【Day1】ご飯を美味しく保存できる「おひつ」の選び方、使い方

5日間特集・今おススメの台所道具
2021.07.19

暮らしの道具は数年~長ければ数十年使うものだから、慎重に選びたいもの。ところが、世の中には選択肢が多すぎて、何が正解かを見極めるのが難しい……。そんなとき、頼りになるのがその道の“目利き”の存在です。

創業は貞享4年(なんと徳川綱吉の時代デスヨ!)。330年以上にわたって、暮らしの道具の進化を見続けてきた静岡市「三保原屋本店」さんが、あなたの「間違いのないお買い物」をサポート。“家ごはん”が増えた今、おススメの台所道具を5日間にわたってご紹介します。

 

Day1 おひつ

編集部:今回、お話を伺う「三保原屋本店」の常務・堀 高輔さんです。よろしくお願いします。

堀さん(以下、堀):よろしくお願いします。

編集部:「三保原屋本店」は江戸時代の創業で、堀さんは九代目の当主さんです。330年以上続くお店の歴史にも興味津々ですが、まずは本題。昨年からのコロナ禍で、新しいお客様が増えたそうですね。

堀:そうなんです。家で食事をする機会が多くなり、台所まわりを見直す方が増えていますね。お若い方や男性のお客様も増えました。

編集部:そんな、家ごはんを楽しむための道具として、初めに挙げてくださったのが「おひつ」です。

堀:炊いたごはんを「おひつ」に入れておくと、水分調整をしてくれるので、炊き立てよりも美味しく感じられるんです。ごはんが美味しいと満足度が上がるので、まずおススメしたいアイテムです。

 

“温め直しなし”で、ごはんが美味しい秋田杉の「おひつ」

堀:「おひつ」は大きく分けて、木製と陶器の2種類があります。こちらは、天然の秋田杉で作った「栗久(くりきゅう)」さんのもの。内面が無塗装で、調湿性に優れているので、ここで保存したごはんは本当に美味しいですよ。24時間くらいなら常温保存が可能です。

編集部:見た目にも、すごく美しいですね。それに軽い! サイズはどのくらいですか?

堀:これは2合サイズです。例えば、ごはんを3合炊いて、炊き立てを食べたあと、残りの1.5合くらいを保存するイメージで使っています。「おひつ」は実際に入れるごはんの量より少し大きめを選ぶのがポイントです。もう少し大きなサイズだと、5合もあります。

 

木製品は「目」を見る

堀:天然の秋田杉は一般的には、伐採が禁止されているんですが、管理されている範囲で伐採された杉が、まれに市場に出回ることがあります。「栗久」さんの商品は、そこから良い素材を選んでいるので、希少品なんです。
木目を見るとかなり細かいですよね? 樹齢200~250年くらいの杉と言われています。寒い地域でゆっくり、ゆっくり育つと年輪が詰まります。丈夫ですし、単純に物の価値としても高くなります。
一方、植林されたものは、樹齢100年くらいと言われることがあります。経済効率を考えて、早く大きくすると年輪が広がります。様々な木のメーカーさん曰く、「最近は、全体的に若い木が多くなっている」そうです。

編集部:同じ木製でも、ピンキリなんですねぇ。ちなみに“杉”以外の素材もあるんですか?

堀:“さわら”や“檜(ひのき)”の「おひつ」もあります。木の匂いが気になる方は“さわら”、抗菌効果を求めるなら”檜“や”杉“がおススメです。
せっかく木製品を選ぶなら、個体差があるので、「木目」の見方を知っておくと面白いですよ。「おひつ」の木目は、きれいな直線ですよね? これは“柾目(まさめ)”といって、木の芯に向かって放射線状に切り出す方法で、調湿性が高くなるんです。「おひつ」や「飯台」に“柾目”が多いのは、そういう理由です。

編集部:へぇ~。木材の切り出し方で違い出るんですね。

堀:“柾目”は、歪みに強く、反りにくいというメリットもあります。ただし、1本の丸太から切り出せる量が少ないので、どうしても価格は高くなります。

編集部:ちなみにお値段は……2合サイズで41,840円……なかなかの価格ですね。

堀:家庭用品は、電化製品に比べて価格をシビアに見られる傾向がありますね(笑)。例えば、炊飯器は数万円するのが“当たり前”。ところが、鍋や「おひつ」は1万円を超えると、一生モノと感じる方が多いようです。ただ、天然素材の道具は、お手入れ次第で電化製品よりはるかに長持ちします。お客様も「せっかく買うなら、いいものを」という方が多いので、うちでは愛着をもって長く使える商品を揃えています。お客様としても、個体差のある商品であれば、気に入ったものを購入したいですよね。

 

洗い終わったら、上に向けて水分を飛ばして

編集部:「長く使う」ことを考えると、お手入れも気になります。

堀:底の部分を見てください。「栗久」さんは、縁をアール状に仕上げてあるから、すくいやすく、洗うときもラクなんです。

編集部:本当だ! 丸みを帯びているから、ごはんが詰まることもありませんね。


(左)使い終わったら、スポンジで米粒をさっと洗い流す。(中央)その後、熱湯をかけると乾きが早くなる。(右)乾かすときは、上向きに。

 

堀:無塗装の「おひつ」で気をつけたいのは、黒ずみ・カビです。使い終わったら、スポンジでご飯粒をサッと洗い流してから、熱湯をかけて、内側を温めると水蒸気が早く抜けます。そして上に向けて水分を飛ばすのがポイント。洗いかごに伏せている方がいらっしゃいますが、蒸気は上に抜けるので、伏せておくとなかなか乾かないんです。渇ききらないままのご利用も黒ずみのの原因となります。万一、黒ずみが気になったら、サンドペーパー(#180くらい)で削ってみてください。

 

熱々で食べたい場合は、陶器がおススメ

堀:「ごはんは温め直して熱々で食べるのが好き」という方はこちら。「かもしか道具店」さんの陶器の「おひつ」です。蓋の内側が素焼きになっていて、余分な水分を吸収してくれます。木製ほどではありませんが、調湿機能がありますし、陶器なので電子レンジにも対応しています。

編集部:へぇ、このまま電子レンジに入れられるのは便利かも!


耐熱なので、おひつごと電子レンジにかけてもOK。

 

堀:これは1.5合サイズなので、ひとり分の小どんぶりとしても使えます。「毎日、おひつは使わない」という方や「収納場所が限られる」という方は重宝すると思いますよ。

編集部:夜食にしたり、家族ひとりだけ食事時間が遅れたりするときにもいいですね。単身世帯にもちょうどいいかもしれません。

堀:家族構成やライフスタイルによって、必要な道具は変わります。年配の方は、「何より軽さが大事」とおっしゃることも多いですから、選ぶ基準は人によって違うんですよね。
本当に満足のいくお買い物をしていただくために、店頭では「何がおススメですか?」と尋ねられたら「どう使いますか?」と、お客様の目的を引き出すような接客を心がけています。

編集部:なるほど。商品知識だけでなく、自分の本当のニーズを見極めることも大切なんですね。わが家の近くに「三保原屋本店」さんがあれば心強いのになぁ(笑)。でも、例えばネットでお買い物をするときなども、「どう使う?」を自分に問いかけると良いのかもしれませんね。

 

「栗久」おひつ
●素材:秋田杉
●2合 ¥41,800(直径約20.0cm×高さ約9.0cm)
●3合 ¥48,400(直径約20.0cm×高さ約12.0cm)
●5合 ¥61,600(直径約23.0cm×高さ約12.0cm)
*在庫状況により、ご注文いただいてからお時間がかかる場合があります。

「かもしか道具店」陶の飯びつ
●素材:陶器
●こぶり ¥3,300(直径約12.0cm×約11.0cm、ごはん1合分)
●ふつう ¥4,400(直径約15.0cm×約12.0cm、ごはん2合分)

 

撮影:三村健二

 

【編集後記】
江戸時代に荒物屋として創業した「三保原屋本店」は、静岡大火と戦火で2度、消失。昭和になって当時海外から入ったばかりのプラスチック用品を揃えるなど、お店に並ぶ商品は時代とともに変化してきたといいます。
「市場が変わるなかで、うちも小さく変わり続けているから残るのだと思います。老舗だから残す、というより“少しずつ変わる”という感覚でしょうか」と堀さん。
一方、取材前の打ち合わせで、堀さんが何気なく口にした言葉に虚を突かれました。
「人間が千年単位で使っている素材(=木・竹・紙・鉄・土など)は、安全面や、環境面でもサスティナブルでいいと思うんです」
目の前のことで、一喜一憂している自分に比べて、なんと遠くを見ているのか。時代の変化をキャッチするということは、この先を見据えるということ。これこそ老舗の時間軸なのかもしれません。



(上)昭和20年代の店頭の様子。当時、流通し始めたプラスチック用品が並ぶ。(下)現在の本店1階。キッチン雑貨、食器などおよそ2万点を取り揃える。2階~3階ではタオルやパジャマ、服飾雑貨、カーテン、絨毯なども取り扱う。

 

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三保原屋本店(Mihoharayahonten)

住所:静岡県静岡市葵区呉服町2-3-6
営業時間:10:00~18:00
定休日:元日・不定休
TEL:054-252-7111

http://www.mihoharaya.co.jp/mihoharaya/
三保原屋本店通販 https://mihoharaya.buyshop.jp

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