手仕事のおへそ ― 佐々木智子さん vol.2
5年のブランクを経てお店を再開。
好きなことだけをやろうと決めたら
23年前にお店をオープンした頃と
同じワクワクを味わえました。
お店の片隅にもミシンを置いて手を動かす。
その間、佐々木さんは離婚、再婚、さらには出産と、プライベートも目まぐるしく変化しました。
「子どもが生まれるまでは、忙しいという自覚がまったくなかったんです。でも、子育ては想像以上に大変でした」
佐々木さんは体調を壊し、泣く泣くお店をクローズする決心をします。
「自分の限界を超えていたんでしょうね。心と体が休みたいって言っていたんだと思います。まわりからは、お店は残して自分だけ休めばいいのに、と言われたけれど、誰かに託してまで『チョロン』を続けていく意味が見いだせませんでした。だからすべてをリセットすることにしたんです」
そして紡くんが小学生になる頃、少し心に余裕が生まれ、そろそろもう一度もの作りを始めたいなと、自然に思えたのだとか。こうして、昨年お店を再開したというわけです。
「あらためて、自分の好きなことだけをやろうと思いました。私は、アジアの素材を使って、洋服や布小物、アクセサリーを作るのがやっぱり大好きなんです。そうしたら、今のお店が、二十数年前のお店と同じ空気になっていることに気づきました。原点に返ることができたんだなあって思います」
生地を広げて制作にとりかかるのは、いつもキッチンの横のテーブルです。それは、かつてベトナムで見た、あの手作りと生活が隣り合う暮らしと同じ。人生を長いスパンで眺めたら、ずっと大切なものをもち続けなくてもいいのかもしれません。時には手放してひと休みして。そんなロングスパンのおへそづくりの心地よさを、佐々木さんの穏やかな笑顔が語っているようでした。
インドのブロックプリントは、手彫りの板木を生地に押して模様をつくったもの。ギャザーブラウスは、「チョロン」の定番の形。
旅を暮らしに取り入れる
アジアの街角で食べたおいしさや旅先で見た色や柄を自分の暮らしのなかで再現するのが楽しい。
アジアのおやつを作る
ベトナムのローカルスイーツ「チェー」は、甘く煮た小豆や皮むき緑豆にココナッツミルクをかけて。
マンゴープリンは、ミキサーにかけた冷凍マンゴーと牛乳を熱し、砂糖、レモン汁を加えてゼラチンで固め、フレッシュのマンゴーをのせる。
アジアの布や小物でおしゃれを楽しむ
タイのモン族や、ミャンマーのカチン族のキッチュな色や柄の布を組み合わせて作ったポーチ。
タイやカンボジアのかごを愛用。
ミャンマーの民族衣装ロンジー用の生地で作ったブラウス。
『暮らしのおへそ Vol.30』より
photo:佐々木智子 text:一田憲子
Profile
佐々木智子
1997年、北海道札幌で、オリジナルの洋服や雑貨、アジア各国で買いつけた雑貨やアクセサリーなどを扱う店「チョロン」をオープン。東京にも店舗を作ったが、出産を経て2014年に全店閉店。昨年札幌で評判の「庭ビル」内に新たな店を再開した。夫と小学3年生の息子との3人暮らし。
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