【フランスのパンと粉もののお話⑤】〜美食の都・リヨンのパンは真っ赤っ赤?

池田愛実さんのフランス滞在記
2022.02.28

こんにちは。湘南でパン教室・クラムを主宰しています、池田愛実です。

フランスのパンと粉ものをご紹介するコラム、少し間が空いてしまいましたが、第5回目はリヨン名物のパンについてです。

フランスの首都といえばパリですが、第二の首都と呼ばれるのが、今日お話しするリヨンです。パリからTGV(新幹線)で約2時間。フランスに旅行で来ても、パリに見所が多いため、なかなかリヨンまで足を伸ばす機会がないですよね。
ですがこちらのサイトを見ている方は、きっと興味のある街だと思います。なんといっても、リヨンは「美食の都」として有名なのです!

ミシュランの三つ星を55年維持したあのポール・ボキューズ氏はリヨンの出身で、近郊にレストランがあります。そして彼に敬意を表して名前をつけた「ポールボキューズ市場」は、おいしいものの宝庫! 場内には50以上の店舗があり、新鮮な魚介からワイン、パン、お菓子までありとあらゆるものが売っていて、その場で味わうこともできる、おいしいもの好きには天国のような場所があります。


ポールボキューズ市場は屋内にあります。2004年に改装されて入口は現代的、とてもきれい!


ポールボキューズ市場にて。「パテアンクルート・リヨネ」というパテのパイ包みも、リヨン名物で種類が豊富。


ポールボキューズ市場は、おいしいものの宝庫!「ソシソン・リヨネ」というサラミも名物です。

街中にはbouchon(ブション)と呼ばれるリヨンの郷土料理を出す大衆食堂が並び、活気に溢れ、気軽においしいものを見つけることができる街なのです。


ブション(リヨンの食堂)の集まる通り。テラスに人が溢れ、活気があります。


ブションでは、前菜・メイン・デザートで約1500円。安くておいしくて助かります!


ブションのデザートには、プラリネローズのタルトをチョイス。甘~い!

私がリヨンを訪れたのは、働いていたパン屋の1か月のバカンス(夏の長期休み)。フランス国内をぐるぐると旅していた時でした。川を中心として旧市街があったり、丘があったりと、コンパクトながらバランスがよく、美しい景色やパリとは違う落ち着いた雰囲気に、ここなら住んでみたい!とすぐに魅了されました。


ちなみに、リヨンの宿泊先はドミトリー。8人くらいで2段ベットのお部屋、若いからこそ泊まれた気がします...笑

1泊の短い滞在でしたが、リヨンで絶対に食べたかったものがあります。それは「プラリネローズのパン」です。

プラリネローズとは、ピンク色のプラリネのこと。アーモンドのまわりに、色粉でピンクにした砂糖の衣をカラメル化してまぶしつけたものです。

日本のル・コルドン・ブルーで働いていた頃、授業には必ずこの「プラリネローズのブリオッシュ」が出てきました。日本では全く馴染みのないプラリネローズ。どこにも売っていませんから、クラス全員分、大量に作るのは私たちアシスタントの仕事でした。


こちらが、プラリネローズのブリオッシュ。

大きな銅鍋で砂糖をカラメル化し、アーモンドを入れて、ヘラで絶えず混ぜて加熱する…これを何度も繰り返して、アーモンドのまわりに何重にも砂糖の衣をつけます。これがなかなかの重労働なので、プラリネローズの在庫がなくなると気が重くなったものです。

リヨンの名物と習いましたが、パリでは全く見なかったので、どれほどメジャーなパンなのか? 本当にあるのか? 半信半疑で街を歩いて、市場やパン屋をのぞいてみると…予想以上にありました!

プラリネローズの専門店があり、パン屋にはプラリネローズのブリオッシュのコーナーがあり、プラリネローズのタルトがずらっと並び、レストランのデザートにも…と、派手な色のプラリネローズであちこちが真っ赤っ赤。リヨンの人々の食の中にしっかりと根付いたものだったのです。


プラリネローズのタルトやケーク。ショッキングピンクが派手な印象です。


色鮮やかなプラリネローズのタルト。

フランスは日本よりももっと大きな国ですから、地方色が強く、故郷に誇りを持っている方が多いです。地方ごとに食文化も特色があります。こうして旅をすると、地方にこそフランスの魅力が詰まっていると強く思います。

プラリネローズの味は、まさに砂糖とアーモンド。甘くてあまり日本人ウケしそうにないので、日本で流行ることはなさそうです…。リヨンに行った際は、ぜひ召し上がってみてくださいね。

 

フランスのパンと粉もののお話④〜ブレッツェル、クグロフ、シュトレン…アルザス地方の粉ものいろいろ】はこちら

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Profile

池田愛実

MANAMI IKEDA

1988年、神奈川県藤沢市生まれ。5歳と3歳の子ども2人のママ。 慶應義塾大学文学部で食育をテーマに学び、大学在学中にル・コルドン・ブルー代官山校パン科に通い始め、卒業後は同校のアシスタントを務める。26歳の時に渡仏し、現地のM.O.F.(フランス国家最優秀職人賞)のブーランジェリー2軒で経験を積み、帰国後は都内レストランのパンのレシピ監修・製造・販売に携わる。2017年から地元・湘南でフランスパンと暮らす教室「crumb-クラム」を主宰。初心者から学べるフランスパンとフレンチ惣菜を教えている。著書に『こねずにできる ふんわりもちもちフォカッチャ』(家の光協会)、『レーズン酵母で作るプチパンとお菓子』(文化出版局)、『ストウブでパンを焼く』(誠文堂新光社)。2022年4月にこねないパンの新刊を発売予定。
https://www.ikeda-manami.com/
Instagram:crumb.pain

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