シャツ作りとカフェオープンを同時に Vol.2 ホーチュニアコダータ主宰/コロモチャヤ店主 中臣美香さん
その行動力には驚くばかり。
いつか自分のお店を開きたいと、
製菓の学校にも通い始めました。
すると、思ってもいない変化が起こったのだそう。
「デザートを作って器に盛り付ける。
そのワクワクする感じが洋服を作っていた頃と
同じだったんです。考えて、手を動かして、
何かを生み出す。
その頭の中の思考回路が同じだ!って。
会社を辞めてから、ずっと洋服作りは
封印していたんですが、もしかしたら
両方やれるんじゃないかと思いはじめました」。
こうして、シャツ作りをスタート。
カフェオープンの準備と並行し、
インターネットで販売を始めました。
その後3年間の準備期間を経て、
ご主人と一緒にふたつの店を開店させたというわけです。
「うまくいくかどうか、
不安じゃなかったのですか?」と聞いてみました。
「私がやりたいことは、特別なことじゃない。
自分をすごい人間だなんて思っていないから、
そんな私が作るものだったら、
同じように共感してくれる人がきっといるはず。
そう思ったんですよね」。
そう言いながらも、一見普通に見えますが、
スイーツにも、シャツにも、味わった人、
腕を通した人にしかわからないよさが潜んでいます。
「タルト生地はちょっと硬めに。
ナイフがコツンとお皿に当たるぐらい硬いほうが
紅茶に合うと思って」
シャツは細身でも、腕が楽に回せるように、
第一ボタンを止めても苦しくないようにと
パターンを工夫しています。
「コロモチャヤ」にお茶を飲みに行くと、
のんびりできるのに、
どこか背筋が伸びる思いがします。
お皿もタルトもシャツ生地で
作ったというおしぼりも、
隅々まで中臣さんの心が宿り、
心がひたひたと満たされていくよう。
道端に咲くドクダミの愛らしさに気づくように、
一見普通のものの中にある美しさに
目を凝らすことで、人の心は磨かれるのかもしれません。
text:一田憲子 photo:有賀傑
『暮らしのおへそvol.22』より
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