「今日のひとしな」12月の担当は「LOCALERS（ロカレール）」

明日から師走。ほんと１年が早すぎてびっくりしますね。さてさて、2019年ラストの月に「今日のひとしな」のバトンを受け取るのは、岩手・盛岡にあるセレクトショップ「LOCALERS（ロカレール）」です。

2014年のオープンから一人でお店を営んでいるのは、店主の中村佳明さん。東京で数年間携わっていたセレクトショップでの経験を生かし、「いつか自分の店をもつ」という思いを地元で形にしました。

「ロカレール」の店内には、“どこかで見たことがある”ようなものはあまりなく、中村さんが「うちのお店のお客さまがきっと喜んでくれる」と感じたブランドや作り手さんのものを、国内外問わずセレクトしています。

「最近は、どんなに小さいブランドでも、どんな場所で活動しているデザイナーでも、WEBやSNSを使って作品を発信していることが多いので、盛岡にいても直接つながることができるんです。いいなと思ったらすぐに連絡をとり、できる限り直接会いに行っています」

それは国内にとどまらず、ニューヨーク、コペンハーゲンなど海外にもためらいなくポンと出かけてしまうのだそう。

「そういう身軽さは、一人で営んでいる数少ない強みのひとつかもしれません（笑）。デザイナーがどんな土地で暮らし、どんな環境でものづくりをしているのか、そしてそれらがどのように作品につながっているのか。直接会うことで、そういったことがダイレクトにわかるので、ある意味手っ取り早いんです。一緒にごはん食べて、いっぱい話して、僕のことやお店のこともわかってもらって……」




たとえば、店頭でも人気のあるブランド「メゾン エウレカ」のデザイナーは、ベルリン在住。バウハウスに影響を受けた建物やアートであふれる街に暮らす彼女の姿を見て、少なからずこの街の影響を受け、吸収し、独特のデザインが生まれているのだなと腑に落ちたといいます。

旅先の記憶のかけらは、100％DIYで内装を仕上げた店内にも。照明や小物のディスプレイなど、その時々で印象的だったものたちが散りばめられています。

中村さんがそんなスタンスだからか、各ブランドのデザイナーたちが、はるばる盛岡のショップまで足を運んでくれることも多いそう。地方の小さなお店でなぜか人気ブランドのオーダー会が開かれたりしているのは、そういう信頼関係があるからなのですね。ちなみにこちらの写真は、オーダー家具や内装を手掛ける「MOBLEY WORKS（モーブレーワークス）」の受注会を開いたときの様子。「東京でも実際に見ることが難しい人気のアイテムが、この小さな店にズラリと並んじゃいました（笑）」

ところで中村さんは、どうしてこの盛岡でショップを開いたのでしょう？

「十数年前の盛岡には、小さなセレクトショップや古着店がたくさんあって、みんなそういう格好いいお店での買い物を楽しんでいたんです。盛岡は服にしても音楽にしてもこだわりが強い人が多いのも、そういう土壌があったからじゃないかなと思います。でもここ数年、帰省するたびにさびれていく街を見るにつれ、小さいながらも僕にでもできることはと考え、この店を開きました」

お店を営む前は、東京で働いていた中村さん。「それこそ飛ぶように売れた」という大手セレクトショップ黄金時代に販売を経験し、その後、自由が丘で“地元のフリーランスや自営業の男性”にターゲットを絞ったショップでセレクトも担当。「お店に愛着をもってくださるお客さんのために、ここでだからこそ買えるアイテムをセレクトして並べ、喜んでもらう。そんなシンプルな営みから学ぶことは多かったですね」

そんな経験をベースに開いた「ロカレール」。ここに来るお客さんは、学生さんから50代60代の方までさまざま。「この、ちょっと偏っているかもしれないセレクトにグサッとくる人って、年代は関係ないのでしょうね（笑）。ここを起点にいろいろな方が集まってきてくれるのはうれしいです。最近はまわりに格好いいコーヒーショップとか（盛岡には昔から喫茶店文化があることでも有名！）セレクトが渋い本屋さんとか、素敵なお店が増えてきていて、少しずつですが街の変化を感じています」

店名の「ロカレール」は、ローカル（地元）をイメージした造語。お客さまが「ああ、やっぱり盛岡はいいところだな」と感じられるような場所にお店を開きたいと思い、駅から徒歩30分という不便な場所にも関わらず、子供の頃から親しんだ岩手山と中津川が眺められる場所を選びました。

これからのシーズンは、川に白鳥が降り立つシーンも、お店から頻繁に眺められるのだとか！

一人で切り盛りしているため、お問い合わせメールの返事に時間がかかることもあるし、入荷したアイテムの写真撮影が追いつかないうちに完売してしまうこともしょっちゅう、というのんびりペース。でも、オンラインショップもちゃんと用意してありますので、気になるアイテムがある方は、ぜひこちらからチェックしてみてくださいね。そして、お店からの返事がちょっと遅れたとしても、気長に待ってあげてくださいね（笑）。

では、明日からの「ロカレール」の「今日のひとしな」、お楽しみに～。