更年期を「機嫌よ~く」過ごすためには? vol.2

からだ修行
2023.10.17

今月の先生:高尾美穂さん(産婦人科医・イーク表参道副院長)

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さてそんな気持ちの持ちようと同時に、更年期の体にどんなことが起こっているのかを理解することも重要です。ものすごく大雑把にまとめると、更年期とは女性ホルモン・エストロゲンがある時期から、ない状態に慣れていくための10年間と言えます。

このエストロゲン、月1の生理を起こす以外にも、女性が「産み、育てる」ために実に多くの役割をはたしています。コラーゲンの産生を促すので肌や髪がふっくらツヤツヤになり、コレステロール値を抑制する働きもあるので、肥満を防止しつつ骨を強くする役割も

またエストロゲンが充分に分泌されていると自律神経が安定し、副交感神経も優位になるのでリラックスしやすい。「幸せホルモン」のひとつとして有名な「セロトニン」(気持ちを落ち着かせ、ポジティブな気分を感じやすくさせる役割がある)とエストロゲンは連動して分泌されるとも考えられています。

そしてエストロゲンは記憶力を始めとする脳機能の維持にも関係します。認知機能に関係する「アセチルコリン」、意欲に関わる「ドーパミン」、やる気を促す「ノルアドレナリン」なども、エストロゲンが多い時期に分泌が高まると言われています。


ここらへんは、高尾先生の著書『更年期の教科書』(世界文化社)や『大丈夫だよ 女性ホルモンと人生のお話』(講談社)にも実に詳しく解説されているので、気になる方はぜひご一読をおすすめします!

肌や髪がパサパサしてきた、太った体重が落ちにくくなった……といった身体面の変化だけでなく、気持ちの面での「気持ちが落ち込む」「やる気が出ない」「もの忘れが多くなった」という実感も、決して気のせいではないのですね……。ああ……そんな素敵なホルモンが、体からなくなっていくなんて。考えるだけで、何だかさみしい気持ちになっちゃいそうです。


「いやあでも田中さん、『なくなる』とか言われたから急に、さみしいと思っていませんか? 生理があった40年間、一度でもその恩恵を『ありがたい』なんて思ったりしてましたか?」

ドキッ。先生にそう言われちゃうと「いや正直、そんなこと実は、1ミリも思っておりませんでした……(ゴニョゴニョ)」と自白です。どちらかというと、毎月の生理がうとましいばかりで、特に40代に入ってからは、「あ~あ、早く生理が終わらないかなあ~~」と思い続けておりました。

「男性の場合、エストロゲンの分泌量はごくごくわずかで、ほぼ一定量のまま一生を終えるわけです。女性は10歳から50歳くらいまでエストロゲンの恩恵を受けますが、それって『子どもを産むかもしれない女性のための、ボーナストラックみたいなもの』と考えることもできるわけです。つまり持っていたものを失うのではなく、もとの状態に戻るだけ。逆に考えると更年期を過ぎれば、女性ホルモンのアップダウンにゆさぶられない、ご褒美のような穏やかな時間がやって来るとも考えられるわけです」


なるほど~! 確かに更年期を抜けた初老の女性たち、何だか生き生きと楽しそうな人も多い。今までホルモンの恩恵を受けると同時に、振り回される側面も大いにありました。それがなくなると考えれば、更年期の先をポジティブにイメージできそうです。

「ただし、今までエストロゲンに守ってもらっていたんだよ、それができなくなるんだよという事実を知っておくことはすごく大事。血管の弾力が失われて、血圧が高くなり、心筋梗塞など血管疾患になりやすくなる。骨がもろくなって、骨折や骨粗しょう症の危険性が増す。つまり生活習慣病になりやすくなるんです。そういった危険性をしっかり頭に入れておいて、健康診断を定期的に受けて、更年期の始まりの頃から少しずつ対処していくことが大切なんですね」

photo:砂原文 text:田中のり子

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Profile

高尾美穂

Miho Takao

医学博士・産婦人科専門医。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。イーク表参道副院長。ヨガ指導者。婦人科の診察を通じて女性の健康をサポートし、女性のライフステージ、ライフスタイルにあった治療法を提案。またYouTubeやstand.fmなどSNSでの発信にも力を入れ、女性の心身の悩みや人生相談まで、多様な悩みに回答。著書に『人生たいていのことはどうにかなる あなたをご機嫌にする78の言葉』(扶桑社)、『娘と話す、からだ・こころ・性のこと』(朝日新聞出版社)など多数。https://www.nanpushokudo.com/

 

田中のり子

Noriko Tanaka

衣食住、暮らしまわりをテーマに、雑誌のライターや書籍の編集を行う。著書に『暮らしが変わる仕事』(誠文堂新光社)、『こころとからだを整える』(エクスナレッジ)。編集を行った本に瀬戸佳子さん著『お手軽気血ごはん』(文化出版局)、ワタナベマキさん著『鉄分ごはん』(家の光協会)など多数。「よもやま」の名義でフラワーエッセンスのプラクティショナーとしても活動(インスタグラム@yomoyamanoriko)。

肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。

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