岩手の南部鉄器「釜定(かまさだ)」の鉄瓶
~designshop(デザインショップ)より vol. 29~
「釜定」は、岩手県盛岡市で明治時代から続く、伝統工芸「南部鉄器」の老舗工房です。伝統技術を継承しながらも現代感覚を取り入れたモダンなかたちで、日本のみならず、海外にもファンが多く、世界的に知られた存在です。
鉄瓶や鍋、フライパンをはじめ、灰皿や栓抜き、オーナメントなど小物もいろいろありますが、やっぱり鉄瓶は人気があります。鉄瓶で沸かしたお湯はまろやかで美味しいだけでなく、鉄分も摂ることができると話題になったこともあり、製造が追いつかず、1年ほどお待たせすることもあるほど。
寒くなってくると「designshop」のオフィスでは、毎日「釜定」の鉄瓶でお湯を沸かしています。わりとすぐに沸騰して吹きこぼれそうになるのですが、少し蓋をずらして、差し水をしながら1日中沸かしています。長く使用しているので錆びも目立っていますが、その使い込んだ感じも良い眺めです。
オーナーの森は、朝、鉄瓶で沸かした白湯を飲むのが習慣なのですが、たまにステンレスケトルで沸かした白湯を飲むと、味が全然違うことに驚くそうです。
鉄瓶だけでも種類がとても多く、デザイナーのヨーガンレール氏が職人の手仕事にこだわってつくったブランド「ババグーリ」とコラボレーションした、珍しいものもあります。
「釜定」とは、オーナーの森が岩手出身というご縁もあり、「designshop」をオープンした頃からの長いお付き合い。過去に2度の展示会を開催するなど、「designshop」にはなくてはならない存在です。
今年の春には「釜定」の三代目、宮伸穂(みやのぶほ)氏を招いて「釜定 南部鉄器ケトルとコーヒー展」を開催しました。「鉄瓶のフォルムは、本当に今のライフスタイルに合っているのか?」という問いに始まり、完成まで8年がかり。そんな新たなチャレンジでもあった製品をお披露目する、とても貴重な機会でした。
受け継いだものを大切に生かしながら、今求められているものや使う側のことを考えて、広い視野でものづくりにチャレンジし続ける宮さん、本当にかっこいいなと思います。
鉄瓶は一つ一つ手作りで、制作工程も驚くほど多く、また職人さんが少ない現状もあって、手元に届くまでに時間はかかってしまいますが、いつかは生活に取り入れてみたいと思わせる強い魅力のあるひとしなです。
文:杉江厚子
シンプルライフ、クオリティライフにふさわしい、流行に左右されず末永く使える優れた商品を発信するショップ。「今日のひとしな」コラム執筆は、オーナーの森 博さん、店長の鹿野幸祐さん、広報の杉江厚子さんをはじめとするスタッフのみなさん。
東京都港区南麻布2-1-17 白ビル1階
03-5791-9790
営業時間:11:00~19:00
定休日:土、日、祝日
http://www.designshop-jp.com
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