銅で愉しむ器屋とコーヒー屋の朝ごはん
「THE SHOP 十二ヵ月」柿沼ひとみさんvol.1
こんにちは。愛知県名古屋市に在りますギャラリー&カフェ「THE SHOP 十二ヵ月」店主の柿沼です。
4月の4週にわたって、朝ごはんコラムを担当させていただきます。私たちのテーブルの中に、どなたかへのヒントとなるものが有りましたら幸いです。
私たち器屋とコーヒー屋の日常の朝ごはんは、開店の支度をしながら始まります。子供が巣立ち、お弁当作りからも卒業した今は、肩の力を抜いて無理をし過ぎない暮らしを心がけるようになりました。店まで移動してきた頃が、私たちにとって丁度よい朝ごはんの時間。お腹がしっかり空いてから食べることは、私のからだに合っているようです。
この日のメニューは、トーストとコーヒーに、ベーコンエッグ、ヨーグルト。
最も定番的なメニューですが、少し曇った表情を見せる銅の器や道具たちは、慌ただしい朝のテーブルに落ち着いた空気を運んでくれる、お気に入りのモノたち。器で気分が上がる朝ごはんです。
店では、カフェで使用している器や道具に、私物をこっそりプラスして愉しんでいます。いつでも手に取ってご覧ください。工芸の魅力を感じていただけますよ。
一日の始まりはコーヒーから、という癖がついている私たち。ご飯よりもコーヒーが中心なのかもと思うくらいです。
お店でのドリップがやはりベストで、一番美味しく淹れられるのはもちろんのこと、毎朝の一口目で感じるわずかな違いから、体調を含めてさまざまなことを感じ取れます。また、コーヒーの状態やドリップの確認、新たな試みための時間にもなっていて、とても有意義な朝の習慣です。
■水野正美 / ドリップポット(特注品)
銅のドリップポットは、当店が10周を迎えた際に、金属工芸作家の水野正美さんにフルオーダーで制作していただいたもの。コツコツと時間をかけた証のような槌目から、手しごとの思いの深さと温もりを感じます。
銅は抗菌・除菌作用があり、熱伝導率の良さに優れた素材。水を美味しく保ち、短時間で均一に熱が伝わり冷めにくく、機能性も抜群です。水野さんの道具たちは、そこに愛らしさや経年による佇まいが加わり、暮らしを愉しむという言葉がぴったりです。
そして、ご褒美のつもりでつくっていただいたポットは、この後で更に大きな贈りものを私にくれました。
経年変化を愉しむということは、モノを愛でながら共に暮らし風情を育てること。でも、実は育られていたのは自分の方で、いつの間にかモノに向き合う中から様々なことを教えてもらっていたのですよね。ポットから授けてもらったこの気づきは、皆さまにお還しするべきこととして、いつも心の一番上に留めています。
■水野正美
フライパンMINI, 角皿, ピッチャー
バターナイフ, デザートスプーン
これらの金属器は、水野さんと十二ヵ月で開催しているコラボビストロのために誕生したモノ。金属器への馴染みがまだ薄い日本で、手しごとの金属は温もりがあること、普通の食器として気楽に使えることを、この企画を通して伝えてきました。
近頃は経年変化を愛しむ方が増えて、金工品も増えてきましたね。でも、不慣れな材質のために、使用中に小さな疑問や不安を感じることもあるようです。
最も多く寄せられる問題の一つは、経年したものの一部の色が、剥げたようにムラになってしまう現象。
金属が経年で滋味ある色に育つのは、酸化や硫化などの化学変化によるものです。例えば銅の硫化の場合、風情ある色味に育ったところに、酢やレモン、塩などを付けると、化学変化が起きてその部分だけ色が元に戻ります。意に反して偶突然に戻ってしまったら、何が起きたのかと驚き残念な思いになりますよね。
モノを心地よく使い続けるために必要なのは、少しの正しい知識を持って、愛でる気持ちで接すること。そうすれば、余分な手間や気遣いは必要はありません。器や道具と愉しく暮らしていただけるように、店頭ではこんなお話をたくさんさせていただく日々です。
■松永泰樹 / 黒絵コーヒーカップ
■早崎志保 / てんてん星ヨーグルトカップ
松永さんのマグカップは、作家の人となりを強く感じられます。どの作風でも細部にまで気の行き届きとセンスを感じられ、お客さまにお褒めいただくことがしばしば。一点ものとして展開されているので、マイカップ感も嬉しい器です。
手に取る器や、口を付けて使う器は、バランスや飲み口の具合にこだわりたいですね。どなたかへ選ばれるときは、年齢やお身体の様子も考慮して、重量や形状を考慮したいものです。ストレスを感じさせずしっくりとする器は、きっと美味しさが倍増しますよ。
早崎さんのヨーグルトカップは、カフェでのメニュー用に誂えた、当店のオリジナルです。食事と一緒にいただくボリュームを考えた容量。器が並んだ際に、それぞれが引き立て合う高さでシンプルなシルエットに。そんな理想を形にしていただきました。
お気に入りを長く使い続けたい派の私が器選びで気にかけているのは、理想を具体的に考えること。もしも探しものが見つからなければ、作家さんにご相談。
長年デザインと関わってきたので、無いものは生み出そうの発想になります。いつも親身にお応えくださる作家さん方には、本当に頭が上がりません。
愛知県名古屋市中区上前津1-3-2-1F
TEL:052-321-1717
営業時間:10:00-18:00
定休日:火曜 (年末年始・お盆・連休は変則の場合あり)
Official site:https://www.jyunikagetsu.com
Online shop:https://online.jyunikagetsu.com
Instagram:@jyunikagetsu
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