器作家・井上茂さんの工房を訪ねて

～「soup. 」「soup. Life Store」より　vol.29～

こんにちは。スタッフの野村です。
最近、「作家ものの器」の人気が凄まじいと感じています。
人気のある作家の個展では整理券が配られ、あっという間に売り切れることもよくあるそうです。
作家ものとは、陶芸家、器作家さんが一つ一つ手作業で作った陶器のことです。
昨今のＳＮＳの普及により、写真映えする器や料理が瞬く間に広がりをみせ、いま器ブームがきています。さらにコロナ禍により、外食を控えておうち時間を楽しむため、料理や器にこだわる方が増えたことも影響しています。

先日、器作家の井上茂氏の工房にお邪魔させていただきました。
井上茂氏は愛知県で作陶されている陶芸家。木工作家さんのご紹介で数年前からお付き合いさせていただいております。
器ブームですね！と井上さんにお話を伺うと、井上さんのもとにも、遠方の器ギャラリーから新規取扱いオファーの連絡が今まで以上に届くそうです。
ここ数年でインスタのフォロワーも急増し、海外からの連絡も来るほど注目されています。

もともと鉱物が好きで、自ら原土を採掘し、そこから陶土をつくることもあれば、何種類もの釉薬をご自身で研究してつくることが出来る稀有な方です。探求心が強く、いろいろな技法にもチャレンジし、日々新しい器づくりをされています。

大地の恵み「土」。井上さんは原土の持つ力を引き出すため、あえて人の手を出来るだけ加えず陶土をつくり、ろくろをひく。井上さん曰く、「市販されている陶土とは違い、土の声を指先から感じとらないと、割れたり壊れたりしやすい」と。焼きあがった器の表情豊かな風合いには、井上さんの技とこだわりが詰まっています。

作家と聞くと、（時代錯誤かもしれませんが）自分の表現したいものに突き進むイメージがありますが、井上さんはこだわりつつも、使い手の気持ちに寄りそう作家です。
「器は使い手さんのもの」と井上さんはおっしゃいます。
「作り手の自己満足の作品ではなく、使いたいと思ってもらえるものを作るのが仕事。美しさだけでなく、軽さ、縁の薄さ、高台の高さ、手に馴染む大きさなど考えることはいっぱいある。こうみえてちゃんと考えてるんだよ」と笑いながら教えてくれました。

井上さんの器は彫三島という線彫りのデザインや印花という細かい判を押していくデザインが代表作。日本古来の柄と褐色の土色が相まって、ただならぬ雰囲気を醸す器。
他にも粉引きや緑灰釉の器も色味がとても素敵です。
きつい還元をかけることで土の成分が反応し、釉薬が綺麗に溶け出し底に溜まります。焼きあがった器の釉溜まりは器を太陽に向けて傾けるとキラキラと輝きます。
粉引のうっすらピンク色に変化した様も１点１点異なり、グラデーションのように溶けている美しさに魅了されます。

最近では、植物のアガベにも夢中な井上さん。ご自身でアガベ用の鉢も作られています。夢中になるとこだわらずにいられない性格はさすが作家さんと思いながらも、奥様はリビングスペースにどんどん増えるアガベに困り顔……。

アガベショップからの問い合わせもあり、鉢も商品化され、器ファンのみならずアガベコレクターにも人気が出ています。

これだけ人気で製作が追い付かない日々にもかかわらず、探求心、好奇心がやまない本人は今日もトライアンドエラーで新たなことに挑戦しています。
井上さんの器を待っている方も次はどんな器を作られるのか楽しみに待っています。
私たちも地元の取扱店として井上さんを応援しております。

★取り扱い店舗　soup. 

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