日々育てて味わい深く 仁城逸景さんの漆塗りの‟木の器”

今日のひとしな
2022.07.21

~「bollard」より vol.21 ~

岡山県井原市の山の中で、仁城逸景(いっけい)さんがつくる木の器。もともとお父様の義勝さんが始めた仕事を引き継ぎ、木材から器を形づくるところから漆を塗るまで一貫してお一人で器を制作をされています。

岡山に引っ越してきたときに出会って以来、毎日家族で愛用している器です。

写真右が我が家で7〜8年愛用している器で、左が新しい器です。

仁城さんの器は、日々使う中で拭き上げられ、透き通るような艶が出て、奥行きのある色に育っていきます。新品ではなく、使い込んだ方が真の姿。だから、お店でもこの器を並べて紹介しているんですよ。

ところで、うっすらと木地が透けて見えるのがわかりますか? これは仁城さんの溜塗という技法によるものです。

一般的に漆の器といえば、手間と時間のかかる高級品。だから丈夫にするため、木地を埋めるように下地を塗り重ねてから、ようやく漆が塗られます。

一方、仁城さんの器は、木地に直接漆を塗り込み、重ねていきます。そのため厚い漆の下にも木地が透けて見えるのです。

主役は木。仁城さんは、自身の器を漆器ではなく「木の器」と呼んでいます。

木を、日々の器として事足りるようにするための漆塗り。木そのものの美しさを活かし、木を無駄にせず、木に無理をさせないものづくり。使うたびに感じる優しい感触は、毎日の気取らない食卓にこそ寄り添ってくれるようです。

木の器は、汁椀のイメージが強いですが、軽くて保温性があるため、実はご飯茶椀としてもおすすめなんですよ。お店では、冒頭の写真のように高台の高い椀と、低い椀の取り合わせが人気。

長年使う中で漆が薄くなったら、良心的な価格で塗り直してくださいます。だから私も安心して娘が幼いときから使わせています。

仁城さんの工房に遊びに行ったときに、三十年使っている器でご飯を出してくださって。三十年!。まるで家族の歴史そのもののような時間ですよね。いつか我が家の器もそんなひとつになってくれるのかな、と今から楽しみにしています。

 

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