更年期を「機嫌よ~く」過ごすためには? vol.1
ライター田中のり子が、自分の身体と心を見つめ直すため、様々な専門家に突撃取材している連載「からだ修行」。今回も、とってもためになるお話が聞けましたよ!
今月の先生:高尾美穂さん(産婦人科医・イーク表参道副院長)
自分自身も体調の変化を自覚し、最近何かと気になる「更年期」というワード。体調面だけでなく、気持ちの面でもゆらぎがあるようで……。閉経前後の約10年間、気持ちを穏やかに過ごす方法を、人気産婦人科医の高尾美穂先生に伺いました!
photo:砂原 文 text:田中のり子
ここ最近同世代の友人とおしゃべりしていると、体調の変化の話題になることが多くなりました。かくいう私も昨年はホットフラッシュの症状がひどく、長年冷え性の人間として生きてきたので、夜中に突如起きるほてり症状に「これが更年期障害というものか!」と驚いたものでした。
のぼせるだけでなく逆に体の冷え、息切れ、皮膚や粘膜の乾燥、食欲不振、腰痛や肩こりなど、ひと言に「更年期症状」と言っても、症状は実にさまざま。
それだけでなく「夜中に何度も目が覚めちゃうのよね」「自分や子どもの将来を考えると、落ち込んでしまって」「あんなに頑張っていた仕事に、まったくやる気が出ない」といった精神面での不調をよく耳にするのです。若い頃の悩み相談とは、ちょっと別次元のような感じがします。
体の衰えはともかくとして精神面だけでも、もう少し元気に出来ないものかな? もう少し心穏やかに過ごす秘訣はないだろうか……と、テレビや書籍、音声メディアやSNSで女性の健康について発信し続けている高尾先生に、疑問をぶつけてみました。どんな心構えで、この時期を過ごせばいいのでしょう?
「うーん、そうですねえ。心構えとしては、あまり『更年期、更年期』と心配しすぎないことかな。だって田中さんのまわりの同世代でも、相変わらずバリバリと元気な人もいらっしゃいませんか?」
「は……!確かに、相変わらず元気な人も結構いますね……」
「メディアでさかんに更年期という言葉を取り上げられるようになって、それが原因で不安になり始めてしまった方も実は少なくはないんです。誰にでもそういうことが起きるから、知識として理解するのは大切。私がよく更年期について言及するのも、心配を増やすための発信ではなく、『自分でできることってあるよね』と思ってもらうための発信なんです」
確かに今までだってあったちょっとした不調も「これが更年期障害!」「やっぱり更年期だからだ!」とひも付け、思い込みでかえって不調を増幅させてしまうこともありそうです。というか私って結構、そうなりがちなタイプかも(笑)。そして高尾先生は、こんな風に続けました。
「でも更年期を言い訳にすることは、悪いことではないと私は思うんです。家族に『更年期で調子が悪いから、家事を手伝ってね』とか、仕事でも『今日は体調が悪いので、明日でもいいですか?』とか、それでまわりが理解してくれるなら、全然アリなんじゃないかな~と。そうすれば周りの体調が悪い人だって、気兼ねなく休みやすくなるでしょう? でもだからと言って『自分は更年期だからダメなんだ』という考えは持つ必要はないと思いますよ」
教科書には「真面目な人ほど、更年期症状が重くなる」という記載もあるほど。仕事での責任感が強かったり、いい妻やいい母親でいようと思ったりすると、諸症状がよりしんどく感じる傾向が。やる気を出そう、出そうと思っても、なかなかその気にならないときは……。
「やる気を出さないとできないようなことは、極力やらない。それでいいんじゃないかな。だって好きなことであれば、人は止めてもやるでしょう? 『仕事をきちんとしなきゃ』『家事も真面目にやらなきゃ』というのは、実はその人自身のこだわりだったりして、もし継続できるならすればいいし、そうでないなら一回手放す。調子が悪い、余裕がないと感じているのであれば、実害が少ない部分から手放していけばいいんじゃないですかね」
確かに「こうでなきゃ」「こうしなきゃ」という思い込みは、自身の呪縛だったりすることも多いのです。周囲は意外と「そんなに頑張りすぎなくても……」と、思っている場合も多い。それが人生の張りになる時期はいいですが、もし生きづらく感じているのであれば、更年期はそういう思い込みを手放す「人生の棚卸し期」と考え、身軽にしていくための移行期と考えればいいと高尾先生はおっしゃってくれました。
Profile
高尾美穂
医学博士・産婦人科専門医。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。イーク表参道副院長。ヨガ指導者。婦人科の診察を通じて女性の健康をサポートし、女性のライフステージ、ライフスタイルにあった治療法を提案。またYouTubeやstand.fmなどSNSでの発信にも力を入れ、女性の心身の悩みや人生相談まで、多様な悩みに回答。著書に『人生たいていのことはどうにかなる あなたをご機嫌にする78の言葉』(扶桑社)、『娘と話す、からだ・こころ・性のこと』(朝日新聞出版社)など多数。https://www.nanpushokudo.com/
田中のり子
衣食住、暮らしまわりをテーマに、雑誌のライターや書籍の編集を行う。著書に『暮らしが変わる仕事』(誠文堂新光社)、『こころとからだを整える』(エクスナレッジ)。編集を行った本に瀬戸佳子さん著『お手軽気血ごはん』(文化出版局)、ワタナベマキさん著『鉄分ごはん』(家の光協会)など多数。「よもやま」の名義でフラワーエッセンスのプラクティショナーとしても活動(インスタグラム@yomoyamanoriko)。
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