熊本の憧れショップ「Ecru et pousse」の物語【前編】
今日は編集部からうれしいお知らせが! 「暮らしとおしゃれの編集室」の「おしゃれさんコーディネート」でおなじみ、熊本のセレクトショップ「Ecru et pousse(エクリュ エ プゥス)」の松村由紀さんに、『ナチュリラ』に登場していただけることになりましたー。いつもとは違う一面が見られるかも!? なので、きのう発売の春号、ぜひご覧いただけたらうれしいです。今日は、そのコーディネートの一部を、「Ecru et pousse」の歩みのお話とともに、紹介しますね。
松村さんがお店を開いたのは、約9年前。好きで通っていたカフェの倉庫で、小さな小さなお店をスタートさせました。
「最初はそのカフェのお客さんだったのですが、いつしか、クリスマスやバレンタインデーなどの忙しい時季にラッピングのお手伝いをしたり、デパートの催事に出店する際、スタッフとして携わらせてもらったりするようになったんです。そうしたら、オーナーの方が『お店をやりたいなら、うちの前にある倉庫を使ってみたら?』と言ってくださって」
それ以前は歯科衛生士として働いていた松村さん。雑貨店や洋服店で働いた経験は、まったくありませんでした。でも、もともと部屋の模様替えや服のコーディネートを考えるのが大好きで、いつかお店を開いてみたいという思いは、ずっと持っていたと言います。当時、3人の娘さんが小さかったこともあり、遠くへ通う必要もなく、自分のペースでできるということで、思い切ってショップオープンに向けて踏み出すことにしたのです。
自由な空間で、自分の好きなものだけを置く。思い描いたコンセプトは、とってもシンプルでした。だから、あまり考え込むことはなく、前を見て進むことができたのだそう。最初の仕入れは、自分が長年好きで使っていたキッチンクロスのタグを見て、そこに書かれていた連絡先に電話をするところからスタート。それが、長年お付き合いすることになるブランド「R&D.M.Co-」との出会いのきっかけとなりました。
「『R&D.M.Co-』の服は、見て触れて袖を通してよさを感じることができる、唯一無二の存在。見えないところにまでパイピンングが施してあるような丁寧な仕立てに、毎シーズン本当に感動するんです。これだけの手間と時間をかけて作られた服の着心地と、着る楽しさを、より多くの方に味わってもらえたら……。地方の小さなお店で、できることは限られているかもしれませんが、自分なりの方法でコツコツと届けていきたいと思っています」
ところがお店を開いてから1年後、そのスペースが駐車場になるということで、「Ecru et pousse」は移転を余儀なくされます。いろいろ探した松村さんは、とても古いけれど見晴らしがよく、素敵な雰囲気をもつ物件を見つけ、そこでの再出発を決意。
とはいえ、内装を業者に頼める資金はありません。新しいお店の改装を主に担ってくれたのは、なんと松村さんのお父さんでした。約3か月間、毎週のように地元の島原から通い、その後一緒にお店を営むことになる池上さんと協力しながら、ペンキを塗ったり壁を作ったりと奮闘してくれたそう。そして最後に、入口にアンティークドアを取りつけて完成させてくれたのは、隣町の南阿蘇で木工所を営む義理のお兄さん。「家族みんなに協力してもらって出来上がったこのお店は、古いけれど、私にとって宝物のような場所です」
「最初は1階のスペースだけだったのですが、見晴らしのいい窓があるのは2階。『ミナ ペルホネン』のアイテムを多く扱わせていただけるようになったことをきっかけに、2階も改装して、『ミナ ペルホネン』のためのフロアを作ったんです」
うれしいことに、数年後、お店を訪れたデザイナーの皆川明さんも、この空間をとても気に入ってくれたそう。窓に直接、作品を描いてくれるという素敵なプレゼントもありました。また、熊本・水俣のイベントでお話会をしてもらったり、一緒に水俣の作り手さんたちを訪ねたりと、熊本に光があたるように松村さんたちが続けている小さな活動にも、快く参加してくれています。
とてもささやかで不器用だけれど、まっすぐで熱い松村さんの思いは、「Ecru et pousse」を通じて少しずつ、多くの人々に伝わりつつあるようです。後編では、「Ecru et pousse」の“今”と“これから”のお話をお届けしますね。
「ナチュリラ」vol.45より
撮影:atelier graine 穴見春樹
熊本市北区打越町40-61
TEL/FAX:096-288-3321
営業時間:11:00~17:00
定休日:日曜、水曜 (他、不定休)
http://www.ecru-et-pousse.com
Instagram「@ecru_et_pousse」
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