【内田彩仍さんvol.1】五十代を振り返りつつこれからを楽しむために決めたこと

「変えること、変わらないこと」特集
2023.11.27

六十代まで、あと一年ほどとなった内田彩仍さん。五十代の今を楽しく過ごしつつ、六十代を見据えて人生後半を機嫌良く過ごせるよう、暮らしを整えている最中です。日々の心構え、お金のこと、おしゃれのことなどをひとつひとつ見直しながら、これは変えようと思うことは、ためらわずに変更。もちろん、これからもずっと変わらないこともたくさんあります。


そんな、これからの日々を幸せに過ごすために、様々なことを仕切り直しつつある内田さんの新しい暮らし方をまとめた本が、こちらの『変えること変わらないこと」。発売早々に重版も決定して絶好調です! そこで今週は、月曜から金曜まで5日間をかけて、本の中身を少しずつご紹介したいと思います。初回の今日のテーマは「五十代を振り返りつつこれからを楽しむために決めたこと」です。

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五十代も、残りあと一年ほどとなりました。五十代になった頃を振り返ってみると、それまでとは人生のステージが変わった気がして、成熟した人にならなくてはと、少し焦る気持ちがあったように思います。四十代を終える頃から、気力や体力の衰えを感じたり、夫と私、双方の親が患ったり、義父が亡くなったり。また、自分でも「老けたな」と感じるようになり、好きだったおしゃれをするのも楽しめず、ちょっと寂しい気持ちに。そんなふうに、自分を取り巻く環境が変わり、初めて経験する不安ごとが一気にのしかかってきて、「わあ、大変だあ」という気持ちから、身構えていたのかもしれません。

今思い返すと、そんなに心配せず、もっと肩の力を抜いて五十代を迎えられたらよかったなと思います。これまでの道のりには、確かに大変なことや、心が塞ぐようなことは様々あったけれど、今となっては、あっという間の出来事で、もうすっかり忘れてしまっていることがほとんど。知らず知らず時間が解決してくれたり、まわりの方の協力を得てどうにか乗り越えられたり。いつの間にか、日々の暮らしの中で昇華され、淡々と月日は流れていくのだと、今なら笑って振り返ることができます。

小心者で、石橋を叩いて渡る性格の私は、心配ごとを前倒しで考えているようなところもあって(笑)。でもその分、いい意味で考えぐせがついていて、くよくよする前に「とりあえず考えてみよう」と思うから、何か困りごとが起こっても立ち止まることなく、前に歩き出しやすいのです。

例えば初めて親が入院すると聞いた時は、どうしようとあたふたしていたけれど、何度か経験を重ねるうちに、落ち着いて対処できるように。最初は何が何だかわからずに進めていた家に関する様々な手続きも、今ではさっとこなせるようになりました。そういった人生初の出来事も、ひとつひとつきちんと考えて答えを出しながらこなしてきたことは、その後の悩みを解決するのにも応用でき、心配ごとを減らす効果もありました。また、考えても答えが出ない時は、無理矢理答えを出しても仕方がないから、頭の片隅に置いておき時間の流れに任せよう、そう思える寛容さも身についたように思います。

四十代までは、考え過ぎてしまう自分の性格を損だなあと思い続けてきたけれど、五十代になって、実は得しているかもと感じることが増えてきました。これまでは気力と体力で「なんとかなる」と乗り越えてきたものも、今は「なんとかならない」のが日常茶飯事。でもそういったことも、考え抜いて解決策を見つければ「なんとかなる」ことがわかってきたのです。私の考え過ぎる性格が、これから歳を重ねるうえで結構役立つことを知り、自分自身をうんと肯定できるように。きっと六十代は、まわりで起こるあれこれを、前向きに捉えるか不安に感じるかで人生が変わると思うから、これからも、こつこつ考え続けながら前を向いて進んでいれば、世の中をうまく渡っていけそうな気がします(笑)。


五十代になった頃と、六十代を迎えようとする今とでは、暮らし方はそんなに変わっていません。四年ほど前にマンションから一軒家へと住まい替えはしたけれど、相変わらずキッチン脇には見慣れたエプロンがすぐに使えるよう吊り下げてあり、毎日家事をこなしつつ仕事をしています。気晴らしに草花の手入れをしたり、愛猫そらと遊んだり。何年も前に、平日の食事の支度が楽になるようにと始めた日曜日の作り置きも、今や習慣に。時には、疲れたとか、やりたくないとか、あーだこーだと愚痴を言ったり、「今日はどうしてもダメだあ」と全てを投げ出したくなったりする日もあります。以前はそれでもなんとか頑張ろうとしていましたが、今は「まあそんな日もあるよね」と、リビングのラグの上で思いっ切り大の字になって寝転んで、「しなければ」を手放せるようにもなりました。

そんな毎日を過ごしているこの部屋で、この原稿を書きつつまわりを見渡してみると、当たり前のように普段通りの暮らしがあって、私も家族も今日も元気。これだけで十分だと思うのです。

いろいろあった五十代。心配性なのは変わりませんが、振り返ると幸せに過ごせていたなあと思います。毎日を楽しく生きられるよう、日々工夫しながら変えることも、変わらないことも様々だけれど、今を幸せに過ごせていることに感謝して、この十年を迷いながらも前向きに駆け抜けてきた自分を褒めようと思います。

 


ダイニングテーブルで仕事をしている途中、ふとリビングに視線を移すと、いつも通りの風景があって、心が安らぎます。壁に目を向ければ、家事の時につけるエプロンが。歳を重ねても、日々の暮らしや心地よいと感じる空間は変わらない。それがとてもうれしく、今のままでいいのだなと思えるひと時です。


photo:大森今日子

 


 

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Profile

内田彩仍

Ayano Uchida

福岡県に夫と愛猫と暮らす。丁寧な暮らしぶり、センスある着こなしが雑誌などで人気を集める。主な著書に『いとおしむ暮らし』『家時間』『幸せな心持ち』『変えること変わらないこと』(主婦と生活社)などがある。

肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。

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