尾道編vol.2 江戸時代から続く串柿の文化を伝える「尾道柿園」

地元のおしゃれさんが 案内する 小さな旅
2019.10.12

地方在住のおしゃれさんに、地元のとっておきの場所を案内していただく人気連載「地元のおしゃれさんが案内する小さな旅」。今月は、レトロな街並みや景色が魅力的で、観光地として人気が高い広島県・尾道を特集します。最近は移住者も増え、おしゃれなお店やカフェがどんどん増えているそう。そんな今話題の尾道を案内してくれるのは、天然染色で染めた帆布のバッグや小物の製作を行う「立花テキスタイル研究所」の新里カオリさん。ご自身も10年前に移住してきたからこそわかる、尾道の奥深い魅力を教えていただきました。

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text:新里カオリ

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みなさんこんにちは。第2回目の本日は、尾道の山間部、御調(みつぎ)という地域の山頂にある、尾道柿園をご紹介します。

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尾道柿園は尾道市内から車で約30分、尾道北インターから御調川沿いに北へ向かい、途中の小さな橋を渡ってからは、ぐんぐんと山道を登ります。御調川は最近のコンクリート護岸ではなく、三角州や葦の茂みがある川で、天気の良い日には羽干ししている野生の鵜が間近で見ることもできます。

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御調町は海のイメージが強い尾道からは想像がつかないような、緑の深い森の中の道をずっと上がってきたところに突然現れる、桃源郷のような里です。

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全盛期である江戸時代には串柿の産地として150軒を超える柿農家があり、秋から冬にかけて空気がキンと冷えてきた頃になると、各家の軒先がオレンジ色のカーテンのように柿が下がっていたそうですが、今現在干し柿を作っているのはごく数軒。

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手で収穫してひとつひとつ皮をむき、紐をつけて干す、手間のかかる干し柿はなかなか担い手もおらず、重ねて串柿の文化が忘れ去られたこともあり、ここまで衰退してしまったとか。

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尾道柿園は、昨年クラウドファンディングによって、倒壊寸前の空き家だった建物をリノベーションし、工房とカフェをつくりました。内装は、壁や天井、机に至るまで全て「尾道柿園」で生産している柿渋液を使って仕上げられました。そのため、こちらは柿渋液を使った塗装を体感できるショールームとしての役割も。窓を開けると、25キロ先の海風が山肌をなでながら吹き込んで来る、心地よい空間です。

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尾道柿園代表の宗康司さんは、「お父さんがやられていたこの柿畑を無駄にしたくない」と50代でサラリーマンを早期退職し、9年前にここを受け継ぎました。柿についての宗さんの情熱はきっと日本一。

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「干し柿だけではなく、別の加工品も作りたい」と考えていた宗さんは、柿酢、柿渋液など、季節に左右されず年間を通して販売できるものの生産を開始しました。干し柿のシーズンだけではなく一年中、柿の味や色を楽しめるような商品づくりを続けています。ちなみに柿渋は、前回ご紹介した、私の会社で作っている帆布のバックの染料としても使用させていただいています。深みのある明るい茶色は、布や和紙、木にもよくなじむ、日本を代表する天然染料です。

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カフェでは、100%天日干しで作った無添加の干し柿を、コーヒーや紅茶と一緒に味わうことができます。

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また、宗さんお手製の石窯で焼いたピザランチをいただくことも。ピザ作り体験では、自分で生地を伸ばし、柿のドライフルーツなどをトッピングして……

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窯に入れるまでも体験できますよ。干し柿を使ったピザは、柿の甘味とチーズの塩味が絶妙な、逸品。そして緑あふれる里山の景色を見ながら食べると、より一層おいしく感じます。
※前日までに予約が必要、御一人1,500円+税、2名以上からのご利用。詳しくは尾道柿園まで。

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食事の後は、山道を散策したり、草刈り部隊として畑で働いているヤギさん達と触れ合ったり、アッという間に時間は流れます。畑の雑草を食べるのがこの子達の任務なのですが、時々柿の葉っぱをかじってしまうんだとか。

他にも、夏季限定で柿渋作り体験も行っています。柿を剪定し、専用の道具を用いて青柿をすり潰し、液を抽出するまでを実際に体験することができます。(こちらも事前予約が必要です。詳しくは直接、尾道柿園にお問い合わせください!)

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「せっかく先代が植えてくれたから」と、柿というこの地域の資源を大切にし、新しい魅力を生み出している宗さんの「尾道柿園」。干し柿の季節はもちろん、どの時期も様々な花が楽しめる里山に、是非足をお運びくださいね。

さて、次回はシネマ尾道をご紹介いたします! それでは、また来週。

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尾道柿園

MAP:
広島県尾道市御調町菅2030
TEL:0848-76-2033
http://onomichikakien.com/

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