「幸福のSU(スー)」…おすすめ帖vol.40

『ナチュリラ』本誌でも、季節ごとのリアルクローズとそのおしゃれな着こなし方を提案してくださっている人気セレクトショップ「アナベル」。店主の伊佐さんによる「季節のおすすめ帖」連載コラムです。季節ごとのおすすめの品を月に２回、ご紹介しています。

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photo：川本浩太　text：伊佐洋平　model：伊佐奈々

我が家の娘は、大きなサメのぬいぐるみを抱えながら寝ている。妻は息子から取り上げたパンダのぬいぐるみを抱えて寝ている。

ある人は生まれたばかりの我が子かもしれないし、迷い込んで一緒に暮らすことになった猫かもしれませんが、何かを愛くるしいと思える瞬間は、誰だって笑顔になる。このワンピースは、2年間かけて私にその愛くるしさを訴えてきた、そんな素敵なモチーフが特徴です。

アナベルでは、今シーズンからお取り扱いが始まるブランドです。「STASTNY SU(シュチャストニー スー)」という、とても印象に残りながら、なかなか覚えられそうにない名前ですが、口に出しておまじないのように何度かつぶやくと、その名前の愛くるしさは癖になるほどです。

デザイナーの赤丸さんは、古代ケルト人の文化全般に興味があり、中でもその文様や色彩感覚に強い関心をお持ちです。少し言いづらいブランド名の由来もそこから来ています。

古代ケルト発祥の地の一つとして挙げられるボヘミア地方が現在のチェコにあたることから、チェコの言葉を引用し、「STASTNY＝幸福な(の)」という言葉と女性の固有名詞である「SU(スー)」を合わせ、このようなブランド名を付けたそうです。

極細番手のコットン素材は、やや透け感のある年間定番で着ていただける生地感で、しなやかさと程よい張り感、そして身にまとったときの高級感と品の良さが際立ちます。

秋冬でのご紹介ではありますが、春にも着ていただける素材感とデザインです。

そして、なんといってもこのブランドオリジナルのレースが私の心を動かしました。

つがいの白鳥が仲睦まじく重なり合い並ぶこのレースのデザインは、デザイナーがブランドを立ち上げた当初、一番初めに手掛け、今も象徴として使い続けるモチーフだそうです。相当長い期間を経て完成に至ったこのレースの白鳥は、つがいで微妙に羽の形や表情などが異なり、とても凝ったものになっています。

デザイナーから魂を授かり、ワンピースに施された白鳥には、ある種の生命が宿り、それはそれは、生き生きとして見えます。

はじめてコレクションを拝見した際、引っかかるものはありながらもお取り扱いには至りませんでした。引っかかったものは、まさにこのレースのデザインと、丁寧な縫製や仕立てから感じる雰囲気の良さでした。

それからさらにもう一度展示会を拝見して、その次の3度目の展示会で実際にお取り扱いを決定しました。

それはやはり、忘れられなかったあのモチーフレースがあったから。

 愛くるしさを感じる白鳥のレースがいつもそばにあるワンピースは、自然な活力と笑顔をもたらしてくれる。自身が「幸福のスー」になった気分で着ていただけますと幸いです。

ワンピース：STASTNY SU(シュチャストニースー)　￥44,000+tax

＊編集部より　伊佐さんがおすすめする涼しく快適な夏のアイテムを『ナチュリラ』vol.50夏号で特集していますよ。本誌のほうもぜひご覧になってみてくださいね！