内田彩仍さん「家時間」vol.2 花を飾ること
少し前に、長年住み慣れたマンションから、小さな一軒家に移り住んだ内田彩仍さん。住まいが変わり、家にいる時間が長くなったことで、ずっと大事にしていた「心地よく暮らす」ということに改めてじっくり向き合いながら見つめ直したのだそう。そんな日々を綴った本『家時間』から、今週、毎日1話ずつご紹介します。2日目の今日は、部屋にしつらえるお花についてのお話です。
ふと目に入る場所にグリーンをしつらえて
大ぶりの枝物を買ってきたら、部屋のあちらこちらに飾ります。キッチンの南側の窓辺に実がついたナツハゼを生けたら、差し込む光が薄い葉からこぼれて。
暮らす場所が変わっても、花を絶やさない生活をしています。家時間が長くなっているこの頃、花を愛でることは私にとって安らぎでもあり、部屋を整えておこうという、意欲の源にもなっています。花がひとつあるだけで、その場所の光の変化にも気づくことができ、気持ちに余裕のない日でも、四季折々の彩りを感じられます。
マンションに住んでいた頃は「ここに飾れば気持ちよく過ごせる」という場所がわかっていて、飾る所は多くても五か所程度にと決めていました。長持ちさせるためには朝の水替えが欠かせないから、好きなことが負担にならないようにするための、私なりのルールです。今の暮らしでも基本の五か所を決めようと思っているけれど、ここしばらくは、あちこちに飾って様子を見つつ、いいと思える場所を模索しているところです。
そうして何か月か続けているうちに、幾つか花を飾る場所が定まりつつあります。リビングの窓際のカウンターや玄関先、ドレッサーまわり、サニタリーの小さな棚など。あともう一か所はキッチンで、南向きの小窓から差し込む光がとても気に入っていて、窓の高さに合わせて収納棚を低くしたので、大ぶりの枝を飾っても日差しに映えるようです。
最近は、新しく植えた庭の草花や、前に住んでいらした方が大切に育てていた小さな花、買い物帰りに生花店で見つけた枝物など、今までとは趣の違う場所に、何を飾るか考えるのも楽しく。花器は、先が細いと洗うのにも水を替えるのにも時間がかかるので、洗いやすいことを優先して選ぶというルールは変えていません。
花は飾るだけでその場の雰囲気が変わるのはもちろん、家という閉ざされた空間でも、自然の中に身を置くことができるようで、心に潤いを与えてくれます。わが家は通気性がいいのか、断熱材の効果なのか、この夏、草花を飾っていても、すぐにしおれることがありませんでした。ここに住まいを移したことで、思いがけず年中花を楽しむことができそうで、幸せを感じています。
ドレッサーの脇には好きな花を
身支度を整える場所に庭から切ってきた秋色紫陽花を。花の美しさに癒されながら一日を始めます。
靴箱
玄関に花があると、帰ってきた時に気持のよい空気感に包まれます。この日はオレンジのエピデンドラムが主役。
サニタリースペース
水まわりには小さな花を一輪。ピンクアナベルはとても可憐で、白い空間に華やぎを与えてくれます。
カウンター
存在感のある芍薬をガラスの花器に。大輪の花があるだけで空間の印象が変わるから、部屋の模様替え気分で飾っています。うっとり眺める時間も、とても贅沢。
『家時間』より
photo:大森今日子
Profile
内田彩仍
福岡県在住。夫、愛猫と暮らす。ていねいな暮らしぶりや素敵な着こなしが注目を集める。主な著書に『いとおしむ暮らし』『家時間』(ともに主婦と生活社刊)などがある。
肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。