【70代先輩の“気づきの種”】モデル事務所社長・村上夢有子さん【後編】

特別連載
2024.01.26

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素敵な先輩にインタビューさせていただく企画「70代先輩の“気づきの種”」。今回は、香菜子さんの担当マネージャーでもある、モデル事務所「フライデイ」社長の村上夢有子さんにご登場いただいています。【前編】では村上さんの近況をお聞きしましたが、【後編】ではこれまでの歩みをお伺いしていきたいと思います。まず、村上さんがモデル事務所を始めるきっかけは何だったのでしょうか?

 



約50年前に27歳で
モデル事務所を設立

「英語を使いたいという気持ちがスタートだったかもしれません。高校生のとき英語を話せるようになりたくて、米軍基地で働いているベビーシッターさんにアルバイトがないか聞いてもらったんです。それで横田基地で暮らす子供たちの遊び相手をするようになり、アメリカ人の知り合いが増えたこともあって、27歳のときに外国人専門のモデル事務所を始めました」

そんなすごい経験をサラリとおっしゃる村上さんですが、そのパワフルな行動力と先見性には驚くばかり。


「ほぼ前例のない職業だったので、切り込み隊長としてブルドーザーみたいにどんどん仕事を開拓していく感じでしたね。LAやNY、パリ、ミラノまでモデルをスカウトに行きましたし、事務所で面接したモデルは数百人。広告代理店やファッション誌を多く抱える出版社には毎日のように通っていましたね。大変なほど、闘志がわくタイプでした(笑)」



若いときの経験のおかげで
70代の今が楽しい


村上さんは、当時を振り返るたびに思い出すことがあると言います。それは、アメリカでの仕事相手に言われた「あなたはいつもTough Decision(タフ ディシジョン)をしているね」という言葉。

「直訳すると『厳しく困難だけれど、必要な決断』というような意味なのですが、当時は無我夢中だったのもあって、『大変だねえ』と言われたくらいにしか捉えていませんでした。でも今よくよく考えると、きっとその人は、『今はキツいかもしれないけれど、きっとこれからの人生に繋がるはずだからこの仕事を頑張って!』という応援の気持ちを込めてくれていたんじゃないかなと思うんです。私にとっては、勲章のような言葉ですね」


若いうちから「タフ ディシジョン」を重ねることで、仕事は年々面白くなってくる。人生後半の楽しさは、人生前半の経験の蓄積が作ってくれる……。「だからこそ、70代の今も、引退せずに楽しく働いているのだと思います」。

過去には見逃していたけれど、今だからこそ拾い上げることのできる“気づきの種”は、意外と多いのかもしれません。

 


様々なジャンルの本にゆっくり向き合う時間がとれるようになったのも、入院してよかったことのひとつ。読んでみたい、見てみたい、体験していたいものがどんどん広がっているのだとか。

 



結婚相手を見つけるために
趣味を増やす!?


そうして脇目も振らずに一直線に突き進んでいた村上さんが、一度だけ立ち止まって考えたことがあります。それは38歳のとき。

「ふと、私、結婚しなくていいのかなと思ったんです。それで、いい人見つけようとゴルフや囲碁など趣味の範囲を広げてみたら、運よく見つかりました(笑)」

結婚相手探しの方法まで、村上さんらしさ全開! 自宅に碁盤を持っていて、よく対局していたという建築士と結婚することになったそう。


「彼の家には、必要なものだけが美しく整理整頓されて並んでいたのを覚えています。美意識が高く、本をたくさん読む賢い人でした。料理も私よりとても上手に作るんですよね。そば打ちに凝り始めたら、そばつゆまでとことん追求していたし、事務所のモデルたちも、彼の作るもつ鍋が食べたいと、よくわが家に集まっていました。私は、トマトをくりぬいてシュリンプを詰めたトマトカップが一番の好物だったなあ」

猪突猛進型の村上さんと、慎重派のご主人。正反対の性格だったにも関わらず、長年仲良く暮らしてきましたが、村上さんが64歳のときにご主人が他界。娘さんも独立したことで、また一人暮らしになりました。


「隣に家族がいないと、笑いやら怒りやらを気軽に共有できないのが寂しいですね。でも、寂しさとはとことん向き合っています。それが私の人生ですから。今はミックス犬のコスケと暮らしているので、私がしっかりしなくちゃと自然と気を張ることができています。犬は感情表現がシッポを振ることなので、それがかわいいですね」



これからも
学びを忘れない


これまで、仕事でも暮らしでもすべてにおいて“自分ファースト”だったという村上さん。家族の形が変わり、入院によって仕事のペースも変わった今、感じていることはどんなことでしょう?


「何事も本当に自由にやらせてもらってきて、気がついたら70代! 家族も仕事仲間も、こんな私に長い間よくつきあってくれたと思います(笑)。『ごめんごめん、心の中では大感謝してるから、ゆるしてね~』っていう気持ちではありますが、人はそんな簡単に変われるものではないから、これからも体力の続く限りは同じ調子でやっていくんじゃないかしらね」と軽やかに笑います。

「70代になって改めて、周りの若い人から気づかされることがたくさんあるなと感じています。自分が教えたり伝えたりしたいこともまだまだたっぷりありますが、これからは、若い方々から学ぶことも大事にしていきたいですね」


すぐそばにある“気づきの種”を見逃さないよう、これまでより少し慎重に。そして感謝の気持ちを忘れずに。とはいえ、やっぱり変わらず“自分ファースト”で。これからも村上さんは、村上さんらしい70代を歩んでいくことになりそうです。

 

Profile

村上夢有子

Junko Murakami

1948年生まれ。百貨店、商社勤務を経て、1975年に外国人専門のモデル事務所「フライデイ」を設立。1992年から日本人モデルの養成を始め、現在は40名を超えるモデルをマネージメントしている。
https://fridayfarm.net/

肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。

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