
そろそろショーが始まるという頃にテラスへ移動する。「おばあちゃん、楽しみだね!」なんて話しているうちに、ショーが始まった。大きな湖がライトアップされ、ジェットスキーに乗った人たちがパフォーマンスを始めた。そして、そろそろ主役のミッキーの登場。火花が散って光の中からミッキーが現れた。
「ミッキーだ!」と言ったその瞬間、光は消え、ミッキーは見えなくなってしまった。そして湖のライトアップも消えてしまった。あれ……??と、姉と祖母と顔を合わせた時に、アナウンスが流れる。「設備不良の為、本日のショーは中止をさせていただきます」。
えぇーーーー!!まさかこのタイミングで中止になるの…と、とてもショックだった。このショーを見るために、祖母ははるばる新潟から来たのに…。テラスからとぼとぼと席に戻る。姉と祖母と、「まさかあの一瞬のミッキーで終わってしまうとはねぇ。。」と言いながらデザートを食べた。
2泊する予定なので、どうにか明日ショーが開催されればいいのだが。2枚持っていたカードが急に1枚になり、とても不安になる。姉は1泊しかできない予定だったので、とてもショックを受けていた。
2日目の朝はホテルの朝食で、ミッキーの形をしたパンケーキ。可愛いくてテンションが上がる。お昼はミッキーたちと一緒に写真が撮れるレストランを予約しておいた。ミッキーたちと写真をたくさん撮った。うれしそうにしている祖母とミッキーの写真。可愛い。
そうこうして、2日目もとても楽しく過ごせた。そして肝心のショーの時間が近づく。朝から遊んだので、早めにホテルに戻った。そして、夜ごはんをどうするか相談した。
祖母も私も日々和食のことが多いので、1日目からずっと洋風の食事が続き、少し胃が疲れてしまっていた。本当はまたどこかのレストランで夕食を、と思っていたのだが、ごはんとおみそ汁があればもう十分だ、と意見が一致し、ルームサービスをとった。小さなおにぎり3つにおみそ汁、お漬けもの、ちょっとした小鉢がついたものだった。さすがルームサービスで、確かそれで3000円くらいした気がする。
おみそ汁をひと口飲んで、祖母も私も「ふ〜〜」とひと息つく。あまりにおいしくて、疲れた胃と身体にしみて、祖母と顔を見合わせて、「やっぱり和食がいちばんだね」と笑い合った。ちょっとしたお漬けものや、和食の甘辛味がまたおいしい。
そして念願のショーが始まった。私はほっとする。ホテルの部屋からおにぎりを頬張りながら見たショーは、とても楽しくてきれいだった。祖母もとても喜んでいて、20年ぶりの祖母とのディズニーはとても楽しく過ごせた。
今でも実家に帰り、祖母とあのディズニーシーの思い出話になる。そこで毎回必ず、あの時食べたおにぎり、本当においしかったよねと話題に上がる。あの時のおにぎりは、祖母とのいちばんの思い出の味。
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Profile
夏井景子
1983年新潟生まれ。板前の父、料理好きの母の影響で、幼い頃からお菓子作りに興味を持つ。製菓専門学校を卒業後、ベーカリー、カフェで働き、原宿にあった『Annon cook』でバターや卵を使わない料理とお菓子作りをこなす。2014年から東京・二子玉川の自宅で、季節の野菜を使った少人数制の家庭料理の料理教室を主宰。著書に『“メモみたいなレシピ”で作る家庭料理のレシピ帖』、『あえ麺100』『ホーローバットで作るバターを使わないお菓子』(ともに共著/すべて主婦と生活社)など。
http://natsuikeiko.com Instagram:natsuikeiko
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