丁寧に暮らさない。前向きに手を抜こう。 ~牛こま肉の小松菜ソースがけ~

1週間特集『がんばりすぎないごはん』
2017.09.18

『がんばりすぎないごはん』の作り方 vol.1

2人の子どもを育てながら働く料理研究家の近藤幸子さんは、仕事に育児にと忙しい日々の中で、すべてを完璧にこなせない自分への強い自己嫌悪に、押し潰されそうになったことがあると言います。このままだと家族にも悲しい思いをさせてしまう……そこで近藤さんは一念発起、家事の中でもいちばんのネックだった料理を、「前向きに手を抜く」方向へと舵を切ります。近藤さんの話題の新刊『がんばりすぎないごはん』より、家事や育児に悩むすべての人に捧げる、文章とレシピをご紹介します。

 

 「丁寧に暮らす」ことが私にとって理想の生活でした。ゆっくりコーヒーを淹れたり、お気に入りの器に料理を盛りつけたり、部屋を気持ちよく整えたり、大好きな本を読んだり、すてきな小説や雑誌の中の世界みたいな、そんな日々を送っていたかったのです。

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 ところが子ども2人を育てながら、実家も遠く、共働きの環境では、どうがんばってもそのゆとりを捻出することができないのです。子どもたちと過ごす時間は、私にとって楽しいことも多いのですが、時間や気持ちの余裕が失われて、心身ともに疲れ果てていた時期もありました。「丁寧に暮らす」ことにこだわってしまったために、やらなければならないことが増え、ピリピリしていました。

 そしてある日、「丁寧に暮らす」ことができない私を、責めたり悲しんだりしている自分に気づきました。丁寧な暮らしがいつのまにか呪縛になっていまっていたのです。

 どう考えてもおかしいですよね。私にとっていちばん大切なことは、私も家族も穏やかに笑顔でいられること。そうなれない原因があるならば、解決する策を考えなければなりません。だから私は、できないことでくよくよするのではなく、恐れず前向きに手を抜こうと決めたのです。もっとも大きな負担になっていたのは、ほかならぬ料理でした。

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 仕事や子育てに追われる日々の中で、毎日のごはんを作ることは、そう簡単なことではありません。料理を仕事にしている私でもです。そこで私は優先順位を決めました。大事にしたいのは、自分が納得のいく美意識のようなもの。ただただ楽なほうを選ぶのではなく、知恵や工夫を盛り込んだ「がんばりすぎない」前向きな手抜きです。それは、時短だけれど、手間はかけないけれど、たくさんの工夫が生かされているレシピ。題して『がんばりすぎないごはん』です。

 「がんばりすぎない」ってなんでしょう? あり方はさまざまだと思いますが、あまりまわりを気にせずに、自分なりのよいバランスを見つけることが大切です。この本を作っていく中で、私にとってはこれが「がんばりすぎない」ってことなんだなと、再確認できたような気がします。

 食べることが大好きで、毎日がんばっているみなさんのお役に立てたらうれしいです。心に重くのしかかる、苦しいばかりの料理ではあまりにも悲しいですよね。食べることは、生きていくための“義務”であると同時に、最大の娯楽であるとも思うのです。忙しい中でも、私は夢がある料理を作りたかった。楽しく作っておいしく食べられる方が、少しでも増えるよう願っています。


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生の小松菜にあるハーブのような香りを活かすために、ソースにしてみました。小松菜の青くささが気にならないように、レモン汁を少し加えて。このアイデアはグリーンスムージーを飲んでいるときに思いつきました。炒めた豚バラ薄切り肉や魚のソテーなどにもよく合いますよ。

材料《2人分》
牛こま切れ肉 250g
塩 小さじ1/3
こしょう 少々
小松菜ソース
|小松菜 1/2わ(100g) 
|塩 小さじ1/3
|にんにく(みじん切り) 1/2片分
|レモン汁 小さじ1/2
|オリーブオイル 大さじ2
サラダ油 大さじ1/2

作り方
1
牛肉は塩とこしょうをふる。

2
小松菜ソースを作る。小松菜は粗みじん切りにしてボウルに移し、塩をふって水けが出るまで手で強くもみ込む。にんにく、レモン汁、オリーブオイルを加えて混ぜる。

3
フライパンを熱し、サラダ油と牛肉を入れ、強めの中火で肉の色が変わるまで炒める。器に盛り、2の小松菜ソースをかける。

 

文/近藤幸子 撮影/福尾美雪

←その他の近藤幸子さんのレシピはこちらから

近藤幸子『がんばりすぎないごはん』(主婦と生活社刊)定価:本体1300円+税

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料理研究家だって日々の料理は大変! 2人の子どもを育てながら働く近藤さんの結論。「そうだ、前向きに手を抜こう」。時間も手間もかけない代わりに、たくさんのアイデアを込めました。毎日おいしい簡単料理、104レシピ。

Profile

近藤幸子さん

料理研究家。宮城県出身。料理教室「おいしい週末」主宰。料理学校、料理研究家のアシスタントを経て独立。2007年11月、『おいしい週末』(筑摩書房)を上梓。2度の産休・育休を経て、2014年から活動再開。家事や育児をこなしながら雑誌「LEE」などで活躍中。シンプルで気の利いた料理を好む。夫、長女、次女との4人暮らし。著書に『重ねて煮るからおいしいレシピ』(主婦と生活社)など。
おいしい週末Web http://oishisyumatsu.com

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