誰もが一度は目にしたことがある家具の「オリジナル」【天童木工】座イス・座卓

令和の家具事典
2024.11.24

※Come home! webに掲載された記事を転載しています

 

#23
座イス・座卓
座イスと座卓のマスターピース
***


旅館や飲食店などでよく目にする成形合板の座イス。
様々なメーカーから同じようなデザインの座イスが販売されていますが、一枚の合板を曲げてつくられた座イスのオリジナルが、この座イスです。

 

理にかなったデザインと機能が詰まった「座イス」

デザインはシンプルですが多くの機能を有しています。
背もたれは3次元曲面でつくられているため、背中をやさしく受けとめ、クッションがなくても硬さはさほど感じません。また、もたれかかった時に感じる“しなり”も成形合板ならではのもの。ぜひご体感いただきたいポイントです。
座面に開けられた穴は、一見すると意匠的なものにも思えますが、ちゃんと意味があります。
座イスは多くの場合、畳の部屋で使用されます。穴を開けると、その上に敷いた座布団やクッションがずれにくくなります。人が座った時、座布団と畳みが直接触れることで摩擦が生じるためで、使いやすくする工夫のひとつです。また、軽くもなりますし、持ち運びやすくもなります。
「穴を開ける」それだけの加工ですが、使う人や運ぶ人、多くの人に優しいデザイン上の工夫です。


このシンプルかつ機能的な座イスをデザインしたのは、インテリアデザイナーの藤森健次氏。
大学卒業後にフィンランドへ渡り、北欧の機能的で美しい家具に大きな影響を受けるとともに、その手法を用いて日本の伝統的な住空間を再定義したデザイナーでもあります。
この座イスからもどこか北欧的な雰囲気が感じられます。
そのせいもあるのでしょうか、最近ではミニマルな暮らしを求める方を中心に、ソファや椅子の代わりとしてこの座イスが選ばれるケースもあるようです。

60年も前に誕生した座イスは、1984年にアメリカのフィラデルフィア美術館にコレクションされ、日本の文化に基づいた機能美を後世へと伝えています。


技術者の工夫が生んだ「座卓」

そしてこの座イスの相棒とも言えるのが、こちらもよく目にしているであろう座卓です。
この座卓は、プライチェアをデザインした乾三郎によりデザインされました。
バタフライスツールを完成に導いた技術者でもあり、成形合板を熟知していた乾だからこそデザインできた座卓かもしれません。

曲げた脚を四隅に取り付けただけの座卓に見えますが、ここにはこだわりが凝縮されています。
一般的な座卓は脚が垂直に伸びているのに対し、この座卓は「バチ脚」と呼ばれる特殊な形状をしています。内側に曲がるカーブに対して側面を垂直にすると、自然と下方で広がる「バチ脚」形状になります。和を強調するために考えられたものですが、側面を垂直にしたことで座卓を立てて置けるようになり、使い勝手が良いと旅館などでは重宝されたそうです。

もうひとつ、この座卓ならではの特徴があります。それは接着剤に昔ながらの膠(にかわ)を使用していることです。天板と脚の接合部は凹凸のないシームレスな仕上がりになっています。これには微妙な位置調整が必要で、すぐに固まってしまう接着剤では難しい作業です。その点、膠は徐々に固まっていくため調整時間が確保でき、隙間やズレのない接合が可能となります。膠の特性と昔ながらの接着技術をよく表した製品と言えるでしょう。

シンプルで飽きのこないデザインと使い勝手の良さから、旅館だけにとどまらず一般の家庭にも普及した座イスと座卓。当たり前のように使われてきたものですが、それぞれにひと工夫もふた工夫も凝らされています。身近にある優れたデザインにもう一度目を向けてみるのも良いのではないでしょうか。


1970年のカタログより

座イス:S-5046
https://shop.tendo-mokko.co.jp/shopdetail/000000000240/
材料:ケヤキ(ナチュラル/KB色)、メープル(ナチュラル)、スギ(ナチュラル)
サイズ:W330 D490 H400 SH8 (mm)

座卓:S-0228 S-0228KY-NT/KB、S-0228MP-NT、F-0228SG-NT
https://shop.tendo-mokko.co.jp/shopdetail/000000000010/
材料:ケヤキ(ナチュラル/KB色)、メープル(ナチュラル)、スギ(ナチュラル)
サイズ:W1210 D755 H335 (mm)

座卓:S-0263KY-NT/KB、S-0263MP-NT、F-0263SG-NT
https://shop.tendo-mokko.co.jp/shopdetail/000000000018/
材料:ケヤキ(ナチュラル/KB色)、メープル(ナチュラル)、スギ(ナチュラル)
サイズ:W755 D755 H335 (mm)

座卓:S-0373KY-NT/KB、S-0373MP-NT
https://shop.tendo-mokko.co.jp/shopdetail/000000000026/
材料:ケヤキ(ナチュラル/KB色)、メープル(ナチュラル)
サイズ:W1500 D755 H335 (mm)

■藤森健次
1919年 東京都に生まれる。
1941年 早稲田大学経済学部卒業。その後、ヘルシンキ美術大学に留学し、プロダクトデザイン科にて学ぶ。卒業後、藤森健次設計事務所を設立。
1963年 盛岡グランドホテルのインテリア設計を手掛け、同年に座イス(S-5046)を発表。この座イスは、フィラデルフィア美術館のパーマネントコレクションに選定されている。

■天童木工/乾 三郎
1911年 現在の台湾・新竹市に生まれる。
1936年 当時仙台市にあった国立機関・商工省工芸指導所に入所。
剣持勇氏の元で家具の試作を行う傍ら、成形合板の基礎研究を行う。
1958年 天童木工入社。その後「座卓」「プライチェア」を発表。
1973年「国井喜太郎産業工芸賞」を受賞。

 

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天童木工

1940年に山形県天童市で創業。無垢材よりも強く、軽く自由な形に成形できる「成形合板」を日本でいち早く実用化し、デザイナーや建築家といったクリエイター達との協同によって多くの名作と呼ばれるロングセラー家具を生み出してきました。その実績は一般家庭から、企業の上級エリア、中央官庁まで多岐にわたります。熟練の職人技と豊かなデザインは確かな品質と快適な暮らしをお届けいたします。

 

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