モダンな茶店で味わうオリジナルかき氷「山本山 ふじヱ茶房」
●老舗が仕掛けた、五感でお茶を味わう茶房
江戸中期までは、江戸庶民が飲んでいた茶は蒸して丸めた団茶でした。赤茶色で薄くて、あまりおいしいお茶ではなかったと言われています。そんななか、京都の茶匠が手掛けた香りがよく色も美しい煎茶に着目したのが、元禄3(1690)年に日本橋で創業した「山本山」の二代目・山本嘉兵衛でした。その茶を「天下一」と名づけて店で売り出したところ、江戸中の話題になり一気に煎茶が広がったと言われています。
山本山の抹茶「上喜撰(じょうきせん)」を使った抹茶のかき氷。
今も創業の地で商いを続ける山本山は、2018年秋に日本橋に日本茶を楽しめる「山本山 ふじヱ茶房」を開きました。お茶本来の豊かな味わいを五感で感じて欲しいと、あつかうお茶から内装・デザインまですべてに趣向を凝らしています。
山本山の歴代店主は、ことのほか富士山を愛し、その姿が見える地に暮らしたそう。そんな店主の思いも込めて名付けた「山本山 ふじヱ茶房」。
茶の味や香りはもちろんですが、釜に湯が沸く音、柄杓で湯をそそぐ音など、音もおいしさのひとつだと、店内の音空間にも気を配り、賑わう通りから店に一歩入ると驚くほどの静けさ。また洗練されたデザインながら、漆喰の白壁や一枚板のカウンターなどナチュラルな素材を使い、温かみのある居心地のいい空間に仕上げています。
山本山 ふじヱ茶房のスタッフが、湯の温度や時間などを見極めながらお茶を淹れてくれる。「三煎目まで楽しんでいただけます」
●誂え和菓子や自家製甘味でご一服
茶房では、日本各地から厳選した10種類ほどのお茶を用意しています。釜から柄杓で湯をすくい、ひとりひとりの客に茶を淹れるスタイルは、さながら江戸の茶店のよう。ここでしか味わえない煎茶や玉露とともにいただきたいのは、日本橋名店の和菓子や抹茶を使った自家製甘味です。
お茶と上生菓子のセットは人気/1,300円~。
「御菓子司 日本橋 長門」が茶房のために誂えた季節菓子は、常時5種類ほど用意されている。
今の季節に人気があるのは、つるんとした食感が涼をよぶ“抹茶わらびもち”だそう。「抹茶の配合はやや多めです。色合いだけではなく、抹茶の味や香りをしっかりと感じていただける甘味に仕上げています」と、山本山 ふじヱ茶房のマネージャーの伊藤さん。
刻んだ谷中生姜を加えた季節茶「谷中生姜」(季節の和菓子付き)/1,700円、上品な甘さの抹茶わらびもち(ほうじ茶付き)/1,000円。お好みのお茶とあわせてもいい。抹茶わらびもちは、「三時の茶菓」セット(平日15:00~18:00、土日祝日13:30~18:00)にて提供。
●抹茶×海苔のオリジナルかき氷で暑気払い
暑気払いの甘味といえば「かき氷」。ふじヱ茶房では、抹茶とほうじ茶の二種類のかき氷をいただけます。海苔シロップを添えた抹茶のかき氷は、茶と海苔にこだわる山本山ならではの一品。おもしろい組み合わせですが、ほろ苦い抹茶氷や甘い小豆餡に香ばしい海苔シロップは意外にも好相性。9月ごろまでいただけるそうです。
ふんわりと丸みのある食感になるように、削る30分ほど前から氷を冷凍庫からだしておくそう。暑気払いにはぴったりなお品書きです。抹茶のかき氷/1,500円~。
江戸な老舗が手掛ける洒落た茶店で、涼一服しませんか。
*商品すべて税込、2019年7月現在のものです。
text&photo:森 有貴子
東京都中央区日本橋2‐5‐1日本橋髙島屋三井ビルディング1階
TEL:03‐3271‐3273
営業時間 10:30~20:00(ラストオーダー19:00)
休日 元日
https://fujie.yamamotoyama.co.jp/
Profile
森有貴子
編集・執筆業。江戸の老舗をめぐり、道具と現代の暮らしをつないだ『江戸な日用品』を出版、『別冊太陽 銀座をつくるひと。』で日本橋の老舗について執筆(ともに平凡社)。落語、相撲、歌舞伎、寺社仏閣&老舗巡りなど江戸文化と旅が好き。江戸好きが高じて、江戸の暦行事や老舗についてネットラジオで語る番組を2年ほど担当。その時どきで興味がある、ひと・こと・もの、を追求中。江戸的でもないですが、instagram morissy_edo も。
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