しあわせな気持ちになる山口和宏さんのパン皿
~in-kyo(インキョ)より vol.1~
木のプレートの扱いについて質問されることがよくある。
そんなときはまず「陶器や磁器の器と同じように使って大丈夫なんですよ」と答えている。そのたびに思い出すのが、数年前に訪れた山口さんのお宅の食卓の風景だ。
山口さんの木の器には、構えることなくサラダやおむすび、鶏の唐揚げや山菜の天ぷらなどが大らかに盛りつけられごちそうが並んだ。使い込まれたその姿からは、毎食のように食器棚から取り出され、使い、洗って家族のみんなが触れているであろうことが黙っていても伝わってきた。幸せな器は美味しく、しゃべって笑って楽しいひとときも一緒に、食卓へ運んできてくれたのだった。
我が家で使っている山口さんのパン皿も、一番古いものは使い始めてかれこれ10年選手。厚みがあるのに軽くて安心感がある。お役目を決めているわけではないのだけれど、美味しいパンやスコーン、パンケーキなどを食べるときには、無意識にこのお皿に手が伸びている。
マメに手入れをしているわけではないというのに、パンに塗ったオリーブオイルが自然と馴染んだのか艶が増して、いつの間にかしっとりと色に深みも出てきた。
(使って洗った後は、濡れたままにせず水気をよく拭いて、風通しの良いところで乾かしてからしまいます。使い込むうちにカサカサと木が乾燥している印象になったら、エゴマ油かクルミオイルを少量布などに含ませて塗るとベタつかずにしっとりします)
そして、姿かたちの変化が嬉しいだけではなく、ふとしたときにホッと笑顔にしてくれる。それはたぶん作り手の山口さんの笑顔を思い出すから。「しあわせのパン」という映画があったけれど、これは「しあわせのパン皿」のお話。
日々の暮らしの中で、月日をともに積み重ねたくなるような器や生活雑貨が並ぶ店。日常着や、おいしいもののセレクトも人気。「今日のひとしな」のコラム執筆は、店主の長谷川ちえさん。
福島県田村郡三春町9
TEL:0247-61-6650
10:00~17:00 水曜・木曜定休
http://in-kyo.net
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