ひとつの窯から広がる「ONE KILN 」

～「soup. 」「soup. Life Store」より　vol.27～

こんにちは。スタッフの野田です。
土づくり、釉薬づくりなど、Made in 鹿児島にこだわり、プロダクトと工芸の両方からアプローチし、作陶する「ONE KILN」城戸雄介さんをご紹介させていただきます。

城戸さんとお会いする度、他のつくり手さんとはちょっと違う、何か特別で心地よい緊張感が伝わってきます。いつもおおらかで穏やか。その優しさの中に、その瞳の先に、つくり手としての使命感、責任感、まっすぐな信念が伝わってきます。城戸さんが歩んできた道、ものづくりへの想いはお人柄にも表れ、私たちをあたたかく受け入れてくれます。

若くして作陶の道を志し、佐賀県の有田焼の窯元で修業するも、理想と現実のギャップに苦しむ中、つながったご縁で長崎県・波佐見焼の窯元へ。ここでの経験と大切な人との出会いにより「やりたいことを実現する場所は、自分でつくる」と自信を取り戻し、独立。2008年、小さなガレージに電気窯ひとつ。ここから「ONE KILN＝ひとつの窯」は始まりました。

代表作は、釉薬に桜島の火山灰を混ぜたASH（灰）シリーズ。
独立して最初に作った白磁のテーブルウェアを外で乾かしていた際、噴火で火山灰が降り、器に付着した火山灰が焼いた際に表面に黒いポツポツが表れる、そこに着目し生まれたシリーズです。火山灰の量や焼く時の温度など、何年も試行錯誤。スレートグレーに発色した鉄釉の中で、星のように散らばる金属質のきらめく釉薬。個々に色味やその表情が変わるのが魅力。使い込むほどに味わい深く、使い手のオンリーワンの暮らしの器に育っていきます。型を使ったプロダクトでもあり、その表情は一点ものの工芸品とも言えます。

ONE KILNはつくり手との厚い信頼関係により、さまざまな「協働作品」が生まれています。その中のひとつ、Pebble CollaborationはASHシリーズと波佐見焼の陶磁器作家 石原亮太氏とのコラボレーション。若かりし頃、城戸さんの作陶への想いが途切れそうになった時、それを繋いだのは石原氏のお父様でした。亮太氏は波佐見での修業時代の兄弟弟子のような関係性。鹿児島と長崎で各々が活動しながら、これまでの深い関係性で築き上げられた協働作品。亮太氏がつくったオリジナルの型を、城戸さんが仕上げています。

そして多くの話題となった鹿児島の盟友 AKIHIRO WOODWORKSのアキヒロジン氏とのコラボレーション「JIN CUP CERAMICS」。フランス出身のアーティストJulien Colombierとの共作、Blue Bottle Coffeeのオリジナルコーヒーマグの制作など、城戸さんの活動はたくさんのつながりのもと、いつも何かと話題になり、ものづくりの可能性とワクワクを私たちに届けてくれます。

城戸さんの工房は、鹿児島市の繁華街から車で10分ほどのところにあります。何度かお邪魔させていただきましたが、ここで焼き物!?と感じるほどの住宅街にあります。
「ものづくりに興味がある人が気軽に働きたいと思えるような、開けた場所にしよう」、自身が若かりし頃に感じた「ものづくり現場の閉塞感」を払拭したいという想いから、街中に工房を構えられました。その想いはしっかり伝わり、その人望の厚さから、修業を希望する若い世代が門戸を叩き、壁にぶつかった時は相談役となり、仲間たちがアイデアを出し合う場所。また鹿児島で開催される「ash Design & Craft Fair」では工房を会場とし、誰でも気軽に訪れることができます。特に鹿児島では兄貴分的な存在として、クラフト界隈でとても慕われています。

「初めは自分らしさを見つけたい、誰も見たことのない形を作りたい、といった自己表現のためだった。それがONE KILNに人が集まるにつれ、皆が幸せを感じることのできるような器を作りたいという想いを抱くようになった」

ONE KILNのロゴには、窯から出る「炎」と太陽の「光」の２つの意味があります。ひとつの窯に灯った小さな光が、だんだん太陽の日差しのように広がり、器を通して、食卓を通して、城戸さんの想いはみんなの笑顔に寄り添います。

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