勝山・永平寺編vol.2 食と日本酒を楽しむ大人の酒蔵複合施設「ESHIKOTO(エシコト)」

地元のおしゃれさんが 案内する 小さな旅
2023.11.11

万葉集にも歌われた「三方五湖」に国の天然記念物「東尋坊」、有名な景勝地が数多くある福井県。2023年7月にリニューアルした世界有数の規模を誇る「福井恐竜博物館」も大人気です。
今回案内してくれるのはセレクトショップとカフェ「nimbus(ニンバス)」を営む笠川さん。お店のある勝山市とそのお隣の永平寺エリアのとっておきのスポットをご紹介いただきます。

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勝山市でセレクトショップ「nimbus」を営んでいる笠川です。今回は、勝山市のお隣、永平寺町にある酒蔵複合施設「ESHIKOTO(エシコト)」をご紹介します。


凛とした佇まいの「ESHIKOTO」。設計は建築家・古谷俊一氏、アートディレクションはグラフィックデザイナーの佐藤卓氏がつとめています。

「ESHIKOTO」を手掛けているのは、日本酒「黒龍」や「九頭龍」で知られる黒龍酒造。これまで訪れた海外の銘醸ワイナリーの在り方から着想し、「日本酒をつくり、販売するだけではなく、食や風土も含めて発信し、その出会いを楽しんでいただける場所を創りたい」とプロジェクトをスタート。開業第1弾として、スパークリング日本酒を貯蔵する臥龍棟(がりゅうとう)と、レストランやショップを楽しむ酒樂棟(しゅらくとう)をオープンしました。



酒樂棟に入っているのは、カフェレストラン「acoya(アコヤ)」と、黒龍酒造の各銘柄のテイスティングや商品の購入ができる「石田屋ESHIKOTO店」の2店舗。
さっそく行ってみましょう。

棟に向かうための階段を上がって、すぐ目に飛び込んでくるのがこの景色。風趣に富む里山の自然と、目の前に滔々と流れる九頭竜川が、まるで風景画のようです。


吸い込まれるように前に進むと、視界がひらけて現れるは大パノラマ。思わず、おお〜と声をあげてしまいました。



自然との一体感を感じられるよう、店舗前の電線は地中に埋め込んでいるそう。

そして、その美しい風景を前にお料理を楽しめるのがレストラン「acoya(アコヤ)」です。店内はランチやお酒に合うおつまみを提供する「アペロ」と、お菓子を販売する「パティスリー」の2ゾーンに分かれています。



福井特産の笏谷石の床に一枚板の美山杉のテーブルが贅沢な空間を作り出します。

 

本日は昼膳(2,800円)をいただきました。
フランス料理と永平寺のフィルターを通して表現するというコンセプトのもと、地元の食材を使い、そして、永平寺の精進料理にちなんだ御膳スタイルで提供。
器にも越前焼きや越前漆器を用いて、五感で福井を味わうことができます。
昼膳は主菜にお肉かお魚を選ぶプリフィクス。事前予約がおすすめです。



この日のメインはシェフの竹内賢太郎さんが惚れ込んだという黒龍吟醸豚のコンフィ。カリッと中はジューシーで、少し酸味のある自家製酒粕蕎麦粉パンともよく合います。その他福井県産の野菜を贅沢に使ったサラダやポタージュがついて、満足感は高いけれど重すぎない、観光中にもぴったりのランチでした。

 

そして、日々、SNSをにぎわせている「Pâtisserie acoya(パティスリー アコヤ)」の「パフェ」がこちら!
フルーツをふんだんに使い、ソルベ、ジュレやクランブル、ブリュレなどが美しく層を描きます。



9月初旬のこの日は「無花果とその葉、和素材」のパフェ(コーヒーか紅茶付き2,300円)でした。県内産の無花果を2種使い、果肉のみずみずしさやなめらかさを主役に、層によってそれぞれ違う食感や香り、味わい、そしてその組み合わせのグラデーションを楽しめるように趣向が凝らされたひと品です。今回のパフェで印象的だったのは、ソルベに無花果の葉で香りづけされていたこと、そして最後の層にカシスの酸味でさっぱり食べ終われること。無花果を余すとことなく味わって感じてほしいという、パティシエール岡田麻波さんの思いが伝わるパフェでした。これからも季節が変わる楽しみのひとつになりそうです。

「パティスリーアコヤ」のおいしさを家にも持ち帰りたい!はたまた、あの方にも伝えたい!という方は、パティスリーゾーンで販売している、黒龍酒造蔵元のお酒をテーマにした特別な焼き菓子をどうぞ。


続いては、隣接するショップ「石田屋ESHIKOTO店」へ。こちらは、黒龍酒造のお酒と地元の伝統工芸品を扱うお店です。



じつは、空間も福井づくし。床やカウンターには独特の青みが美しい福井県特産の笏谷石(しゃくだにいし)を敷き詰め、壁紙には漆黒の越前和紙を使用。什器には樹齢200年の美山杉を用いたベンチや、伝統工芸品の越前箪笥を用いています。



越前箪笥(えちぜんたんす)には地元のアーティストが制作した酒器が展示。気に入ったものがあれば購入可能。

黒龍酒造は文化元年(1804)創業の、福井を代表する酒蔵のひとつ。「黒龍」や「九頭竜」が有名ですが、ぜひ試していただきたいのが、ここの他では購入できないESHIKOTOブランドの限定酒。これまでの黒龍酒造とはまた違う魅力を持つ新シリーズです。店舗奥のカウンターでは「本日のテイスティング」(1種600円)ができ、人気の銘柄や季節限定酒など、個性豊かな日本酒の利き酒が楽しめます。購入前の試飲も可能なので、飲み比べてお気に入りを決めたいときや、限定酒を手軽に楽しみたいときにぜひ。

見どころ盛りだくさんの「ESHIKOTO」ですが、実はまだプロジェクトの一部。

将来的には、蒸留所、醸造ラボ、オーベルジュなどが計画されています。
これまで200年もの間伝統を守ってきた老舗酒蔵のこれからの変化に、期待が高まるばかりです。

 

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ESHIKOTO(エシコト)

「ESHIKOTO(エシコト)」
〒910-1202 福井県吉田郡永平寺町下浄法寺12-17
TEL:0776-63-1030(石田屋 ESHIKOTO店)
営業時間:10:00~17:00
定休日:水曜、第1・3・5火曜(ほか不定休あり)
※施設入場は20歳以上に限る、ペット同伴不可
https://www.instagram.com/eshikoto_official

 

「Apéro&Pâtisserie acoya(アペロアンドパティスリー アコヤ)」
〒910-1202 福井県吉田郡永平寺町下浄法寺12-17 酒樂棟2F-B
TEL:0776-63-9396
営業時間:11:00~18:00
定休日:水曜、第1・3・5火曜
https://www.instagram.com/acoya.fukui

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