「今日のひとしな」5月担当は「岡の」

外出を控え、お家で過ごす時間が増えました。そんな時だからこそ、日々の生活やお部屋のインテリアをゆっくり見直す方も多いのではないでしょうか？　花瓶に花を挿しほっこりした気持ちになったり、お気に入りの器に料理を盛ると一層おいしく感じられたり。暮らしに彩りを添える自分好みのものがあると、毎日を楽しく過ごせそうですよね。


使うとなんだか心豊かになる、そんな素敵な器や洋服の数々を取り扱うセレクトショップ「岡の」が、5月の「今日のひとしな」を担当してくださります。お店は、東京の大岡山駅から歩くこと３分。レトロでどこか温かみのある外観と大きなガラスの扉が目印です。

店主の片岡亜紀子さんは、かつてジュエリーブランド「カタオカ」のショップマネージャーとしてご活躍されていました。最近は仕事をセーブしていましたが、2020年1月に住み慣れた街で、自分のお店をオープンすることに。店名は、大好きな大岡山と名字の片岡から、それぞれ「岡」をとって「岡の」にしました。

お店はもともと地元の人々に愛されていた大判焼き屋さんだった建物をリノベーションしています。

「大判焼き屋さんが夏はカキ氷もやっていて、子どもたちが外のベンチに座り食べていたのが、特に思い出深い光景ですね。間口が広くて、窓も大きかったので、前を通る度に、『もし自分がお店をやるのだったら、ここは大きな一枚ガラスにして……』と想像して楽しんでいました」

店内には、店主の片岡さんが愛情を深く感じている器や洋服などが並びます。

「取り揃えているのは、作り手に対する揺るぎない信頼があり、自信を持っておすすめできるものだけ。私自身も実際に、10年、20年と長く愛用しているものが多いですね。使って初めてよさがわかるものもあり、その心地よさを他の方にもお伝えしたいという気持ちがあります」

「セレクトの多くは、装飾性のないシンプルなデザインのもの。お客様には、使いやすい、というだけでなく、暮らしの中で愛情を感じてもらえたらと思っています。自分自身がそうであるように、『やっぱりいいよね』という気持ちをずっと持ち続けてもらえるもの。愛着を感じ、長く使ってもらえるもの。そして大事な人と共有したいもの。それが“いいもの”じゃないかなと思っています」と片岡さん。やさしい笑顔と落ち着いた声のトーンで話してくださる中で、商品や作家さんの説明の際は言葉に熱がこもります。

惚れ込んだ作家さんには熱烈なアプローチをせずにはいられないという片岡さん。作品に対して溢れんばかりの愛情と情熱をラブレターのように手紙にしたため、電話をし、個展会場や工房まで直接会いに行く。大事にしているのは、“言葉を尽くして気持ちを伝えること”だそう。「お店で取り扱いたい作家さんには、何年かかってもアプローチし続けるつもりですね」とお茶目に笑って話します。

その熱い想いの背景にあるのは、作家さんへの憧れと尊敬の気持ち。ご自身も以前は染織で作家活動をしていました。その経験から、手仕事を続けることの難しさや迷いが理解でき、だからこそ応援したいという気持ちが、自分のお店をオープンする原動力になったそう。

「お店を持ったのは46歳。少し前から、子どものため、家族のために使っていた時間とエネルギーが少しずつ自分のために使えるようになり始めたころでした。一方で、２年前に母を亡くしていたこともあり、人生のカウントダウンが始まっている、と初めて実感。残された時間を無駄に使ってはいけないと思い、人生を最後から逆算して考えるようになりました」

「『自分が持っている特性と経験で、人の役に立ちそうなことは何だろう』。自問自答を繰り返し、たどり着いたのは、作家さんの作品を理解して、そのよさを他の人にも伝えることでした」

人生を見つめ直し、新たなスタートを切った片岡さんの姿は、編集スタッフの目にとてもかっこよく映りました。外出することが叶わない時期ですが、その魅力的なお人柄はインスタグラムでのぞくことができるので、要チェックですよ～。

また、片岡さんにはもう一つの目標があるといいます。それは、街の人たちがちょっと立ち寄っておしゃべりをする、そんな緩やかで心地よい人間関係を作れる場所に「岡の」がなること。

「私が愛する街である大岡山の人たちとのつながりも大事にしたいと思っています。外出をすることが中々叶わない現状であっても、お店の前を通られる方など、これまで話すことがなかった人たちと笑顔で挨拶をするだけで、心がほっと落ち着く。よいものを伝えたいと思っていた私ですが、むしろお客様や街の人から素敵な言葉をもらうことが多く、お店を持てた幸せを日々感じています」

最後にご注文に関するお知らせです。「岡の」にオンラインショップはありませんが、「今日のひとしな」で紹介した商品に関するご注文やお問い合わせは、メールでも受付中です。メールの返信に2日ほど時間がかかる場合もありますが、ゆっくりお待ちくださいね。

作家さんの想いやものづくりの背景をたっぷり伝えてくださる「岡の」さんの「今日のひとしな」は、明日からスタートです。どうぞお楽しみに～！