第32回 秋冬に甘味が増す旬の野菜・チコリを使って〜ベルギーの定番料理“Witloof met ham en kaas(チコリのグラタン)”
こんにちは、料理家の栗山真由美です。
唐突ですが、私のいちばん好きな季節は秋です。おいしいものの多い季節は、食いしん坊にはたまりません。東京にいた頃も、旅に出るのは、おいしいものを狙って秋が多かったです。
ベルギーは基本的に寒い国なので、国内産の代表的な野菜というと、秋冬ものが中心です。そのひとつ、チコリも冬に向けて旬を迎えます。しかしながら、こちらでは非常に日常的な野菜でもあり、通年食べられています。
ベルギーの食事情の特徴のひとつに、“prepared foods(半調理品)”の豊富さがあります。温めるだけで食べられる調理品は、日本でもおなじみですね。特徴的な光景は、スーパーの野菜売り場で見られます。すぐに食べられるリーフ野菜、カット野菜も多種類、野菜によってはカットの形状も様々です。
また、あらかじめゆでてあるもの、素揚げされたものなど、料理を簡単にするお助け品もたくさんあります。いつか見た、チコリの半調理品の謎が今回のテーマで解けました。
今月は、ベルギーの定番料理でもある「チコリのグラタン」を紹介しようと思います。冬にうれしいグラタンを、旬の甘味の増したチコリで作ると格別です。
料理名ですが、わかりやすく「チコリのグラタン」と呼んでいますが、ベルギー料理のバイブルによると“Witloof met ham en kaas”となっています。レストランでもこのメニュー名が多いです。オランダ語でWitloofはチコリ、ham en kaasはハムとチーズの意味です。metは英語のwithです。
これまたベルギーらしいといえばそうなのですが、料理名が材料の羅列になってることが多いのです。そのまんまですよね。比較的新しい媒体ですと“Witlofgratin met ham en kaas”(ハムとチーズとチコリグラタン)と呼ぶこともあるようです。
逆にベルギーで一般に「チコリのグラタン」というと、チコリを刻んで原形をとどめない状態にし、他の材料と混ぜて、ベシャメルソースと一緒に焼くというイメージになるようです。
さて、チコリの下処理をしたら、まずソテーして、さらに蒸し煮にします。この工程が終わった時、記憶が蘇りました。
以前、既に加熱されたチコリが真空パックされたものがスーパーで売られているのを見て、このまま食べるのか?どう使うのだろう??と疑問に思ったことがあるのです。なるほど、この料理に使うのですね。確かに、ここまでできていれば、その後がだいぶ楽です。
チコリの粗熱がとれてからハムで巻き、耐熱皿に並べます。
ベシャメルソースにたっぷりのチーズを加えた、ソースのでき上がり。あとは耐熱皿のチコリにかけ、追いチーズをしてオーブンへ。
冒頭の写真ができ上がりです。こちらは、お皿に取って半分に切ったところ。わかりづらいかもしれませんが、中までトロトロしっとりのチコリ、とってもおいしいです。
手前味噌ですが、レストランで食べたものよりも、以前作ったものよりも、なぜか格段においしかったです。コツをおさえて丁寧に作ると違いますね。
最後に、基本的にチコリは好きで、いろいろに使っていますが、最もよく作っている料理はスープです。こってり、ボリューミーな料理が主流のベルギーにおいて、サラッと飲めるこのスープが大好きです。冬の屋外マーケットのフードトラックで飲んで以来、気に入って作っています。
*写真の無断転載はご遠慮ください*
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Profile
栗山真由美
料理家、栄養士。枝元なほみさんのアシスタントを経て独立。ポルトガル料理を中心とした料理教室「Amigos Deliciosos」を12年前から東京で主宰、日本ポルトガル協会の公認講師も7年間務める。2019年より、イギリス人のご主人とベルギー・アントワープに在住。著書に『ポルトガル流 驚きの素材組み合わせ術! 魔法のごはん』(エイ出版)、『「酒粕」で病気知らずになる ゆる粕レシピ』(池田書店)など。
https://ameblo.jp/castanha/
Instagram: mamicastanha
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