江戸薫る“おひつ”で口福ごはん「江戸結桶 桶栄(えどゆいおけ おけえい)」

大人の江戸あるき
2018.12.17

●東京に唯一のこる結桶職人の工房


ほかほかと湯気のあがる炊き立てのごはん、お米の国に生まれてよかったと思うひとときです。炊き立てに勝るものはないと思っていた私ですが、知り合いのお宅でいただいたちょっと冷めたごはんのおいしいこと!理由を尋ねると“おひつ”の存在が大きいと教えてくれました。

 

s-ok1柾目が美しい桶栄のコンテナ櫃(5万円~/左)と江戸櫃(7万円~/右)。調湿効果があるので、ごはんはもちろんパンやお菓子を入れてもいい

 

「炊き立てのごはんは水分が多い。おひつは、ごはんの余分な水分をすいとり、時間がたっても保湿をしてくれます。炊飯器や鍋からおひつに移し替えることで、炊き立てから冷やごはんまで、いつでもおいしいごはんがいただけます」
こう話してくれたのは、東京で唯一の結桶工房「江戸結桶 桶栄」(以下、桶栄)四代目となる川又栄風さん。

 

s-ok2江戸櫃は、蓋も食器として活用することも。

 

●江戸発展の立役者・深川に開業して百三十年


明治二十(1887)年、深川の地で工房を開いた桶栄。深川・木場は、江戸の町づくりのため、諸国から木材が運び込まれる集積場として発展をとげた町です。そして資材を管理していた木場の町が、大江戸を作ったと言っても過言ではありません。風景画の名手・歌川広重は、そんな町の様子を『名所江戸百景 深川木場』で描いています。

 

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歌川広重の「名所江戸百景 深川木場」/国立国会図書館ウエブサイトより転載

 

近隣には材木問屋はもちろん、建具や指物など木をあつかう職商人の店が多かったとか。おひつ、手桶、風呂桶、など日用品だった桶は、風呂桶ならば風呂桶専門と桶ごとに専門職人がいたそう。「創業以来、桶栄はおひつを手掛けてきました。初代のおひつは、形の美しさや丈夫さが評判となり、多くの料亭で使われていたようです。今は、食器を主に、さまざまな木工芸品をつくっています」

 

s-ok4伝統技法で手掛ける今様な桶たち。オーバルボトルクーラー(左18万円~/左)とボトルクーラー(6万円~/右)。

 

●いつかは手に入れたい、憧れの江戸櫃


桶栄のおひつは、樹齢三百年以上の椹(さわら)で作られています。「椹は、軽くて手馴染みがよく、耐水性や抗菌力にもすぐれ、ほのかな香りがごはんの香りをそこなわない、とても優れた素材です」。とはいえ、自然のものなので一本一本違いがあって当然。「だから“木のなり”にあわせて、無理なくつくることを心がけています」。

 

s-ok5一年以上乾燥させた椹の原木を桶の高さに玉切り。それをクレという鉈(なた)で柾目に割っていく。割り材を半年以上自然乾燥させて(写真)、その後さらに加熱乾燥をさせる。

 

椹の原木を割り材へと加工し、それを何度も削りあげて、隙間のないように束ねて、さらに磨きあげていきます。完成まで二十以上にもなる工程を、すべてひとりで、すべて手作業で、行っていく川又さん。「機械製がだめで手仕事だからいいのではありません。初代から受け継いだ伝統技法が、よいもの作るために一番いいやり方だと思っています」

 

s-ok6シュッシュッと割り材を削る音のみが響く、桶栄の作業場。

 

川又さんが手掛ける結桶は、宮内庁をはじめ伊勢神宮などの社寺仏閣へと納められています。また料亭や和菓子店はもちろん、最近ではフランスのシャンパーニュメゾンからも注文が入ることも。暮らしに欠かせない道具から暮らしを豊かに愉しむ道具へ、いつかは手に入れたい憧れのおひつです。


*商品すべて税抜、2018年12月現在のものです。

 

江戸結桶 桶栄
東京都江東区扇橋1-13-9

☏03-5683-7838
営業時間 9:00~18:00
休日 不定休
http://www.okeei.jp/

Profile

森有貴子

Yukiko Mori

編集・執筆業。江戸の老舗をめぐり、道具と現代の暮らしをつないだ『江戸な日用品』を出版、『別冊太陽 銀座をつくるひと。』で日本橋の老舗について執筆(ともに平凡社)。落語、相撲、歌舞伎、寺社仏閣&老舗巡りなど江戸文化と旅が好き。江戸好きが高じて、江戸の暦行事や老舗についてネットラジオで語る番組を2年ほど担当。その時どきで興味がある、ひと・こと・もの、を追求中。江戸的でもないですが、instagram morissy_edo も。

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