おいしい週末。~料理教室のこと~
近藤幸子の「料理のこと」vol.2
東京・清澄白河で人気の料理教室「おいしい週末」を主宰する近藤幸子さん。始めたきっかけは、毎日忙しく過ごす友人たちが、少しでも楽しく料理して、きちんとした食事をとってくれたらと思ったことだったとか。そのレシピは何度も試作を重ねた「私なりの究極」レシピ。しかしそれは、単純にお金と時間を無尽蔵にかけて作った非現実的な料理などではありません。
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子供のころから、誕生日のプレゼントにオーブンをねだるような料理好き。そして、おいしいものを食べるのが何よりも好きで、さらに食べさせたがりの私は、なんの迷いもなく料理の世界へ飛び込んで、早20年が経ちました。
大学卒業後は仙台の料理学校で働いていましたが、仕事に慣れたころ、ふとした思いつきで始めたのが「おいしい週末」です。最初は友達と集まって、楽しい食事会ができたらいいなと思っていました。毎日忙しくてきちんとした食事ができない友人たちに、少しでも楽しんで料理してもらえたらと思ったのです。
料理教室に通うとなると億劫なので、1か月に1回ぐらいでほどよく楽しく。イベントとして楽しめる感じで、月に1回、日曜日に料理学校を借りてフードイベントとして開催したのが始まりです。
雑誌や本でレシピを紹介する仕事も多いのですが、私にとって教室は特別な存在。レッスンは、緊張感やプレッシャーもあって怖い(笑)仕事でもあるのですが、やりがいがあります。作る過程も、ライブなのでやりなおしがききません。その場で作っておいしくなかったらどうしようと、いつも不安でいっぱいです。でも、そのぶん反応がすぐあり、いろいろな方に出会えるのも教室の醍醐味。大変だけれど大好きな仕事です。
普段のごはんに役立つような、みんな大好きで登場回数も多いハンバーグ、グラタン、餃子などを、何度も試作を重ね、私なりの究極を追求してみたり、初夏には毎年ベトナム、メキシコ、トルコなど、エスニックメニューを取り入れています。暑い時は暑い国の調理法や味つけに学ぶことがたくさんありますから。ハーブをたくさん巻いた生春巻きや、スパイスが香るトルコ風ハンバーグ・キョフテ、メキシコのタコスなど、旅の疑似体験のように異国の香りが溢れる料理は刺激にもなり、楽しいものです。
食事の時の音楽や食卓を彩る植物を考えたりするのも、「食」を楽しむためには、欠かせません。私のわがまま盛りだくさんの、少しかわった料理教室ですが、たくさんの方と出会い、いろいろな料理を作ってきました。料理教室では私がいちばん楽しんでいるのかもしれないと、よく思うほどです。
新しいレシピを考えるときに、いつも思い出す言葉があります。仙台で働いていた頃の師匠が「私たちの仕事は料理の翻訳家なのよ」と言っていたたことが、今でも忘れられません。贅を尽くし手間暇をかけたおいしいものは世の中にいくらでもあるけれど、それを知った上で知恵を働かせ、どう家庭で作りやすく食べやすくするか、それこそが私の仕事なのだなと思っています。
文/近藤幸子 写真/砂原文
近藤幸子さんの著書『重ねて煮るからおいしいレシピ』(主婦と生活社)より
スペアリブとパイナップルの八角煮
「八角は大好きなスパイスのひとつ。いつもの食材がごちそうに早変わりします」
材料
|豚スペアリブ ─ 300g
|カットパイナップル ─ 130g
|しょうゆ ─ 大さじ1と1/2
| → 混ぜ合わせて10分ほど置く
酒 ─ 大さじ2
八角 ─ 1個
レシピ
1 鍋に材料をすべて入れ、ふたをして中火で8分ほど煮る。ふたを取り、汁けがなくなるまで煮詰める。
note
・ パイナップルを加えることでスペアリブが柔らかく仕上がる。
・ スペアリブがなければ豚バラかたまり肉を食べやすい大きさに切って使用する。
料理写真/鈴木泰介
Profile
近藤幸子
料理研究家、管理栄養士。宮城県出身。料理学校、料理研究家のアシスタントを経て独立。楽しみながら作る料理教室「おいしい週末」主宰。簡単でシンプル、それでいて気の利いた料理を好む。子育てをする日々の中で、がんばりすぎないコツを研究中。著書に『おいしい週末、だれか来る日のごちそう献立』(地球丸)など。
おいしい週末Web
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