〜肌荒れに備える「花粉季」の献立〜 茂田正和さんの食べる美容 料理教室レポートvol.5レポート【前編】
健やかで美しい肌を保つライフスタイルをデザインする、化粧品『OSAJI』のブランドディレクター 茂田正和さんは、プロの料理人も思わず唸るほどの料理の腕前の持ち主。著書『食べる美容』(主婦と生活社)では、季節ごとの肌悩みをケアする美容養生食を提案し、レシピ作成から調理まで担当。そんな茂田さんが自ら講師を務める料理教室が合羽橋の『釜浅商店』イベントスペースでスタート!耳寄り情報満載のレクチャーの様子を、不定期連載にてお届けします。
美容と食を繋ぐ新発想の料理本『食べる美容』。その著者で、美味しいもの探求がライフワークともいえる茂田正和さんの頭の中には、つねに食材や調味料のアイディアがぎっしり。自然光の射すキッチンスタジオでの試食タイムに、茂田さんによる食と皮膚科学の関係性解説も付く贅沢な料理教室の第5回目は、スピーディに用意できて食べ応えしっかりの献立です。
免疫力の調整をテーマに、主菜は銀鱈の紹興酒蒸し、主食はあおさ海苔とあさりのご飯、副菜は2品で、筍のオイスターソース煮とごぼうと砂肝のラープを作りました。
「花粉の季節というと、通常は2月半ばくらいから顕著に症状を感じる方が増えてくると思うのですが、今年は少し早いみたいです。この1月末で、もう目や鼻に症状を感じていそうな人をちらほら見かけます。OSAJIの自社調査によると、半数以上の人が花粉の時期になんらかの肌トラブルを抱えていることがわかりました。」
茂田さんによると、健康向上の意味合いで「免疫力を高める」という表現をよく目にするけれど、実際に「免疫力が高まった」状態とは、体に入ってきた異物に敏感に反応し、炎症の可能性が高まっていることとイコールなのだそう。つまり、花粉によるアレルギー反応に悩む時期に大事なのは「免疫力を正常に保つ」工夫であり、それによって炎症を酷くさせないことなのです。
「アレルギー反応は、花粉をはじめとする異物が肌のバリア機能を突破して侵入してきた時に起こります。なので、今回のレシピはバリア機能がきちんと働く健康な肌づくりに必須のマグネシウムや、免疫力と密接な関係にある腸内環境を良好に保つのに欠かせない食物繊維が豊富な食材を使っています」
もちろん、全身の細胞の土台となるタンパク質の必要量をしっかり満たすことは大前提。この料理教室ではほぼ毎回、体重に合わせた1日に必要なタンパク質量のわかりやすい算出の仕方を茂田さんが教えてくれます。
第2回〜陽射しに備える「盛夏」の献立〜【後編】に茂田さんによる詳しい解説が掲載されているので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
筍のオイスターソース煮
食物繊維やオリゴ糖を含み、腸内環境を整えたい時に取り入れたい筍は、体を作るタンパク質や、むくみ予防に欠かせないカリウム、肌の健康に欠かせない亜鉛やマグネシウムも摂取できる優秀食材。今回は、貝柱やオイスターソースを使った旨みたっぷりの味付けでご飯が進む一品でした。
300ccのお水に干し貝柱を入れ、旨みをしっかり引き出すために弱火から沸騰させます。ふつふつと煮立ってきたら、筍と生姜の千切りを入れ、醤油とオイスターソースを加えて中火で10分ほど煮込んだところで火を止めて一旦冷まします。
「僕の料理のモットーの1つは、“手抜きではなく手軽”であること。煮物というとあらかじめ鰹節や昆布で出汁を取っておく必要性を感じる方が多いと思いますが、こうして干し貝柱のような乾物を入れた煮汁にすれば、出汁も取れて具にもなる。時短かつ手の込んだ味わいも叶えられます」
仕上げは、鍋を再びコンロに戻して、焦げつかないよう塩梅を見ながら、強火で汁気を飛ばします。煮詰まったところで味醂を加えてさっと混ぜ、花椒をつぶしながら振り混ぜて盛り付けたら食卓へ。
あおさ海苔とあさりのご飯
醤油とオイスターソースを加えた筍を煮込む約10分の間に仕込みをしたのは、あおさ海苔とあさりのご飯。
今回のレシピにあおさ海苔を使ったのは、皮膚科学的な理由があります。
「あおさ海苔は海水と淡水が混ざるポイントでよく採れる緑藻類で、同じ海藻の仲間でも一般的な紅藻類の海苔やしらすなどの魚類と比べて、マグネシウムがより豊富に含まれています。花粉の季節、肌のバリア機能を健やかに保つのにマグネシウムは欠かせない栄養素なので、より効率よく摂れるあおさ海苔をたくさん食べられるご飯ものに使っています」
1号なら200cc、1.5号なら300ccと、米の量に対して割増しの水を土鍋に入れ、大さじ1ずつの日本酒、味醂、白醤油を加えて混ぜたら、生姜とほぐしたあおさ海苔、砂抜きしたあさりを入れて蓋をして中火にかけます。
「白醤油は大豆のみで作られていて、出汁を加える必要がないほど旨みが強い便利な調味料。今日は、殻付きのあさりからも出汁と塩気が出るので加える白醤油の量を少なめにしていますが、塩気を含んでいない具材の炊き込みご飯に使う時はもう少し多めに入れても大丈夫です」
沸騰したら弱火にして10分炊き、火を止めて余熱で10分蒸らせば磯の香りが広がる炊き込みご飯が完成。
「お米は、水が早く沸騰すればするほどパラッと仕上がります。なので、水の量と鍋の熱伝導率で炊き上がりが変わってくる。熱の伝わり方がゆっくりな土鍋は、ねっとりふっくらと仕上がります。一方、熱の伝わりが素早いアルミ鍋などはインドのお米などパラパラに炊き上げたい時におすすめです。ここで使う釜浅商店さんのご飯釜は南部鉄器製、鋳物の鍋でちょうど中間的なほど良い仕上がりのご飯が炊けます」
ご飯炊きマイスターになれそうな、鍋の熱伝導率についての知恵。いろいろと使い比べてみたくなりそうです。また、前半の筍のオイスターソース煮込みで使ったのは、茂田さんがプロデュースしているアルミ製の鍋「HEGE」。熱伝導率の高い鍋を使うことで、煮込み時間を短縮でき、「HEGE」の場合はそのままお皿として食卓に出せるスタイリッシュさもポイント。
「僕自身、家庭でキッチンに立つことが多いので、調理する人が犠牲にならず、みんなで同時に食卓を囲めたらいいな、という想いからHEGEは生まれました。キッチンで仕込み、テーブルでカセットコンロの火にかけ、その場で調理しながらみんなでワイワイと出来立てを食べられます」
後編では、主菜の銀鱈の紹興酒蒸しともう1品の副菜、ごぼうと砂肝のラープの調理の模様、茂田さんによる栄養と皮膚科学のレクチャーについてお伝えします!
photo:小松原英介 text:石塚久美子
Profile
茂田正和
音楽業界での技術職を経て、2002年より化粧品開発者の道へ。皮膚科学研究者であった叔父に師事し、肌にやさしい化粧品づくりを追究する中で、健やかな美しさにとっては五感からのアプローチも重要と実感。2017年、スキンケアライフスタイルを提案するブランド『OSAJI』を創立、ブランドディレクターに就任。2022年には、香りや食から心身を調律するOSAJIとレストランの複合ショップ『enso』(鎌倉・小町通り)を手がけ話題に。同年9月、初の著書『42歳になったらやめる美容、はじめる美容』(宝島社)を出版。2023年は、日東電化工業のめっき技術を活かした器ブランド『HEGE』のプロデュース、そして日東電化工業より分社化された株式会社OSAJIの代表取締役に就任と、自身にとって大きなターニングポイントの年となった。
Instagram : @masakazushigeta
https://shigetanoreizouko.com/
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