宮崎編vol.3　南国を感じながら美味しいパンでリラックスできる「Pancafe ao」

宮崎牛やチキン南蛮、完熟マンゴーなど豊かな食材の宝庫でもある宮崎県。おいしい食事と南国ならではの大自然に癒される旅がおすすめですよ。
最近、宮崎市にはおしゃれで面白いお店が続々とオープンしているそうで、そのホットな情報を教えてくれるのは、オーダー家具と木工品、雑貨のお店「クローナ」の店主・大島純子さん。14年前から宮崎市でお店を営んでいる大島さんだからこそ知っている、地元の人に長く愛されているお店から最新のおすすめスポットまで、たっぷり教えていただきます。

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宮崎編３回目は、宮崎観光の定番スポット青島にある「Pancafe ao」をご紹介します。

昨年サーフィンの世界大会が行われた青島は、南国宮崎のイメージそのもので日本のミニハワイのような場所です。県内外からサーフィンのためにここを訪れる人も多く、至るところにサーフボードを抱えた人たちが歩いています。青島の中心部にほど近い場所に、この「Pancafe ao」はあります。

庭は亜熱帯植物を思わせる力強い緑で覆われ、店舗は古民家を改装したもの。

一歩店の中に入ると、ほんのりと薄暗い照明の中、美味しそうなパンとウッド調の落ち着く空間が出迎えてくれます。

オープンから10分程経って訪れると、駐車場も店内もすでにお客さんでいっぱいでした。その中で元気に一人で切り盛りする女性が店主の巻野由貴さん。
もともとカフェバーだったこのお店。パン屋を始めるにあたり場所を探していたら、カフェバーをしている知人から「昼間は使わないから使っていいよ」と言われ始めたのが７年前。現在そのカフェバーはやっていませんが、所々に残るバーの名残がこの店特有のリラックスした雰囲気を作っているのかもしれません。

当初はそのカフェバーのイメージに合わせて、パン屋としてパンを作りながらハンバーガーランチも提供していましたが、お店の知名度が上がれば上がるほど、パン屋ではなくハンバーガー屋としての認識が定着し、日に日に膨らむ違和感。そんな中、「純粋にパンが作りたい！」という初心を思い出し、ハンバーガーはきっぱりやめてパン屋としての再出発を果たします。（現在もパンや飲み物のイートインはできますよ！）
それまで好評だったものを切り捨てることはとても勇気のいることですが、思い切ってハンバーガーをやめたら、「ますますパンが美味しくなりましたね」と言ってくださる方もいて、やはり自分の作りたいものをコツコツ作っていこうと志を新たにしたそうです。一人で黙々と集中してパンやお菓子を作っている時間が何より楽しいと話す巻野さん。
ものすごく落ち込んだり苦しい状況にある時、自分が作ったものを食べてその一瞬だけでも笑顔になったり、もう少し頑張ってみようと思ってもらえるようなパンを作っていきたいそう。

実は彼女自身、少し前に目を怪我したことで片目の視力を失ってしまい、しばらくの間お店を休業されていました。その時の暗闇の色を私は想像することもできませんが、復帰後お店を切り盛りする巻野さんは以前と同じく元気でちょっと拍子抜けするほど。一見すると以前と何も変わりませんが、片目の視力を失ったことで以前よりも仕事のスピードが落ちたり、あちこちに体をぶつけてしまうこともあるのだとか。

先日1週間ほど体調を崩した私がやっと食欲が出てきた時、ふと巻野さんの作ったシュトーレンを思い出し口にした途端、「なんて美味しいんだろう」と体にすっと入っていきました。

食べるって楽しいことで美味しいことなんだな、愛なんだなと素直に感じたのです。
それはハンデを言い訳にしない巻野さんの強さとパンへの愛情、パン作りできることへの喜びが一緒にパンに練りこまれて、私の体に優しく染み入るような感覚でした。
できること、できないこと。やりたいこと、やりたくないこと。その境界が以前にも増して明確になる中で、これからもパンに向き合う巻野さん。

今後の目標をお伺いすると、「パンやお菓子に対しての考え方をもっとシンプルにして、自分が心地よくパンが作れるように環境を整えたい」と話してくれました。
パンとドリンクだけのシンプルなパンカフェ。ホッと一息つきたい時、元気になりたい時、新しい一歩を踏み出したい時。「Pancafe ao」のパンはそっと寄り添い、体も心も十分に満たしてくれる気がします。

text：大島純子

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