親子2代で使用の焙煎機から生まれる至極の一杯「BlueDOOR Coffee(ブルードアコーヒー)」
【5日間特集】「アナベル」伊佐さんの、たまプラーザお店リレーvol.4
今週の5日間特集でご紹介しているのは、本Web連載「おすすめ帖」でおなじみの「アナベル」伊佐洋平さんによる、ご近所で親交のある素敵なショップのご紹介。緊急事態宣言を受けて短縮営業をしているお店ばかりですが、オンラインショップなどの営業でも頑張っておられます。そこで「コロナに負けるな!」の気持ちを込めて5つのお店をWebを通して応援するこのコラム、ぜひご覧ください。
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photo:川本浩太 text:伊佐洋平
普段からたまプラーザで仲良くしている5件のお店をあらためて訪問し、オーナーさんたちにいろいろとお話を伺ってきました。今日はわたくしが週3回は立ち寄ってしまう、「BlueDOOR Coffee(ブルードアコーヒー)」のご紹介です。
「ブルードアコーヒー」は、1年前にたまプラーザ駅前の中央商店街にオープンしました。実はお客様からよく聞く名前だったのですが、それは同じ青葉区の寺家(じけ)ふるさと村という場所にすでに1店舗目があったからです。たまプラーザにできる前から、「今度商店街にブルードアさん2店舗目ができるんでしょ?」といった具合です。寺家はたまプラーザから車で20分ほど距離はあるのですが、たまプラーザ界隈にお住まいの方も知っている人はずいぶんいらっしゃるようでした。
今回は、その寺家の店舗で取材をさせていただきました。理由は、彼らのコーヒーは自家焙煎で、それは寺家に行かないと見ることができないから。コーヒーは大好きなのですが、目の前で直火の焙煎を見させていただくのは初めてで、とても楽しみにしていました。もちろん取材ということで、普段は見られない裏側にお邪魔してということです。
「ブルードアコーヒー」は、現在中心になって切り盛りしている染谷裕太さんのお父様が、1997年に脱サラをしてはじめた、「ファザースコーヒー」が原点にあります。脱サラという言葉にはなんだか懐かしさすら覚えるものですが、当時の写真を見させていただきながらの取材は、この20年余りを振り返る心の旅にもなりました。
富士珈機の古めかしい直火焙煎機は、お父様が独立した時から大切に引き継がれているもので、30~40年前のものだそうです。お父様は大手のコーヒーメーカー出身で、根っからのコーヒー好きだそうです。メーカー時代には全国の小売店やスーパー、喫茶店へのルート営業なども経験し、様々なコーヒーを飲み歩く中、今はなくなってしまった、ある喫茶店のコーヒーの味にほれ込み、そこのオーナーさんに仕事の合間をぬっては、焙煎の指導を受けて、独立への準備を始めていたそうです。独立当初はお店を持たず、自家焙煎した豆を全国の飲食店へ卸売りをするスタイルから始まったそうです。その間も、当時では珍しかった、軽トラを改造した移動販売を試みるなど、お父様のコーヒー愛がヒシヒシと伝わってくるお話ばかりでした。
一方で裕太さんは、当時を振り返り、「コーヒーには一切興味がなかった」という。「そのわりには大学を出た後、有名コーヒーチェーンに就職されてますよね?」と聞くと、着物屋さんに就職するか迷って、たまたま入社しただけだと。その後、職を変える中で、ミシュラン2つ星のフレンチレストランのキッチンで働くことになるのだが、それを境に一気に食への興味が湧いてきたようで、家で料理をしたり、美味しいお店を食べ歩いたりするのが大好きだという。
話を聞いていると、どうやら相当なマイペースで楽天家あることが見えてくるのですが、焙煎の話になったとたんに、誰にでもわかるくらいはっきりと表情が変わりました。
たくさんの種類があるコーヒー豆は、その特性を理解し、どのように焙煎してどのように豆を挽き、どういう方法でドリップするかで味わいが決まるという。「ブルードアコーヒー」では、家庭でコーヒーを淹れる際に最もよく使われるペーパードリップを想定して焙煎しているそうです。
まずはコーヒーの生豆を入れてじっくりと低温で10分ほど、まんべんなく豆に火を通す。これは焙煎の準備時間としてとても重要な時間だそう。
焙煎の具合は、季節やその日の天候によっても微妙な変化を付けながら行うそうで、決まった量や時間で良い焙煎ができるものではないそうです。そこは経験でしか補えない部分のようですよ。
狙い通りの焙煎をするために、最も大事なのは「香りと色合いと豆のはじける音」を聞き分けることだそうです。豆のはじけ音を専門用語で「爆ぜる(はぜる)」といい、そのパチパチというハゼる音を聞き分けながら、いつ豆を取り出すかで味わいが決まるそうです。私も耳を澄ませて聞きましたが、ほとんど違いが判らないというのが率直な感想です。裕太さんは隣でしゃがみ込みながら、「いま2ハゼに変わりました。」と目を輝かせている。
こうして豆が出来上がるわけですが、ここからさらに地味な作業であるピックが始まります。出来上がった豆から、不揃いで味を左右してしまいそうなものを手で分ける作業です。
生豆はこのような灰色なのですが、焙煎することで皆様ご存じの茶色い豆に仕上がります。豆のハゼる音はその種類によっても異なるそうで、今では焙煎の奥深い世界にどっぷりとはまってしまった裕太さん。新しく効率的な焙煎機もたくさんあるそうですが、ある意味均一感のない、自身のイメージした個性的な味わいを表現できるのは、お父様から引き継がれたこの古い焙煎機だけなのだとか。
普段お店に立っている時の彼と、今回焙煎の話やコーヒーのお話を聞いていた時に見せたキラキラした表情があまりにも違ったので、「裕太さん、接客が苦手ですか?」って聞いてみると、驚いた表情で「なんでわかるんですか?」と即答した彼を見て、つい笑ってしまいました。彼は見た目からは想像できませんが、根っからの職人気質みたいです。
お店ではシングルコーヒー、オリジナルブレンドをあわせて、およそ20種類ほどのコーヒーをお楽しみいただけます。
寺家のお店は、田園風景が広がる中、テイクアウトか店前の簡易テラスでお楽しみいただけます。
ぜひ一杯のコーヒーと至福のひと時を。わたくしのお勧めは、たまプラーザ店で飲めるカフェモカです。今時期はアイスカフェモカもいいですね。
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