ライターまさこの「~福岡・糸島~日常三十景」日替わりエッセイまとめました【前編】

~福岡・糸島~ 日常三十景
2022.12.20

「暮らしとおしゃれの編集室」のトップページで1か月間お届けした、ライター・わたなべまさこさんのデイリーエッセイ「ライターまさこの ~福岡・糸島~ 日常三十景」、ご覧いただけましたでしょうか? わたなべさんが福岡・糸島に暮らす中で初めて知ったことや面白いと思ったことが、毎日小気味よい文章で綴られ、編集部・Kも毎朝の楽しみになっておりました。


この連載は1か月間限定公開だったのですが、皆さまにこれからも長~く楽しんでいただけるよう、連載内容を前編・後編にまとめて再掲載することにいたしました。まだご覧いただけていない方も、もう一度読みたかったという方も、ぜひチェックしてみてくださいね。

 


 

#01 極早生みかん


関東から九州に越して衝撃を受けたことのひとつが、柑橘の豊富さでした。種類の多さはもちろんながら、そもそもの母数というか、流通量が明らかに多いなと感じます。9月も半ばになると、地元産の極早生みかんがずららっ! と産直コーナーに立ち並び。極早生みかんを食べ慣れていなかった過去の自分の名残で「緑だよ?」と思いつつ、でも食べるとちゃんと甘いこと、今では知っています。暑さの残る季節に頬張るフレッシュなみかん、という喜び。

 

#02 海辺の通い道


市の中心部からこのまちへ越してきて、まず変わったと思ったのが娘の登園ルートの風景でした。自転車で川を越え、神社のある山の前を通り過ぎ、四季折々の野菜が実る小さな畑を横目に数分走ると、海。最後は海辺を一直線。たとえ娘と小競り合いをして家を出ても、目の前にぱぁっ、と海が広がった瞬間、どうでもよくなっていって。広大な水面を前にすると、悩みやイライラもちっぽけに感じてくる。人って不思議なものです。

 

#03 生の茎わかめ


糸島界隈で暮らすようになってから調理するようになった食材のひとつ、生の茎わかめ。春先になると、スーパーの鮮魚コーナーでも、パックに無造作に詰め込まれてラップされた生わかめ(山盛り)や生の茎わかめ(切られてない、棒状のもの)が並びます。刻んで沸騰したお湯に放つと、くすんだ苔色から、春の原っぱみたいな黄緑色へパッ! と変わる。あの瞬間がたまらなく好きで、食感も好きで、家族も大好きで。ついつい買っちゃう食材です。

 

#04 魚の種類が豊富


産直に行けば珍しい魚を丸のまま見かけるのはもちろん、普通のスーパーの品揃えも違います。写真は、福岡に住んでからスーパーでよく見かけるようになった太刀魚。味わいは、上品ななかになんともいえない旨味があって、こちらに住んで初めて知った美味しさのひとつです。生のときも光輝いているけれど、コンロで少し焼いたときに現れる独特の光沢も美しくて、台所で一人うっとり(笑)。太刀魚とは、よく名付けたものだなあと思います。

 

#05 本屋さんでお店番


糸島の顔がみえる本屋さん」は棚貸し型の本屋さん。店番も棚オーナーが交代で担当します。私もひと棚借りていて、古本や新本、自作のエッセイ本などを並べているのですが、月に一度のお店番もひそかな楽しみ。この日は赤ちゃん連れのお母さんがいらして、お母さんが本を見ているときに絵本の読み聞かせをさせてもらいました。日ごろパソコンに向き合ってばかりでガチガチに凝り固まっている脳みそをほぐす、大事な一日です。

 

#06 コココーヒーさんとおしゃべり


昨日のコラムで、本屋の話を書きました。その軒先でときどき出店しているのが「コココーヒー」さん。店番の合間におしゃべりしていたら店主さん、ここでコーヒーを売る以外にも2つほど、他の仕事をしているそう。注文した菊芋茶をすすりつつ、そんな生き方の話を興味深く聞くひとときでした。いろんな仕事を自ら生み出し、自由に生きる人が糸島にはなぜか多くて。自分も何かいろいろやりたい、きっとできそう、と思えてくるのが不思議です。

 

#07 豚かつには ごますりセット


たぶん福岡に住んでいる人にとっては当たり前なのですが、豚かつ屋さんに行くとどこのお店でもたいてい「ごま+ミニすり鉢+ミニすりこぎ」がついてくることも、福岡に来た当初は驚きでした。すったごまはタレと合わせて、豚かつにつけていただきます。スーツのおじさんも作業着のおじさんも黙々とミニすりこぎでごまをする姿、なんだか和んじゃいますよね。すりたての風味も、食べる前のひと手間も、いいなこれ、と思う文化です。

 

#08 ナスが大きい


関東へ帰ると、ナスがかわいいんです。あまりに標準サイズが違うので、レシピ本の材料欄にナス2本、とあったら九州のナス1本分か、と換算するようになりました。ちなみに「ナスが大きくてさぁ」と伝えた関東の友人に後日、わかりやすいかなと思い普通のワインボトルと、地元産のナス(ほぼ同じ高さ)を並べた写真を送ったら、「えええええ! 想像の2倍! ボトルが小さいんじゃなくて?!」と混乱まじりの返信が来たことを添えておきます。

 

#09 海へお散歩、な休日


まだ暖かい初秋の休日は、徒歩圏の浜辺にお散歩へ。ふらっと歩ける距離感に砂浜があること、コロナ禍の外出自粛期間にどれほど助けられたでしょう。子はだいぶ大きくなったけれど、まだまだ泥団子づくりや水遊びは楽しいお年ごろ。私も裸足で波打ち際を歩きつつ、一緒に泥団子をつくり、五感をひらいて楽しみました。その後、ベーカリーでパンを買う気満々でレジに並び、財布忘れに気づいてトホホと家に帰ったのはここだけの話です(笑)。

 

#10 糸島揚げ


糸島界隈に来てから普通のスーパーでも頻繁に見かけるようになった「元祖 糸島揚げ」。最初は好奇心から買ってみたのですが、普通の厚揚げとはひと味違うぷるんとした食感に、気づけば食卓のレギュラーになっていた一品です。カリッと焼いてポン酢は間違いなくおいしいし、小松菜やえのきとあわせてつくる煮浸しは娘の大好物(好みが渋い……)。各地にもいろんなご当地食材があるのだろうなあ。全国のご家庭を食べ歩いてみたいものです。

 

#11 日の出と日の入り


今でこそ慣れましたが、福岡に越してきてしばらくは、日本国内で日の出と日の入がこんなに違うのか〜、と何度もしみじみしていました。関東だと洗濯物は15時くらいにはとりこまなきゃな、と思うんですが、福岡だと16時でも17時でもまあいいや、という感覚になってくる。夏は19時ごろまで明るいので、夕方取り込みでも余裕です。逆に冬の朝は暗くって、日差しで起きるタイプの自分はなかなか起きられない……という一面も(笑)。

 

#12 晩白柚(ばんぺいゆ)の衝撃


九州の豊富な柑橘類の中でも私にとって一番の衝撃だったのが、最大級の柑橘、晩白柚(ばんぺいゆ)。実は福岡に来るまで、食べたことがありませんでした。このまちでは贈答用とは別に、産直で数百円のおいしい晩白柚が並びます。味わいは上品ですが、ひと切れでもかなりの食べ応え。晩白柚を食べると毎回「小人になった気分になる……」と言い、夫にあきれられます。でもなるんですよ、ほら、こうやって手のひらに果実を載せると特に。

 

#13 回転寿司に醤油が2種類


関東から九州へ移住したというとよく「醤油の味が違うっていうけど大丈夫?」と聞かれます。そんなふうに醤油の味が違うのは有名だと思うのですが、大手チェーンの回転寿司屋で写真のごとく2種類の醤油が置かれていて、親切だなと感心してしまいました。九州育ちの夫は、九州醤油一択。私は、こっくりした甘味がある九州醤油は赤貝など淡白なものに、すきっとした醤油はエンガワなど甘味のあるものに、と使い分けて楽しんでいたりします。

 

#14 絵本部のこと


月に一度、「糸島の顔がみえる本屋さん」の棚オーナー仲間が立ち上げた「絵本部」に参加しています。小一時間ほど、持ち寄った絵本を読み合ったり、感想をシェアしたり。私にとってはこの場が、日々の仕事でつい埋もれがちな感性を思い出させてくれる、とっても大切な場になっています。この場を通して初めて絵本に興味を持った! という紳士もいて、嬉しいかぎり。絵本を軸に老若男女関係なくゆるっと交わり癒やされる、この空気感が好きです。

 

#15 糸島産ドライフルーツでトッピング


千葉の母とビデオ電話をしたら、「キャロットケーキを焼いた」と言うんです。それを聞いた孫(私の娘)は、「キャロットケーキつくって!」と。どたばたとレシピを調べてクリームチーズを買いに行き、家にあったレーズンやナッツもどっさり入れて、なんだか食べごたえあるケーキができました。トッピングは先日たまたま買っていた、糸島産のドライフルーツ。その美しい色合いのおかげで、母から「負けた……!」のメッセージが届きました(笑)。

 


 

【~福岡・糸島~ 日常三十景】
福岡の街と糸島のあいだあたりに越してきて、数年が経ちます。この連載では、関東出身の筆者が移住して初めて知ったこと、日々の暮らしの中でおもしろいと思うことなど、観光とはちょっと違う“ふだん着の福岡・糸島暮らし”の一部を、日常三十景としてお届けします。

Profile

わたなべ まさこ

千葉、東京、フィジー、オーストラリア、湘南暮らしなどを経て2016年より福岡へ。現在は福岡・糸島界隈を拠点にフリーライターとして活動。企業案件からエッセイ・短歌・絵本まで。「糸島の顔がみえる本屋さん」棚オーナー。海辺と本とおいしい野菜が好き。

 

Instagram:もぐもぐエッセイ(@mogu2bun)はじめました
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