どうにも惹かれるものだからこそ、毎日使いたい。高木浩二さんのうつわ

今日のひとしな
2021.05.06

~「文月」「道具屋nobori」よりvol.6 ~

「道具屋nobori」で初めての個展をお願いしてからは年に一度、個展を開催している陶芸家の高木浩二さん。

その器は、‟彩泥”という技法を使って作られています。

色土の濃淡と窯の中でおかれた場所の温度差から、全体の色味にひとつひとつ違いが生まれることによって模様としてのムラ感が生まれ、表面の細かな凹凸からは器の色味に陰影が加わり、独特の「色」のある器となっています。

この月のような、独特の質感にはどうにも惹かれるものがあります。

同じ形であっても黒土がメインのものや、外側だけ黒釉のものなど組み合わせのバリエーションも多く、見ていて楽しい器たち。選ぶときには採泥のムラ感、全体の色味、そして器自体の形と要素がたくさんあって、個展の時には長考される方や、会期中に何度もお越しになる方も少なくありません(その時に一緒に悩めるのも、スタッフとしての楽しみだったりして)。

彩泥リム鉢

そして意外と気軽に使える頼もしさも、この器の大きな魅力のひとつ。

数年前、高木さんとお話した時に「気軽に使って大丈夫、普通に使っていいんだよ、僕の器は」とおっしゃっていて、すっと心が軽くなったことがあります。

リム皿(小)

今まで気になる器があっても「やっぱりいい器はハードルが高いし、なかなか手が出せないなあ」と思っていたのですが、本当のところはいい器そのものではなく「いい器を普通に使っていいのか?」が不安の種だったのです。

毎日の生活の中で使っていけたらと思うけど、毎日ご馳走を作るわけでもなく。料理は好きだけれど実際、日々の食事はある程度気を抜いてつくっていることが多い。ましてや「作家ものなら、特別な料理を載せないと失礼なのかも」と自分自身でハードルを高く高く上げていたことに、はたと気付いたのでした。

彩泥鉢

毎日の生活の中で使っていける、でも特別な日でも映えてくれる。
オールマイティだけど無難じゃない、毎日のとっておき。

そんな風に楽しめるようになった、きっかけの作家さんでもあります。

その中でも、少し特別感のある金属彩の器についてもご紹介。

銀彩の器はいわゆる「見込み」の部分にのみ施されていて、ものを載せた時に銀彩部分が縁取りとなってきちんと際立たせてくれる第二のリムのような役割をこなしてくれます。華美なイメージになりすぎないのが丁度いい。

まん丸に施されたプラチナ彩のお碗は、よそう時、食べ終えた時、そして棚に仕舞う時にだけ顔を出します。鏡のような反射のあるプラチナは、控えめであってもしっかりと存在感があり、普段使いでも特別感があって嬉しい気持ちに。

毎年12月ごろ、個展を行っています。まだ半年以上先ではありますが、気になるなあという方は是非お越しくださいませ。

 

text: ヨシタケ(道具屋nobori)

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文月/道具屋nobori

「文月」
住所:東京都台東区寿3-7-1
営業時間:11:00~18:00
定休日:水曜日
https://fuzukikuramae.stores.jp/
instagram:@fuzuki.kuramae

 

「道具屋nobori」
住所:東京都台東区寿2-9-17
営業時間:11:00~18:00
https://fromafar.stores.jp/
instagram:@douguya_nobori

 

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