イラストレーターmitsouさん 刺繍入りのリネンハンカチ
見た目のおしゃれももちろん大事だけれど、年を重ねてくると隠れたところへの心の配り方で、その人のまとう空気が変わってきます。バッグの中、香り、インナー……。人には見せない部分こそきちんとおしゃれをする、そんな大人の楽しみ、始めてみませんか? 今回はイラストレーターのmitsouさんに、お話をお聞きしました。
mitsouさんのバッグからのぞく、真っ白なハンカチ。そこには小さく咲く、赤いバラ。その様子は、太宰治の小説『女生徒』で、主人公の女生徒が、下着の胸元にバラの刺しゅうをする一場面を思い起こさせます。うかがえば、インスピレーションはまさにそこから、でした。
「その一節を読んだとき、素敵!と思ったんです。女生徒は、誰にも見えないところに、自分だけが知る小さな刺しゅうがあることに得意になっている。そこに愛おしさを感じたんですね。その気分を真似て、小さな刺しゅうをあしらったリネンハンカチを『乙女のハンカチーフ』と名づけて作り始めたのが、20代後半のころ。絵を描くような感覚でクロスステッチをしながら、今も作り続けています」
そのハンカチを、日々しのばせているのは、いつも肩にかけて持ち歩いている、ポーチのような小さなレザーのショルダーバッグ。お財布も手帳もメイク道具も、このサイズに合わせて小さなものを選んでいます。
↑ バッグの中身はこれで全部。リネンハンカチ、「スマイソン」のスケジュール帳、革作家 ・華順さん作のお財布、口紅と、つげのくし。“お気に入りだけを最小限”が大人っぽい。
最近はスマートフォンでスケジュールを管理する人も多いけれど、ページをめくり、書き留める感覚が好きというmitsouさん。「今年はがんばったな」と思えた年だけ、20代のころから憧れていた「スマイソン」の翌年分のスケジュール帳を手に入れることにしています。選ぶのはもちろん、いちばん小さいサイズです。ふと目に入ったとき、手にとるたびに、ときめくことができるもの。どこにいても、どんなときでも、バッグにそっと手を入れたら、心が躍り自然と微笑むことができるもの。そんなアイテムを持ち歩くのが、mitsouさんのひそかな楽しみなのです。
↑ 学生のとき雑誌『オリーブ』で知ったイギリスの「スマイソン」。少し高価だけれど、手にするたびに気分が上がる。アドレス帳や覚え書き帳には、いつか行きたいお店などをメモ。
「ナチュリラ」vol.37より photo:岡利恵子 text:福山雅美
Profile
mitsou
本誌をはじめとした雑誌、広告、ショップなどのイラストを手がける。商品デザインや企画にも参加。著書に『簡素な暮らし』(WAVE出版刊)。http://www2s.biglobe.ne.jp/~mitsou
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