ワタナベマキさん 近頃始めた10のこと【後編】
05
茶道の楽しさと奥深さに
目覚めました
40歳を過ぎた頃から、“道”への興味がふつふつと。型に沿って無の心で体を動かすことで、感じたり、得られたりするものがあると実感しているというワタナベさん。近頃、茶道を始めました。
「実は30代の初めの頃にも通っていたのですが、育児にも仕事にも忙しい時期で、つい足が遠のいてしまって。あの頃は、“何ごとも型通りに”ということに窮屈さも感じていたような。茶道に向き合うには、まだ早かったのかもしれませんね。いまは基本を丁寧に学びながら、茶道を“楽しむ”ことができている気がします」
入門のときにそろえたお稽古セット。「大人になってからの習い事ってワクワクします」
お稽古の後は、家でおさらいを。お茶のセットはシェーカーボックスにまとめて。お気に入りの茶碗は、屋久島にひとり旅をしたときに購入したもの。
四季を大切にする茶道は、料理とは切っても切り離せない存在。「もてなす」という点でも、料理と通じるところがとても多いのだとか。
「所作の勉強にもなるんです。茶道は自分側からの視点だけでなく、相手からきれいに見えることが大切とされています。撮影やイベントで料理をするとき、相手からどう見えるかをより意識するようになりました。手さばきや、器を見せるときの角度など、得ることが本当に多いです」
忙しくても、どうにかやりくりして、月に1度はお稽古を。そして、茶道といえば着物。
「これもまた、甘い気持ちで手を出したら大変そうなので、母の着物を譲り受けるところから始めてみようかな、と思っています」
家でも和菓子をいただくときなどに、気軽に抹茶を点てている。
06
近頃の定番服は
トレーナー!
もちろん、好きな服を自由に着ることが基本だけれど、年相応のファッションを知っていくことも大切。きっと、“好きだけど似合わなくなる“アイテムも今後は出てくるだろうと、ちょっぴり覚悟しています。そこで、今のうちに楽しみたいと思っているのがトレーナー。
「60代になったら、ひょっとしたら似合わなくなっている可能性もあるな、と思って(笑)」
近頃のお気に入り。ロゴもの、刺繍やアップリケにヨワイ!
以前は、トレーナーはあくまでカジュアルに着ていたワタナベさん。近頃は、きれいめテイストのボトムや靴を合わせるのが定番になりました。
「全部カジュアルにすると、果てしなくラフに、部屋着みたいになっちゃうんですよ。だから、ボトムはテロンとした大人っぽい質感のものを選んだり、靴はカチッとローファーを合わせたり。こんなふうにバランスをとれば、50代でもトレーナー、まだまだいけるかも? と思っています」
知人のスタイリストさんのブランド「RUNAWAYS」のトレーナー。ハングル文字+アルファベットの「안녕하세YO!(アニョハセヨ!)」がかわいい。
07
食に対する欲は
まだまだ衰えていません
ファッションに関しては、年代的にいろいろ思うところありますが、食に関してはまだまだ衰え知らず!
「さすがに高校生の頃よりは食べる量は減ったけれど、同年代の友人が『カルビはキツイ!』なんて言い出すなか、カルビもステーキも揚げものも、未だおいしくいただいています。仕事柄、食べることに関しては欲を保っていたいですね」
「牛かたまり肉を、りんごと一緒に煮込みました。面白い食材の組み合わせを思いつくと、すごくワクワクするんです」
ただ、食べられる量が減っているのは確か。もしかしたら体力が落ちてきたのかも??
「以前は、前日までハードな撮影をして翌日から海外旅行! あるいは、旅行から帰った次の日に撮影! なんてスケジュールを平気で組んでいたのですが、近頃はさすがに難しくなり、旅のあとは、せめて1日は休みが欲しいと思うようになりました(でも旅先では、相変わらずいっぱい食べます)」
この日は半田そうめんに、セロリの塩もみとボリュームいっぱいの牛肉をどんとのせて。味つけは、プロデュースしている醬ブランド「Wa&_(ワンダー)」の「じゃことアーモンドの醬」「梅ヤンニョム」におまかせ。順番に使って味変を楽しんでもよし、少し混ぜながら食べてもよし!
09
弁護士ドラマをきっかけに
法に興味がわいています
「もし、料理家以外の仕事につくとしたら?」の問いに、ワタナベさんの今の答えは、「弁護士!」です。
「韓国ドラマには、弁護士が出てくるものがたくさんあるんですよ。それを観ているうちに影響されちゃって。大学に入り直すとしたら、法学部で選びたいなあ」
日々のニュースを見ながら、福祉のこと、医療のこと、子どもたちをめぐる環境のこと。いろいろな問題が気になります。
「弁護士にならなくても、法を知っていればできることや、人の助けになることがたくさんあると思うんですよね。自分が関われる幅、考え方もぐんと広くなるんじゃないかと。時間に余裕ができる60代になったら、本格的に学んでみたいです。法に限らず、学ぶこと、新たな知識を得ることに今とても興味があり、少しずつでも積み重ねていきたいですね」
10
自分の気持ちに
正直になること
「近頃は、考え方も行動もシンプルになったなあ、と感じます」とワタナベさん。したいことは思いきって、多少の無理をしてでもチャレンジする。一方、必要がないと思うことは、すっぱりと断つ。
「以前はお付き合いで参加していたイベントなども、本当に行きたいと思えるものだけに絞って。また、話をしていても、ちょっとした違和感があれば、素直にサラッと伝えられるようになりました。あれこれ考え込むよりも、ときに自分本位になって、ちょっとずうずうしいくらいでもいいのかもしれません。これって、ささやかだけれど、毎日を健やかに過ごすうえで、とても大切なことではないかなと思っています」
text:福山雅美
Profile
ワタナベマキ
グラフィックデザイナーを経て、「サルビア給食室」として料理家の活動をスタート。独立後は、雑誌やテレビなど活躍の場を広げ、レシピ本も多数出版。自ら立ち上げた醤ブランド「Wa&_(ワンダー)」の調味料も人気。
instagram
「@maki_watanabe」
「@wanderfoodstore」
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