第36回 ベルギーのワイルドすぎるたっぷり土つきごぼうで作る、おせち、きんぴら、ポタージュの味は…??

栗山さんのベルギーおいしいもの通信
2023.01.16

こんにちは、料理家の栗山真由美です。
2023年、あけましておめでとうございます。皆様にとって、幸多い年になりますように。今年もどうぞよろしくお願いいたします。

さて、新年最初のエッセイ、派手に始めたいところですが、テーマは地味なごぼうです。オランダ語ではSchorsenerenと言います。
今年も日本国外で作る、自由度の高い創作おせちを作りました。初挑戦したのは、“たたきごぼう“。


確か、2年前には気づいていたと思うのです。ベルギーにもごぼうがあるのだと。ところが、スーパーで目にしたごぼうは、もっと黒々していて、その姿にひいてしまった。正直、おいしそうに思えなかったのです。

写真下は行きつけのビオスーパーのごぼう。少し、やる気が出ました(笑)。そもそも、ごぼうは大好きな野菜。切り方や調理法次第で、七変化するのも魅力的ですよね。
こんなにたっぷり土のついたごぼうは久しぶり、おそるおそる試しましたが、もっと早く使うべきだった!と思うほどのおいしさでした。


見た目がゴツいので、日本のごぼうとは違うことを前提で挑みましたが、使い方によってはほぼ同じだと感じました。例えば、写真はささがきにして水に放した場面ですが、色も白いし、しなやかです。これで定番のきんぴらごぼうを作りました。

味のしみ方もほぼ一緒で、おいしくできました。少し太めのせん切り、薄切りなどいろいろ試しましたが、食感に関しては日本のごぼうとさほど変わらないかもしれません。冒頭のたたきごぼうも、実においしかったのです。
驚きがありました。違いは、皮がしっかりしているので、“こそげる”程度では安心を得られず、ピーラーでしっかりむきました。

日本の最近の野菜は品種改良が進んでいるせいか、アクがあまりない。ごぼうも例外ではなかったけれど、ベルギーのごぼうはアクが強いです。切ってから水に放すと水の色が即座に変わったり、空気に触れた切り口の変化も明らかでした。切り口に触った包丁や手には、滑り止めを塗ったかのようなアクも残りました。もしかしたら、日本のごぼうも昔はこんなふうだったのかも?と思いをはせました。

そして、じっくり火を通すと、少し芋類に近いようなほっくりした感じも出てきました。これは、以前から大好きなごぼう料理であるポタージュにしたら、すごく合いそうだと感じ、早速試しました。

ポタージュに関しては、ベルギーのごぼうのほうが合いますね。ほっくり滋味深い味に仕上がりました。これは発見です。

ごぼうって油との相性もよくて、ガラッと食感を変えてくれます。かつて、よく作っていたごぼうチップスも美味。

さらに、大好きなかき揚げも。カリカリでおいしい。日本で好きだった組み合わせは、桜海老と青のり。青のりは日本から持ってきたものを使いました。桜海老の代わりに使ったのは、ベルギーの北海で採れる灰色エビ。写真では見にくいのですが、しっかり入っています。ごぼうとの相性もバッチリでした。

灰色エビはベルギーらしい食材でもあるので、ご紹介しておきましょう。オランダ語でGrijze Garnalenと言います。殻付きのまま売られているものもあり、レストランで突出し的に出てきたこともあります。写真の灰色エビは、下ゆでされたむき身になります。
通年食べられますが、旬は初夏でベルギーの西側に面する北海沿岸でとれます。

ベルギーには特徴的なエビ漁があります。北海沿岸のOostduinkerkeを中心とした海岸線では、伝統的な馬に乗ったエビ漁(Garnaalvissers te paard)が今も行われています。かつてはイギリス・フランス・オランダでも行われていたそうですが、今ではOostduinkerkeが世界唯一の場所となりました。

2013年、ユネスコは「馬に乗ったエビ漁」を人類の無形文化遺産に登録しました。北海沿岸には、時々出かけていますが、その光景に出会えることは珍しいので貴重な写真です。馬に乗った漁師が海の中に入っていき、すくったエビをカゴに入れていきます。

今年も、ベルギーやヨーロッパの食とそれにまつわる小ネタもご紹介していけたらと思っています。よろしくお願いします。

*写真の無断転載はご遠慮ください*


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Profile

栗山真由美

MAYUMI KURIYAMA

料理家、栄養士。枝元なほみさんのアシスタントを経て独立。ポルトガル料理を中心とした料理教室「Amigos Deliciosos」を12年前から東京で主宰、日本ポルトガル協会の公認講師も7年間務める。2019年より、イギリス人のご主人とベルギー・アントワープに在住。著書に『ポルトガル流 驚きの素材組み合わせ術! 魔法のごはん』(エイ出版)、『「酒粕」で病気知らずになる ゆる粕レシピ』(池田書店)など。
https://ameblo.jp/castanha/ 
Instagram: mamicastanha

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