【70代先輩の“気づきの種”】モデル事務所社長・村上夢有子さん【前編】

特別連載
2024.01.25

日々の暮らしにおいても仕事においても、人生には様々な「気づきの種」が潜んでいます。若い頃の気づきをどう拾い上げて、どう生かしていくか。人生後半での気づきを、どう捉えて、どう楽しむか……。そんなお話を素敵な先輩にインタビューさせていただく企画「70代先輩の“気づきの種”」。初回にご登場いただくのは、当サイトの連載「日々にピタリなもの」でもおなじみ、香菜子さんのマネージャー、村上夢有子さんです~。



75歳にしてモデル事務所の
社長&マネージャー


今回お話をお聞きしたのは、モデル事務所「フライデイ」の村上夢有子さん。75歳の今も現役で働き、香菜子さんが子育て後にモデルに復帰した10年ほど前からずっと、担当マネージャーを続けてきたそう。

「私は一応、社長という立場なので、マネージャー業務はスタッフたちに任せていたんですが、香菜子さんと出会って『私が絶対担当したい!』って思っちゃったんですよね」

そうなのです、村上さんは総勢40名以上のモデルを抱えるモデル事務所の社長さん。50年近く、多くのモデルたちを世に送り出してきたすごい人なのです。それが、どうして香菜子さんの担当マネージャーになったのでしょう?


「だって、これまでのモデル像とぜんぜん違うんだもの! ファッションはもちろん、ライフスタイルや考え方、自分自身の見せ方……そのすべてが新鮮で面白くって。なんというか、新しい時代が来たって感じがして、それを間近で見ていたいって思ったんですよね」

そんなふうに新しいことやワクワクすることが大好きな村上さん。70代になってもなお、その好奇心と向上心は衰えず、“気づきの種”をどんどん拾い上げています。

 



いつもおしゃれでいたいと
思う理由


以前、編集部の雑誌『大人になったら、着たい服』にも登場していただいたほど、そのおしゃれっぷりも格好よく、この日は、花柄ワンピースにライトグレーのカーディガンを合わせ、オレンジの眼鏡とブレスレットをきかせた着こなしが、とってもお似合い!


「職業柄、いつもおしゃれでいないと、って思っています。今はそこまでではないですが、以前は若いモデルたちが変な格好をして事務所に来たら『そんな服の組み合わせで本当にいいと思っているの?』『センス悪いわね』なんて言って叱っていましたからね(笑)。時代が時代だったということもあったかもしれませんが、あえてキツイことを言うことで彼らが発奮してくれたらいいなと思っていたんです。事務所から出たら、誰も指摘してはくれませんから」

 



入院して
初めて気づいたこと


そんな村上さん、長年病気ひとつしてきませんでしたが、数か月前に体調を崩し、はじめて入院することになったそう。その時、お見舞いに来てくれたモデルやスタッフたちの言葉にハッとさせられたと言います。

「みんな、弱くなった私のほうがいいって言うんです(笑)。病室にいる今の私のほうが話しやすいんですって。そんなに近寄りがたい存在になっていたのかと、衝撃を受けましたね。よかれと思って周りに厳しくしてきた部分もあるけれど、それだけではダメなんだなって気づきました」



フクロウの起き上がりこぼしは、お見舞いにきたスタッフが持ってきてくれたもの。村上さんに軽やかに起き上がり、カムバックしてほしいという気持ちが込められているよう。

 


ボディメンテナンスの先生が差し入れてくれたのは、ストレッチローラーやヨガボール、握力アップのためのハンドグリップなど。さらに、入院で減少した筋肉を増やすためのトレーニング方法を描いたメモも。

 

「もしかしたら、みんなを引っ張っていかなくちゃと長年気負っていたことで、周りが見えなくなっていたのかもしれません。入院中、スタッフのひとりである娘に仕事を代わってもらったのですが、ええーって思うほど仕事ができてびっくり。私、娘の成長さえもぜんぜん見えていなかったんです(笑)」

 


そんな中、入院中の村上さんは、新しい趣味を見つけます。それはスケッチブックに色鉛筆を使って絵を描くこと。

 


スケッチブックの中を見せていただくと、色彩豊かに描かれた美しい女性たちがズラリ。頭の中に浮かんだものや、読んだ本からインスピレーションを受けたものなどを描いていると村上さんは言いますが、それらは、いつも気に掛けてきた事務所のモデルたちの姿のようにも、ずっと追い求めてきた美の理想像のようにも見えます。入院によって改めて実感した周りの方々への感謝の気持ちが、自然と表れているのかもしれません。

 


事務所のモデルさんがプレゼントしてくれた、村上さんが描いた絵を使って制作したシールやポストカード。赤い背景と組み合わさると、まるでアートのよう。

 

入院をきっかけに多くの気づきを得た村上さん。そこで、改めてこれまでの道のりの話をお聞きしてみると、それはそれはハードで波乱万丈! 【後編】では、村上さんのこれまでの人生を振り返ってみたいと思います。

 

→【後編】はこちらから

Profile

村上夢有子

Junko Murakami

1948年生まれ。百貨店、商社勤務を経て、1975年に外国人専門のモデル事務所「フライデイ」を設立。1992年から日本人モデルの養成を始め、現在は40名を超えるモデルをマネージメントしている。
https://fridayfarm.net/

肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。

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