子育ても、人生も自分らしく。小さな「選択」を投げかけて Vol.1 主婦・柴田寛子さん
「ねえ、ねえ、お母さん、早く〜」
「はいはい!」
パンパン、トントン、パチパチ。
15歳の桜子ちゃん、11歳の晴喜くん、9歳の桃子ちゃんは、
毎朝玄関で、「アルプス一万尺」の要領で、
お母さんの寛子さんの手とタッチし、
ぎゅっと抱きしめてもらったら、
「行ってきま〜す」と元気に駆け出します。
「どんなに叱っても、機嫌が悪くても、コレで、
すべてがリセットされるんです」と寛子さん。
ここから時計を巻き戻すこと30分。
柴田家の朝食は、自分が食べたいものを、
お母さんに「オーダー」することから始まります。
「さーちゃんは、パンに何のせる?」
「う〜ん、ミートソースとチーズ」。
「はっくんは、パン何枚食べられる?」
「え〜っと、1枚」といった具合。
パンの枚数、トーストするかしないか、
卵の料理方法まで。3人3様のオーダーに
寛子さんは耳を傾けます。
「面倒くさくないのですか?」と聞いてみると、
こう答えてくれました。
「小さな子供が、自分の意志で選べることは、
生活のほんのわずかな一部です。『お砂糖入れる?』
「何飲みたい?」など……。私ができる小さなことだからこそ、
あえて投げかけてそれに答えてほしい。
言うとおりになるとは限らないし、
時にはふてくされてしまう子もいるけれど、
しばらくすると、気持ちに折り合いをつけて、
家族の輪に戻ってきてくれます。家庭以外の場所で、
自分の思い通りにいかなくても、
日々小さな選択と向き合っていれば、
きっと、叶わなかったときのダメージを最小限にできるはず。
それによって次の一歩を踏みさせればいいなと思って」
なるほど、自分が食べるパン1枚の中にも、
選択、決断の種が隠されているのだと感心させられました。
Vol.2に続く
photo:枦木功 text:一田憲子
『暮らしのおへそVol.23』より
Profile
柴田寛子
大学を卒業後、日本航空国際線予約センターに就職。退職後、飲食店でアルバイトをしながら、祐成陽子クッキングアートセミナーに通う。25歳の時にイタリアへ語学留学。帰国後結婚。専業主婦を経て、現在は週に5日パートタイムで働きながら、パンやお料理の教室に通っている。
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