無意識を信頼する vol.1 医師・稲葉俊郎さん
一日3食の習慣があるように
心もエネルギーを受け取る必要があります。
それが音楽を聴くことであり、
絵を描くことであり、本を読むこと。
その時々で無意識がやりたいということを
常にするようにしています。
私は無意識を信頼しています。
無意識こそが自分のいのちを支える場所なんです。
朝起きて、仕事から帰って、読書をするとき、と一日3回はレコードで音楽を聴く。
医療の枠を超えた
型破りな東大病院医師
稲葉俊郎さんは、“型破りな東大病院医師”として知られています。東京大学病院という西洋医学の最先端の医療の現場で、患者さんの治療に携わりながら、伝統医療や民間療法などにも目を向け、さらには伝統芸能や民俗学、音楽や絵画などにも造詣が深い趣味人。そんな稲葉さんのご自宅を訪ねると、出迎えてくれた稲葉さんのなんとファッショナブルなこと! その日着ていた服は、「イッセイ ミヤケ」でした。
「中学生のとき、テレビ番組『ファッション通信』を毎週見ていたので、ファッションデザイナーの方はみなさん尊敬しています。なかでも三宅一生さんは大好きですね」
と稲葉さん。ふだんは朝7時には家を出て、7時半から夜8時まで病院で勤務するという多忙な毎日。家に帰ってまずすることが、レコードをかけて音楽を聴くことなのだそう。
「大学病院というのは、いろいろな人が来るので音楽をかけられない。無音の状態が自分にとってはすごく違和感があって、自分の無意識がそれをキャッチして補おうとしているのだと思います。生きていくために、朝昼晩の3食を食べますよね。体が栄養をとるのと一緒で、心もエネルギーをとる必要があります。
絵を描くことは自分自身のイメージ世界とつながること。「時間も空間も忘れて無我夢中になれる大切な時間です」。
音楽を聴いたり、絵を描いたり、本を読んだりするのは、まさに心の食事。心の栄養失調にならないように一日3回は必要。それがバランスをとるために無意識がしている習慣でしょうか。
「いい夢を見るために」1行だけでも本を読んでから寝る。
意識的な習慣は縛られると逆効果なので、あえて設定していません。自分の無意識を信頼し、その時々で無意識に歩調を合わせるようにしています」
意識とは頭が認識し、その状態を把握している領域のこと。無意識とは、脳が認識できない広大な領域のこと。
「暮らしのおへそ Vol.26」より photo:馬場わかな text:和田紀子
Profile
稲葉俊郎
医師、東京大学医学部付属病院循環器内科助教。医学博士。西洋医学だけでなく、伝統医療、代替医療、民間医療も広く修め、伝統芸能、芸術、民俗学、農業など、あらゆる分野と医療との接点を模索している。著書に『いのちを呼びさますもの ひとのこころとからだ』(アノニマスタジオ)がある。https://www.toshiroinaba.com/
肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。